第4話江ノ島①

 次の月曜日俺は学校に向かうと既に璃久が着いていた。


「おはよーさん」


 おはよう、と返すと璃久は早速金曜日の事を聞いてきた。


「どうだったの?真理愛ちゃんとの下校は?」


 ニヤニヤしながら聞いてくる。正直、うざくかったから適当に流すことにした。


「お前週末ずっとそんなこと気にしてたのかよ。なんだ?暇なのか?」


「あ〜暇ですよーだ。なんか文句ありますか〜」


「別に文句はねぇけどよ......」


「ならいいじゃねぇかよ」


 璃久はいきなり話を変えてきて朝にやっていたテレビの江ノ島特集について話し始めた。


「朝にさ、江ノ島特集を見てさなんか江ノ島行きたくなっちゃってさ、だから颯一緒に行かね?」


「男2人で行くのか?」


「んなのむさ苦しいだけだろって他にも誰か誘おうよ」


 そこでいきなり二人の女子が話しかけて来た。


「あの、私たちも朝の特集見て江ノ島行きたいなと思ってたんだけどこっちから同じような話が聞こえたから良ければ私たちと一緒に行かない?」


「ああ、内田さんと相馬さんか、もちろんいいよ」


 彼女は内田桜。普段は真理愛と仲がよくてよく一緒に話しているところを見かける。もともとは内向的な性格だったらしいが真理愛と話して他の人とも話すようになってからだんだんと慣れてきたらしい。


「予定は次の土曜か日曜にしようよ!」


「じゃあ、土曜にしてもらっていいかな?日曜日は他の予定があって」


 日曜日はモデルの仕事があったので皆には土曜日で了承してもらった。


 2人と別れると璃久が話しかけてきた。


「再来週からさテスト期間だけど勉強してるか?」


「あんましてないかな。まあそろそろ勉強始めようと思ってたし」


「いーよなぁお前は頭もいいし。前回も確か学年10位以内だろ?」


「そうだったかな。よく覚えてるね」


「まあ、現実逃避して自分の順位とか忘れてるだけだからな......」


 今回は赤点取るなよと注意はしたが、俺だって油断したら赤点を取りかねないから改めて肝に銘じた。



 そして来る土曜日。


 朝は強い方だから早起きもそこそこ得意だ。

 さすがに高校生ともなれば前日に楽しみで眠れないということはなく。普通に起きた。そして集合の10分くらい前に駅に到着し一番乗りで到着することができた。


「おはようございます颯くん」


「おはよう内田さん」


「あの、颯くん周りから視線を凄い感じるんですが。しかも女性の方からなんか殺気みたいなものが出てる気がしてなんか怖いです」


 そーいえば瑞希も同じような事を言っていた事があったな。


 だけど、このくらいの視線はいつも浴びていたので普段はあまり気にしていなかった。


 あ、やってしまった。瑞希の事を考えちゃった。本当にやるのかとも思ったが物は試しだ。やってみることにした。


「そんなに気にする事はないと思うよ」


「わ、わかりました」


「それにしても内田さんその服可愛いね」


「あ......ありがとうございますぅぅ〜そ......その颯くんもかっこいいですよ!」


 結構大きな声で言うものだから周りから注目を浴びてしまった。好奇の目でこちらを見てくる人もいればめちゃめちゃ睨んで来る人もいる。正直恥ずかしい。内田さんもちょっと赤くなっているみたいだ。これだけ注目を浴びればそりゃ恥ずかしいだろう。

