#41 【こらぼ】今宵はあるてますけべ部の時間じゃ【神夜姫咲夜】
「メイド喫茶……?」
文化祭の出し物をクラスで決めることになった。
といってもわたしのような発言権のない教室のシミ的存在は黙って多数決の時に手を挙げるぐらいのもので、リア充たちの先導によってトントン拍子で話は進んでいくのだが。
そして決まったのがメイド喫茶である。
始まりは男子の悪ノリからだった。
よくある学生のノリで「メイド喫茶とか良いんじゃね?」と。
普通なら女子が猛反対して無難にお化け屋敷とかに落ち着くのだが、女子連中が可愛い可愛いと褒められて満更でもない空気が教室に蔓延した。
そこからはなし崩し的に「多数決で決まったらやってもいいよ」とかなんとか、そんな感じでメイド喫茶をすることになった。
まあ、わたしのようなぼっちは準備期間、本番含めて文化祭なんて忌むべき年間行事だと思っているので適当に流して──、
「じゃあ黒音さん、メイド頑張ろうね!」
……は?
◆
【こらぼ】今宵はあるてますけべ部の時間じゃ【神夜姫咲夜】
19,378 人が視聴中・神夜姫 咲夜 チャンネル登録者数 13.7万人
#さくやの時間
「こんばんは、皆の者。あるてま1期生、神夜姫咲夜じゃ」
:こーんばんわー
:おこんですー
:¥25,000 此方本日の貢物になります
:¥300 少ないけどチップです。
「うむ。皆の者、最近どうじゃ? 夏日もようやく落ち着いてきた頃じゃが、まだまだ油断してはいかんぞ? しっかり水分補給はして、休息も取るようにの」
:はーい
:田舎のおばあちゃんみたいであったけぇんだ
:↑わかるマン
「今妾をおばあちゃんと言った者たちは次言えばブロックじゃ。わかったか?」
:すいぁせん
:¥200 咲夜お姉さま!
:今日もきれいですよ!
「うむうむ。では本日の招待客を招くとするかの。ほれ、もう喋ってよいぞ」
神夜姫先輩の合図と共に喋る。
「こんばんにゃ」「こんあいば、あるてま1期生の相葉京介だ」
「あぅ……」
「あ、すまん黒猫」
こ、声が被ってしまった。
これだからオンライン通話はキライなんだ!
一斉に喋ると会話の邪魔になるし、リアルと違って完全に声を塗りつぶすから声が小さい方は何を言ったかわかんなくなる。
何より凄い気まずくなる……!
コミュ障にオンライン通話なんてやっぱり無理だったんだー。
「これっ、京介。れでぃーふぁーすとを忘れるのは良くないぞ」
「あー、本当にすまない。ちゃんと打ち合わせするべきだったな。先輩として俺の落ち度だ」
「あ、や、別に、大丈夫です……」
:先輩キョースケ
:ないすふぉろーなのじゃ
:ラノベだったら惚れてた
:黒猫に限って男に靡くことないだろ…無いよな?
:¥288 女性Vtuber大好き黒猫さん!
「いや不名誉なあだ名やめてくれる!?」
え、視聴者から女好きって思われてるのわたし!?
いやいやいや、それは偏見がすぎるというかなんというか……。
「兎も角、今宵はこの2人を招いてやってゆくぞ」
「正直なんで俺が呼ばれたのか分かってないんだが……」
「む? あるてますけべとーくをするためじゃが」
「いや、だからなんで俺なんだ!? そこはフラップイヤーで良いだろ!?」
「お主。しゃねるかに猥談をせよ、と?」
:やーらしーんだー
:すけべ!
:ラノベ主人公!
「あのなぁ……。というか、前から疑問なんだが、なんで俺ってラノベ主人公って呼ばれてるんだ?」
:設定と顔がラノベ主人公っぽいから
:なんかここぞというところで引きが強い
:ラッキースケベが多そう
:女の敵
:¥10,000 そのためのスケベトーク!
「ひどくない!? しかも赤スパで言うこと!?」
「まあ京介が真にすけべ魔神であるかは追々追求するとして」
「するな!」
すると、神夜姫先輩は配信画面にデカデカとテキストを打ち込み始めた。
「題して、『理想のひろいんに求める性癖とは』じゃ」
「……理想のヒロインで良くない?」
「性癖を求める意味……」
「例えば希望を見出したひろいんが直後に絶望に染まる顔が好きとか」
「たとえ最悪だな!?」
:どーしてそんなマニアックな性癖を…
:てかヒロインの属性じゃなくてシチュじゃん!
:つまりなんでもあり、と
:まあラノベ主人公っぽい京介くんにぴったりだね
んぇー、先輩のお誘いだからってノコノコ付いてきたけど、もしかして結構やばい企画に呼ばれたのでは?
い、今から帰ったりとか出来ないかな……。
だって人前で性癖晒すとか恥ずかしいじゃん!
「で、京介はどのような 女子おなごが性的に好きかの?」
「性的に!? いきなりぶっこんできたな……」
「相葉先輩は巨乳好きだって聞きまし、た」
「誰から!? え、俺って仲間からそんな風に見られてんの?」
:けどいつかの配信で小さいよりおっきいほうが良いって言ってたよね
:切り抜きあるでよ
:ttp://xxx.xxx
:¥350 これはおっぱい魔神
「ちょ、マジか。いやだって男なら、なぁ?」
「京介、この場には女しかおらんぞ」
「先輩、さいてー」
「うぐっ、後輩からの罵倒が地味につれぇ……」
まあ、小さいには小さいなりの、大きいには大きい良さがあると思うけどね?
