突然思い立ったから書いたもの

風のレッサー風太

第1弾 Raise Sun

夕日が差し込む教室。談笑する生徒数人の声が響く

すると突然ドアが強く開けられる。

音に驚いた生徒数名が教室の入り口を見ると少し明るめな茶色の髪をした男の子が立っていた。

キョロキョロと教室を見渡し私と目が合うと笑顔になりズカズカと教室に入ってくる。

「突然で悪いんだけどちょっときてくれない?」

「えっ...?」

彼は私の手を握りそのまま教室の外に連れ出した。

「ちょ、ちょっと待ってぇぇえ!」

スポーツはそこまで苦手じゃないけど流石に男子ほどではないので足がもつれそうになる。

体育館に連れてこられた。テスト1週間前なので部活をやっている生徒もおらず私と彼だけしかいなかった。

「はぁはぁ....突然なんのつもり...?」

「本当に悪かった!ずっと探していたんだけどい

 つもすれ違いで会えなかったから、まだ教室に

 残っていると知って嬉しくて」

そう言いながら彼は舞台に上がり私の方を向き

「俺は檀野レイ!2つ隣のクラス!」

檀野レイ聞いたことはあった。名前が私と一緒だから覚えてた。

「それで檀野君が私に何の用?」

彼はズボンのポケットから1枚の紙を私に差し出した。

「俺と一緒に文化祭に出てほしい。」

「えっ、嫌です」

知らない人に急にそんなこと言われても受ける人はいないと思う。

「うん、まぁそうだよね、そりゃそうだ、でも俺

 のやりたいもののイメージにピッタリなんだ

 よ!」

「そんなこと言われても私も色々やらなきゃだ

 し」

私は部活で発表することが決まっていた。アイドル部は思っている以上に忙しく文化祭でいつもトリを務めるほど大盛況なのだ。他のメンバーの足を引っ張る訳にもいかないのでそっちに集中したい。

「アイドル部だよね?知ってる。新入生発表会め 

 ちゃくちゃよかった!キラキラしてて!それを

 見て清宮さんにやってもらいたいと思ったん

 だ」

「そう言ってもらえて嬉しいけど、やっぱり部活  

 が忙しいから...ごめんね」

「そっか...わかった、ごめん無理言って」

「ううん、じゃあまた」

そう言って体育館から出ようとすると入り口に堀先輩がいた。

「堀先輩、こんにちは!」

「こんにちは、告白終わったの?」

多分急に連れていかれたから回りの人は告白されるんだと思ったんだろう。

「告白じゃないですよ!彼に文化祭一緒に出てほ

 しいって言われたんです、でも部活が忙しくな 

 るだろうから断ったんです」

「えぇ!?もったいない!でなよ!」

「いやいや、みんなの足を引っ張りたくないです

 し」

「大丈夫!私がつきっきりで教えてあげるから!

 一緒に出な!先生には言っとくから!」

「えっ、ちょ、堀先輩!?」

先輩は振り向くことなく走っていってしまった。

「えーと...」

振り向くと彼も困惑していた。流石にそうなるか

「...出れそうなら連絡して?」

「...うん、そうするね」

とりあえず彼と連絡先を交換し別れた。

職員室に行き顧問の先生に話そうとすると

「清宮、文化祭で発表するんだって?頑張って 

 ね!部活の方も疎かにならないようにね?」

全く止められなかったことが1番驚いた。

翌日から彼と練習をするようになった。

彼は歌とダンスを一緒にやりたかったらしく、もう曲と振りを決めてきていた。

私に許可を得ず決めたことをものすごく謝っていたけど曲を聞く感じ私も好きだったのでよかった

何より驚いたのは彼は歌うのがものすごく上手かった。ダンスもキレキレでそれを見た私は負けたくないと燃えた。

練習はずっと続き夏休みの間もたまに会って練習した。次第に彼に惹かれていった。

いつも明るく接してくれて少しの変化にも気づいてくれた。私が部活で失敗して落ち込んだ時も隣でずっと話を聞いてくれた。そして最後にはいつもの笑顔で手を差し出してくれた。

凄く嬉しかった。だから文化祭が終わったら会わなくなる気がして文化祭が来なければいいな、なんて思った。


文化祭当日

アイドル部の発表は例年と異なり1番最初大盛況で体育館はすし詰め状態になった。大成功だった。

みんなで喜びあった本当に嬉しかった。でももっと嬉しかったのは先輩や同期のメンバーが私がこの後やることを知っていたのでものすごく応援してくれた事だ。


私たちの出番が近づき2人で舞台の袖で待つ。彼が緊張しているのが見てわかった。いつもこんなんじゃないからおかしくてつい笑ってしまった。

私は彼の手を握って

「大丈夫、いつも通りいくよ」と言った。

いつも助けられた分私が助けになりたかった。

彼は私の手を握り返しいつもの笑顔を見せた。


幕が上がりライトが私たちを照らす。今まで以上にいい出来で踊れている。楽しい!凄く楽しい!

このままずっと続いて欲しかった。永遠に続いて欲しかった。

曲が終わると今までに聞いたことのない迫力の拍手が私たちを包んだ。メンバーのみんなも遠くから手を振ってくれてた。最高!最高!!最高!!

多分こんなに嬉しいことは他にないと思った。


何日かして私はまた彼と誰もいない体育館に来ていた。前と違うのは私が彼を引っ張ってここまできたこと、

「ねぇ文化祭どうだった?」

「もちろん最高だったよ!清宮のも今までで1番輝

 いてたし!」

「私も最高だった!!でも少し寂しかったんだ。

 もう一緒に練習することもないのかぁって」

「俺も寂しかったよ、一緒に練習した時間が本当

 に楽しかった」

「だからさ、私から一つ提案なんだけど?」

「うん?提案?来年の文化祭もやるって言うなら

 もちろん賛成だよ!」

「ううん、違うの、これからもずっと私を檀野君

 の隣にいさせるっていう提案」

「えっ?それって...」

私は彼の口を塞ぐように唇を重ねた。

「好きだよ、檀野君...ううん、レイ君」

彼は驚いた様子だったがすぐいつもの笑顔に戻り私をギュッと抱きしめてくれた。


まだ私たちのステージは続く...

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突然思い立ったから書いたもの 風のレッサー風太 @Futa1201

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