 内田さんは袖がフリルになっているTシャツにチェック柄のスカートを着てきていた。本人の清楚な感じも相まってとても絵になる。

 次に真理愛が着いたようだ


「颯くん、桜ちゃんおはよう!」


「真理愛ちゃんおはよう」


「相馬さんおはよう」


 真理愛はいかにもお嬢様といった感じの白いワンピースで来ていた。褒めようとも思ったが、そんなにポンポンとセリフが出てくるわけもなく。なにも言うことが出来なかった。

 残すは璃久だけだ。

 あと5分もあるし普通に着くだろう。

 結局璃久はほぼ集合時間に到着した。


「璃久ずいぶん遅かったな普段なら5分前にはいるのに」


「いやぁ〜昨日楽しみでちょっと寝れなくて」


 例外が一人いたようだ。


「お前は遠足前の小学生かっての」


「いや、逆にお前らは直ぐに寝られたのかよ?」


 三者三様で頷き返していた。なんだか璃久が惨めに見えてきた。

 でも、璃久もしっかり来ていれば何も言われていないはずだったからそのまま見過ごすことにした。

 そして駅からは小田急線に乗り相模大野まで向かいそこから片瀬江ノ島までは1本で行ける。

 電車では定期テストに着いての話や色恋の話に花を咲かせていた。

 改札口を出ると潮の香りのする風が海の方から流れてきていた。


「風が気持ちいいなぁ」


 そういうと桜が反応してくれる。

「ほんとにそうですね」


「じゃあ少し歩いて江ノ島まで行こ〜」


「そうだよ〜早く行こ〜ぜ〜」


 明らかに一人だけ浮ついている璃久がいる。

 小さな子を見ているような感じだ。


 女子の2人を見ると同じような感想を持ったようで目を見合わせて笑ってしまった。


 江ノ島までは10分くらいで着いたので、そのまま江島神社に向かうことになった。


 なんでも江島神社は縁結びのパワースポットとして有名ならしい。他にも勝負運や金運に関するご利益がある。


「か、階段長すぎだろぉ〜」


 一番はしゃいでいた璃久が一番最初に音を上げた。


「まあ、確かに長いな」


 だが、そんなことはいざ知らず、女子勢はスイスイと階段を登っていってた。


「女子って恋愛系が絡むと疲れなんか知らないみたいな感じに見えないか?」


 璃久がそう言ってきた。それには大いに同意した。なぜ、女子ってこういう時だけ体力あるの......

 鳥居をくぐって柄杓で手を洗う場所まで来た。

 正確には手水舎というらしい。


「そーいえば中学の時の修学旅行で一日に何回もこれやったよ〜」


 真理愛が言う。


「そうそう一日にたくさんの神社とかに行くけどその場所それぞれでやっちゃうんだよね」


 と笑いながら返した。

 それには皆も同意したようで話の話題は修学旅行の話に写っていった。


「夜はみんな夜更かしするけどさ〜先生が来るといきなり寝始めるみたいなこともあったよね〜」


「それを許してくれる先生もいればめんどくさく説教してきたりね」


 あははと皆で笑いだんだんと話は中学の頃についての事が多くなってきた。


 あんまり中学の時の事は思い出したくはなかったけれど、別段悪い思い出ばかりではなかったのでので案外楽しかった。


 神社の境内に着くとそれぞれお賽銭を握り投げ込んだ。


 ちなみに俺は二十円しか投げ込まなかった。神を信じているわけでもないし、そもそも神頼みという言葉があまり好きじゃなかったし三玖さんに言われて自分で全力でやってみようと思っていたからだ。お願いしたことはあまり関係はなかったけど......


「みんなはどんなお願いしたの?」


 璃久が聞く。それに真理愛が返す。


「お願い事を口に出すと願いが叶わないと聞いたことがあるので私は言いませんよ」


「でも、一説によるとお願い事を口に出した方が願いが叶うと言われてる事もあるそうですよ」


「じゃあ桜はどんなお願いしたの?」


 そして桜が一瞬こちらを見た気がしたが気のせいだろう。


「や.......やっぱ私も言わない!」


 頬が若干紅潮している。


「内田さん、顔赤いけど大丈夫?階段登って疲れたのかな?ちょっとどこかで休もうよ」


 璃久も真理愛も了承してくれたが一瞬呆れられるような目で見られた気がした。


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