わたしはぼいんぼいんなんですけど!!
「まあ性癖はよく分からんが、やっぱり料理上手というか家庭的ってのは鉄板じゃないか?」
「なるほどのぅ。京介はひとづまにあ、と」
「何だそれ!? え、家庭的からその話に飛躍したか!? いくらなんでも無理矢理がすぎるぞ」
「そも、すけべとーく、と忘れておらんか? 普通に好きな女性像を語ってどうする」
「どうかしてるのはお前だよ!」
:企画の趣旨を理解してない鈍感系主人公がいますねぇ
:理不尽で草
:羞恥心、捨てちゃいな?
:てか黒猫さん全然会話混じってないけど大丈夫?
「え、あ、はい」
「むぅ、京介がちゃんとりーどせぬから……」
「いやいやいや訳の分からんトークに呼ぶ咲夜が悪いだろ」
なんかこう、片方はそこそこ親しいけどもう片方があまり親しくない集まりって会話に交ざりづらい。
特に2人が知己だと余計疎外感というか、盛り上がりに付いていけなくて相槌とか茶々に落ち着いてしまう。
やはりコミュ障に3人以上のコラボは無理なのでは……?
「では黒猫よ、性癖を語ってみるかの?」
「最低最悪の誘い文句だな……」
「人前で性癖晒すとか、恥ずかしい」
:は?
:なんいっとん
:自分のあだ名知っとるか???
:たまによくわからないこと言いますねこの猫は
:¥2,500 淫猫
「おい豆腐! スパチャでも言って良いことと悪いことがあるぞ!?」
「うーむ、これは企画倒れじゃな?」
「そもそもこのメンバーでどうして成立すると思ったんですかねぇ」
「しかしもう呼べそうなのおらんじゃろ? きりんはお硬いし、あるまもああ見えて初心ゆえ」
「そこに呼ばれる私と相葉先輩って……?」
不名誉がすぎる……!
「しようがない。では好きな女性像で良いぞ。ほれ、京介から」
「雑っ。いや、まあさっきも言ったけど家庭的だと良いよな。あとはそうだな、内面というか性格も大事だよな」
「ツンデレとか好きそう」
「普通におとなしい子でいいけど!?」
「物静かで家庭的な娘を自分色に染めるのが趣味、と」
「もう俺はツッコまないぞ……」
:突っ込む!?
:女だらけの配信で何言ってるんですか!?
:あーあ炎上
:¥250 百合の間に挟まる男主人公しすべし
「なあ、帰っていい?」
「さて、次は黒猫の理想の女性像でも聞くかの」
「ついに無視!?」
理想の女性……?
うーん……。
「そもそも女の私に理想の女性像を求めるのはおかしくない……?」
「確かに」
「そうかのぅ? では試しに妾が語ってみるかの」
:¥400 期待代
:性癖語りそうでこわいんですけど
:なにか問題でも???
「黒猫とか好いな。小さくて反応も好くて、何より可愛い。うむ、黒猫で好いな」
「ぴぃ!?」
「そんな捕食される小動物みたいな声出さなくても」
「夏コミ……控室……うっ頭が……」
:捕食済み!?
:あら^~
:猫と狐、なるほど?
神夜姫先輩は、なんというかエロかった記憶しかない。
あれで町中歩いてるんだから犯罪者だよね……。
「理想を黒猫とした上でしちゅえーしょんでも語ろうかのぅ」
「やめてくださいおねがいします」
:ガチトーンで草
:どんだけトラウマ植え付けられたんだ…
:あるてまの闇は深い
:ネットニュース!?
「いやいやいやあるてまに不仲とかないから。な、な?」
「ほっほっ」
「……にゃー」
「やめようかこの話!」
:きょーすけくん大変だねぇ
:まあこの組み合わせじゃどうしても、ね?
:ラノベ主人公はだいたいツッコミ役って学会でも発表されてるから
「で、黒猫の理想はなんじゃ?」
話題が一周したと思って油断していたところに、神夜姫先輩から再びパスを受ける。
どうやらさっきの答えじゃ満足してくれないようだ。
けどなぁ、理想の女性像って言われてもぱっと思いつかないし……。
あ、
「私とか」
「んふっ」
「は?」
:まさかのw
:いやまぁ確かに言いそうだけど!
:つまり黒猫燦が黒猫燦と付き合うのが理想と
:ナルシストじゃん!
「やっぱり私ってほら、美少女だし。理想と言えば私なんだなぁ」
「ふ、ふふっ、ちょ、黒猫ちゃ、笑わせないで……」
「咲夜が本気で笑ってるの初めてみたわ」
「おいどこに笑えるポイントがあったか聞かせてもらおうか」
「はいはい黒猫かわいい黒猫かわいい」
「投げやりなんだが!?」
:¥400 まあ黒猫さんはかわいいよ。彼女にはしたくないけど
:↑わかる
:↑↑わかる
:↑↑↑ わかる
「ちょっとお前ら表出ろ!?」
「じゃあ黒猫は妾が貰うゆえ」
「ぴぃ!?」
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます