第8話 二度目の叫び(転売ヤー)
オレは、部屋を埋め尽くした大量の箱を前に途方に暮れていた。
先ず、マスクがオークションサイトで売れなくなった。誰かが注意喚起の為、ネタレベルの法外な値段で出品し、それが一気に拡散。ある意味、デマの広がりと同じだった。
次に、最高上限額落札して、お金を払わない者が現れた。そいつのアカは運営が停止させたが、別アカで、『令和の鼠小僧』は鼠算式に増殖していった。
そして最後には、政府が重い腰を上げた。国民生活安定緊急措置法という、想い付きの様な政令改正で。
この後の流れは、分かり切っている。何故なら、オレには、先見の明があるからな。
ネット民によって、転売ヤーの特定とデマ発信源の特定がなされるだろう。つまり、オレはネットに晒される。どっちかだけでも大炎上必至なのに、オレのダブルエントリーだと知れたら、仮に逮捕されなくても、世間的には死刑と同罪だろう。稼いだ金で、東南アジアにでも逃亡しようか? 物価も安いだろう。あ! 入国制限されてるんだっけ。
どこで間違えた? こんなことなら、会社、辞めなきゃ良かった。
「ふざけんな! くそ!」
見苦しく吐いた悪態は、目の前の紙製品に吸音されていった。
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