番外編 博愛の治癒士リサ その1

 「リサ、無事か!!」


神により館の前まで強制転移されたロッシュは、暫しの茫然自失状態から立ち直り、館の中に駆け込むと、真っ先に妻の安否を確認した。


ノックもせず、いきなりドアを開けた夫に驚き、少し非難する仕種を見せはしたが、彼の顔が驚きに満ちている事に満足して、病床の自分がまだ身だしなみを整えていない恥ずかしさを収めた。


「あなた、お帰りなさい。

随分早く戻って来れたのね。

・・どうしたの?」


夫が顔をくしゃくしゃにして泣き出すのを見て、訳が分らず問い掛ける。


自分の容態が良くなったのは見れば判るだろうが、病気が治った事まで分ったのかしら。


「・・よか・った。

本当に・・よ・・かっ・・」


こみ上げてくる喜びと安堵の気持ちが堰を切ったように溢れ出し、陸に言葉も発せない夫を見つめ、その自分を想う気持ちの強さを改めて嬉しく感じながら、暫く忘れていた穏やかな時間を過ごした。



 「君も神に助けられたんだね」


感情が収まり、子供の頃以来、妻の前で泣き顔を見せなかったロッシュは、少しばつが悪そうに話す。


「ええ。

もう駄目かと思って死を予感した時、いきなり蒼い光に身体を貫かれて・・その光の中で声が聞こえたの。

そして、治癒の高位術式と厖大な魔力が流れ込んで来て、気付いたら、そこのテーブルに金貨とパンが置いてあったわ」


「声?

神は何て?」


「『・・君はもっと幸せになって良い。この力が、これからの君の人生を、実り多きものにしてくれる事を祈る』って。

とっても優しい声だったわ」


「僕にはね、こう言って下さった。

『天命とは、人事を尽くした後に下されるもの。お前のこの数年の努力に報いよう』ってね。

・・正直、僕は今まで神なんて信じていなかったし、いるとも思わなかった。

誠実に、懸命に努力したって、辛い事ばかり起こってきたからね。

まあ、死に物狂いで努力したのは君が僕の為に働いてくれてからだけど。

その点では、神は本当に我々をよく見ている」


「ねえ、安心したらお腹が空いたわ。

折角だから、神様からのパンを食べながら話さない?

お茶を淹れるわね」


「そうだね。

僕も戦地ではあまり食べられなかったから・・」


「えっ!」


ベットから降り、鏡で身だしなみを整えようとしたリサが驚いたような声を出す。


「どうした?」


「戻ってる・・・病気で衰えて、最近はあなたの前に出るのも恥ずかしいくらいだったのに。

・・嬉しい。

こんなにまで良くしていただいて、私は神様に何をお返しすれば良いの?」


病に倒れた上、若い女性として、好きな人の前では綺麗でいたいという当たり前のような願いさえ、叶わなくなっていた自分。


命を助けていただいただけでなく、高位魔法まで授与されて、そのうえ容姿まで以前の状態に戻して下さった神様は、一体私の何処にそれだけの価値を見出して下さったのか?


どうやってそのご恩に報いたら良いのか考える自分に、夫から言葉がかけられる。


「以前のような姿を取り戻してる君を見て、病気が治った事は直ぐに分ったよ。

きっと、僕と同じ様に、神様が助けてくれたんだって。

だって、僕よりずっと君の方が頑張っていたんだから。

僕はきっと御負けさ。

だから、有難う。

君のお陰で僕は死なずに済んだ。

君には助けて貰ってばかりだね」


もう、耐えられなかった。


ロッシュの為に頑張ると決めたあの日から、彼の前では一度も流さなかった涙を溢れさせ、声を上げて泣いてしまった。


「美味しい。

こんなに美味しいパン、食べた事ないわ」


自分が泣いている間に、何時の間にかお茶の用意をしてくれていたロッシュと共に、柔らかく、芳醇な香りを放つパンを口に運ぶ。


今まで食べたどんなパンより柔らかく、それでいながら表面はカリッとした歯ざわりを失わない、しかも噛み締める度に、食べ進めるごとに味わいがある。


様々な具材を練り込んで作られた物は、パンとその具材のマリアージュが素晴らしく、1つで幾通りもの味わいをみせる。


不意に、ここ数年の出来事が心に浮かび上がってきた。


ロッシュと別れろと言う両親と喧嘩して家を飛び出した事。


彼の為に、身体に鞭打って限界まで働いた事。


お客さん達が、窶れていく自分を心配して、『美味しい物でも食べな』と心付けをくれた事。


ロッシュが官吏試験に上位合格して、二人で喜び合った時の事。


病に倒れ、治癒師に掛かって失敗し、彼が折角受かった職を諦めてまで作ってくれた、なけなしのお金を失い、呆然とするロッシュを見るのが何より辛かった事。


先程、あんなに泣いたのに、また涙の雫が零れ落ちる。


ロッシュを見れば、彼もまた、静かに涙を流していた。



 本当に嬉しそうな妻の顔を見るのは、妻が病に倒れた時以来で、自分の心に重く伸し掛かっていた自責の念が、ゆっくりと消えていく。


事業に失敗し、両親も失った自分の側からは、実に多くの者達が去って行ったが、リサだけはいつも側にいて、明るく励ましてくれた。


彼女の援助を受けて懸命に勉強していた自分を、色々と揶揄する者も多く、その度に彼女に心から感謝しながら、更に勉学に励んだ。


上級官吏に合格し、やっと恩を返せると思った矢先、病に倒れた彼女の治療代すら払えなかった時ほど、自分を呪った事はない。


絶望の内に果てようとしていた自分を、神は助けてくれた。


あの時、ここ数年の努力に報いると言われたが、そんな事は他の誰かもやっている事だ。


自分を助けてくれた理由は、リサの事を除いても、きっと他にある。


それを見極めるためにも、これからも諸学を学び、リサの手助けをしながら、己を磨いてゆこう。


そう考えた時、彼の頭の中に、自分の胸だけに秘めていた辛い記憶が次々に浮かんでくる。


親に死なれた後、貴族といえど下級な自分は、上級貴族からは同じ貴族として見て貰えず、裕福な平民からは『貴族のくせに』と馬鹿にされた日々。


学校の試験で上位を取る度に、『年下の女を働かせて勉強してるんだから、当たり前だよな』と嫌味を言われてきた事。


任官の辞退と引き換えに、リサを治癒師に診せるお金を出してくれた彼は、その内の一人だ。


けれど、リサにこれ以上の迷惑をかけないために、何を言われても黙って耐えてきた。


パンを噛み締める度、それらの記憶が涙と共に昇華してゆく。


自分がしてきたこの思いを、ただ辛かったで済ませてはいけない。


代償を払った分、教訓として活かさなければ。


せめて自分は、生まれや財産などで人を評価する事はしまい。


人の努力を、熱意を、ただ真っ直ぐに称えられる人物になろう。


またしても泣いている自分を見られたくなくて、僅かに妻に視線を向けると、今度は彼女は何かを思い出しているように、穏やかな涙を流していた。


そうだな。


お互いに、今日だけは存分に泣こう。


そして明日からは、思い切り笑おう。


懸命に生き、人の役に立つ行いの中で、神の御意思に副う事を信じて。



 神に頂いた金貨で、支払いの滞っていた馴染みの店に、付けて貰っていた分の支払いをする事ができ、心も軽くなる。


皆、何も言わずにそうしてくれていたけれど、落ちぶれた自分達に今までと変わらぬ態度で接してくれていた数少ない人達だったので、申し訳なさと自分に対する情けなさで一杯だった。


それが取り除かれ、妻と二人、新たなスタートをきれる事に感謝し、今後の事を妻と話し合う。


「療養所を開こうと思うの。

私のように、病に苦しみながらも、お金がなくて、ただ死んでいくしかない人々を助けてあげたいの。

神様はきっと、それを望まれていると思うわ。

何より、私のした辛い思いや感じた苦しみを、お金がないなんて些細な理由で、他の人にさせたくないの。

あなたは賛成してくれるかしら?」


「賛成するよ。

愛する人が病気で苦しんでるのに、何もしてあげられない地獄のような苦しみは、僕にもよく分る。

今の治癒師達は少し反省しないといけない。

世俗にまみれ、欲に駆られ過ぎて、人の命とお金を天秤にかけている。

仕事である以上、お金を稼ぐ事は当然だ。

だが、人の命と接する仕事では、そればかりを追い求める事は間違っていると僕も思う。

勿論、限られた魔力で遣り繰りする彼らにも言い分はあるだろう。

だから、僕達でやろう。

この館を使うと良い。

君の準備が整い次第、始めよう。

僕は暫く、君の手伝いをしながら、次の仕事を探すよ」


「軍は辞めるのね?」


「ああ。

元々、お金を稼ぐ最後の手段として参加しただけだから。

僕には向いてないよ」


「良かった。

・・平凡でも良い。

あなたとのんびり、静かに暮らせたら、私はそれで良いわ」


この時は、本当にそう思っていたのだけどね。



 『アスタート療養所』


1週間後、軍を辞めたロッシュは、自身の館に看板を掲げ、馴染みの店や世話になった人達に、二人で作ったチラシを配り歩いた。


その料金表を見た人達は、皆一様に驚いた。


価格が、一般の治癒師に掛かる半値以下だったからだ。


しかも、その時に持ち合わせがない場合は、相談に応じると書いてある。


世間の治癒師達は、絶対に付けを認めない現金前払いが鉄則だ。


治癒師だけではない。


およそ魔法で商売をする者なら、当たり前の事とされている。


魔法は、他の品物と異なり、使えばそれを行使したという証拠が残らない。


大勢の人の前で使いでもしなければ、目撃証人も得られない。


使ってから、払わないと言われたら、元に戻すにも魔力を使うし、治癒などの魔法ではそれすら不可能だ。


だからこそ、魔法師達は、お金を持っていない者には見向きもしないし、魔法が必要な人も、代金が用意できなければ頼めもしないのだ。


その反面、ロッシュ達が頼った治癒師のように、なけなしのお金を用意したのに、期待した効果を出せない魔法師もいる。


その場合、当然揉める事になるので、前もってその時の事を書類に残しておく者もいる。


ただ、緊急の場合や、人の命が懸かった治癒魔法では、他に頼る手段がない事から、多くは術師達の言いなりで決められてしまう。


ロッシュ達もそうであったため、失敗したにも拘らず、全くお金が戻らなかったのだ。


その教訓を活かし、双方が納得できるよう、簡単な治癒魔法以外は前払いのシステムすら採らなかった。


皆が驚くのも無理はない。


「だが何時の間に、そんなに治癒魔法が上達したんだい?

あんたの奥さん、ついこの間まで病で臥せっていただろう?」


気心の知れた何人かの者にそう尋ねられた彼は、正直に話した。


「神が授けてくれたんですよ」


これには、尋ねた全員が絶句した。


彼の人柄を知る者でなかったら、鼻で笑われたであろう。


「・・とにかく、もし必要になった時は遠慮なく来て下さい。

ただし、そこに書いてある通り、うちは平民の方限定です」


その時は、そう言い残し、その場を去る事しかできなかった。



 開業してから10日が過ぎても、誰も来なかった。


やはり、いきなり治癒師として店を出しても、世間一般の療養所は気軽に行けるような料金ではない事、これまでに何の実績もない事などが災いし、人々の足を遠ざけていた。


しかし、二人は焦らなかった。


別に、営利目的だけでやっている訳ではない。


生活費を稼ぐだけなら、リサが元気になった今では、彼女の薬代もかからず、以前よりずっと余裕がある。


ロッシュは、任官試験に上位合格した実績から、裕福な平民の家庭教師の職に困らなかったし、以前の家業で父を手伝い、経理にも精通していたので、商店などの相談にのって、手数料を得る事もできた。


時々は、市場で馴染みの店のために臨時の力仕事もしていたので、二人で生活する分には困る事はない。


生死の境をさ迷うような病気や怪我でもしない限り、本来なら、お金に不自由する事はないのだ。


気立てが良く、美しいリサも、その気になれば幾らでも働き口がある。


でも、今は彼女は休ませている。


これまで散々働いてきたのだ。


元気になったからといって、直ぐに働かせるような事はしない。


彼女にだって、やりたい事はある。


今は好きに過ごして欲しいと心からそう思う。


自分は、彼女の陰りのない笑顔さえ見られれば、それで幸せなのだから。


だが、そんな細やかな暮らしは、開業してから2週間が過ぎた頃に終わりを告げる。


療養所に、初めての患者がやって来たのだ。


「済みません、どなたかいらっしゃいますか?」


控え目なノックの音と共に、か細い声が聞こえてきたのは、リサと二人で昼食後のお茶を飲んでいた時だった。


下級とはいえ、貴族の屋敷なので遠慮でもしているのかと思う程、その声は小さく、弱々しかった。


玄関の扉を開けると、まだ10代前半くらいの女の子が、自分が配り歩いたこの店のチラシを両手で握り締め、俯き加減に立っていた。


少し薄汚れた、古着のような服を着て、身奇麗にしていればそれなりに可愛いだろうに、何日も風呂に入っていないせいか、髪もぼさぼさで、埃まみれだった。


「いらっしゃい。

どういうご用件かな?」


只でさえ萎縮している相手を怖がらせないよう、努めて穏やかな声で応対する。


「・・あの、こちらの療養所では、お金がなくても相談に乗って貰えると聞いて、・・今は持ち合わせがないのですが、後で必ずお支払いします。

ですから、両親を助けて下さいませんか?」


「今直ぐにでも、命に関わるような病気かい?」


「いえ、そこまでではありませんが、二人とも、もう1か月以上も寝込んでいて、かなり苦しそうなんです。

段々咳が酷くなってきて、夜も陸に眠れてなくて・・」


どうやら聞き方が悪かったようだ。


まるで、大した事ないなら、診て貰えないとでも思っているような必死さで話す少女。


「分った。

とりあえず中に入りなさい。

妻に話をしてくるから、少しそこの椅子で休んでいてくれ」


「有難うございます!」


診て貰える希望が出た少女は、深々と頭を下げ、言う通りにする。


2階への階段を上がり、自室で自分を待っていたリサに、状況を説明する。


「直ぐに向かいましょう」


妻の返事は、聞くまでもなかった。



 少女に案内されて出向いた家は、平民の中でも貧しい部類に入る人達が暮らす地域にあった。


その中の1つ、粗末な平屋の建物に、その両親は臥せっていた。


家の中は僅か3部屋しかなく、玄関の扉を開けるといきなり台所で、その奥に両親の寝室と、少女の部屋がある。


最低限必要な物以外、何もない家の中を進み、両親と思しき人物を見る。


成る程、確かに今日明日が山場という訳ではないが、かなり衰弱し、このまま何もせず放っておけば、そんなに長くは持たないかもしれない。


妻を見る。


その顔は、少し緊張していた。


治すのが難しいのかと思ったら、どうやら初めて試す治癒魔法に戸惑っているだけのようだ。


妻が一人に手をかざし、術名を唱えると、その手がぼんやりと蒼く光り、相手の表情が見違えるように良くなる。


というか、元気になり過ぎて、いきなり目を覚ました。


「ええと、・・あなた方はどなたですか?」


起き上がり、周囲を見回してから、ロッシュ達に気付いた少女の父親は、訳が分らないというように尋ねる。


「娘さんに依頼されてお伺いした治癒師です」


「え?」


男性が娘を見る。


「お前、どうやってそんなお金を?」


「この方達は、料金は後払いでも良いと仰ってくれたんです」


「本当か?

・・いや、それでもうちに払える金額ではないだろうに」


「まあ、その話は後ほど。

奥さんの方も治療してしまいましょう」


未だ男性の隣のベットで臥せっている女性に目を向けながら、ロッシュは言う。


「いけるかい?」


妻に尋ねるロッシュ。


リサは、普段は見せないような真剣な表情をしていたが、頷き、女性の方に手をかざした。


先程と同様に、直ぐに母親の方も起き上がる。


「お母さん!」


余程心配していたのだろう。


母親が元気な顔で起き上がると、少女は嬉し涙を流し、駆け寄った。


「有難うございます。

本当に有難うございます。

もう駄目だろうと諦めていましたが、二人共こんなに元気にしていただいて。

妻だけは助けてあげたかったのですが、腑甲斐無い事にその分のお金すら用意できずに・・。

・・それで、料金はお幾らでしょうか?」


男性は、折れんばかりに腰を曲げ、感謝の意を表した後、一転して不安げに、金額を尋ねてきた。


「ご心配なさらずに。

それほど高い金額は頂きませんから。

今お持ち合わせがなくても、お金ができた時で構いません。

明日にでも、店のほうにお越し下さい。

その時に、詳しいお話を致しましょう」


ロッシュがそう言うと、男性はほっとしたように胸を撫下した。


「では、帰ろうか」


相変わらず、いつもは見せない難しい顔をしているリサに声をかけて立ち去ろうとすると、彼女が口を開いた。


「待って。

失礼ながら、この家は少し汚れているわ。

また病気になるといけないから、浄化の魔法を掛けてみても良いかしら」


リサが自分からこんな事を言うのは珍しい。


確かに汚れているが、それだけが理由とは思えない。


その意図するものを考えていると、リサが再度、今度は夫婦に向けて口を開く。


「勿論、この分の料金は頂きません」


その言葉で、顔を見合わせてどうしようか考えていた夫婦は、遠慮がちに頷いた。


リサが一旦目を閉じ、何かを確認するようにしてから、徐に瞼を開き、術名を唱える。


ほんの少し、彼女の身体が蒼く光を帯び、その瞬間、家の中が一変した。


つい先程まで、お世辞にも奇麗とは言えなかった屋内は、塵1つない程に輝いている。


それどころか、その場に居合わせた皆の服や身体まで、さっぱりと、身奇麗になっていた。


「わあ!」


少女が感嘆の声を洩らす。


夫婦は口も利けないくらいに驚いている。


普通の浄化の魔法は、その時付いた簡単な汚れを落とすか、せいぜい、自身の垢や付着した少量の排泄物を分解する程度のものでしかない。


それすらも、人の魔力により、個人差がある。


トイレに使うような柔らかな紙が未だ存在しないこの世界では、ある植物の葉で代用しているが、それが手に入らない時には、水で洗うか浄化の魔法を使うしかないので、多くの人は、自身の魔力量にもよるが、普段あまり魔法を使用しない。


一般的に、女性より魔力量が劣る男性の場合、平凡な者であれば、毎日浄化の魔法を使えば、他には最も魔力の少ないライトの魔法すら使えない。


更に言えば、ある程度の魔力があっても、訓練しなければ、男女共に魔法が使えない。


魔力があるからといって、いきなり使える訳ではないのだ。


浄化の魔法自体は、魔法を使える者ならほとんど誰でも行使できる平凡な魔法だ。


その威力が常識はずれだが、妻が未だに難しい顔をしている理由は何だろう?


とりあえず、帰ってから尋ねてみよう。


帰り際、部屋が奇麗になった事で、少女の部屋にある1枚の紙が視界に入る。


今日は色々と、考える事が多そうだ。



 「あなた、少し大切なお話があるの」


家へ帰る間も、何かを考えているのか、妻は一言も話さなかったが、着いた途端、そう切り出してきた。


「分った。

応接室で話そう」


お茶を淹れる余裕すらない程思い詰めた妻を連れ、部屋のソファーに向かい合って座る。


「それで、どうしたんだい?」


「私が神様から治癒の術式と魔力を頂いた事は話したわよね」


「ああ、高位の術式と厖大な魔力を頂いたと聞いたから、今日くらいの治療なら大丈夫だと思っていた。

最後の浄化の威力には、少しびっくりさせられたけど」


「あんなものじゃないの」


「うん?

何がだい?」


「だから、私が頂いた魔法や魔力は、あんなものじゃないの」


「・・それは、プラスの意味で言ってるよね?

つまり、もっと凄い事ができるという意味だね?」


「ええ。

今日の治癒魔法、ごく一般的なヒールだけれど、あなたはどう思った?」


「凄い威力だと思ったよ。

世間の治癒師で、あれだけの効果を出せる人は、そうはいないだろう。

随分魔力も減ったんじゃないか?」


「減ってないの」


「え?」


「全然減ってないの。

3回も魔法を使ったのに、減った感覚が全くしないの。

自分でも分るのよ。

・・それにね、あなた、凄い威力だって言ったでしょう?

でもね、私、初めて治癒魔法を使うから、魔力を最小限に抑えてたの。

それであの効果なのよ」


「最小限?

あれで?」


妻の言葉でなかったら、僕は信じなかっただろう。


妻が病に臥せっていた時よりも軽いとはいえ、あのままでは何れ命を落としたであろう事は明白だ。


そんな状態の患者を、最小限の魔力でぴんぴんさせるなんて、自分が高額の代金を支払った有名術師にもできはしない。


「ええ。

でもね、問題はそこじゃないの。

私、今日初めて治癒魔法を使ったでしょう?

それで、いざ魔法を行使しようとしたら、頭の中に、神様から頂いた術式の全容が見えたの。

頂いた時は、一塊の術式のようで、複雑なもののように見えたから、多分、高度なものだろうくらいにしか分らなかったのだけど、それを使用する段になって、各術式が整理された目次のように解けて見えたの。

それらを見ていたら、神様は、私が単なる療養所をやっているだけでは満足されないのではないか、そう思えたの」


「・・一体何が見えたんだい?」


「順に言うわね。

・・ヒール、ラインヒール、ヒールウェイブ、リジェネレーション。

回復系はこの4つ。

ヒールだけで、解毒や麻痺、魅了などの状態異常の回復も兼ねてるわ。

注ぎ込む魔力の量で、人間以外の大型の生物でさえ、回復させる事が可能だわ。

リジェネレーションは体力、気力などの再生効果を持ってる。

これも、注いだ魔力の大小で、持続時間が変わる。

あとね、何故か水魔法と火魔法もあったの。

これは単純なウォーターボールとファイヤーボールだけで、水魔法は攻撃というより、単に水を溜めるくらいの効果しかないわ。

火魔法は攻撃にも使えるけど、今の所何かに火を点けるくらいしか思いつかない。

ヒールは分るの。

治癒魔法の基本だから。

でも、ラインヒールやヒールウェイブは通常の療養所では必要ないでしょう?」


「ヒールウェイブ?

軍所属の治癒師でも使える人は数人で、しかも、一度使えば数日は使えないと聞いた事がある。

確かに、その2つは大規模な天災でもない限り、普通の療養所では必要ないな。

ほとんど戦闘用だ。

だけど、神様が君にその力をくれた時、何て仰った?

『これからの君の人生を、実り多きものにしてくれる事を祈る』、そう仰ったんだよね?

その神様が、君が戦争に参加するのをお喜びになるとはとても思えない」


「そうよね。

だから私も、神様のお考えがよく分らなくて、悩んでいたの」


「神様の深遠なお考えは、今の僕達では到底理解できないよ。

とりあえず、今はできる事をやっていこう。

そうすれば、やがて分る時が来るかもしれない」


「・・そうね。

その通りだわ。

有難う、ロッシュ」


「礼を言われるような事じゃないさ。

僕達は夫婦なのだから。

何事も二人で考え、共に助け合っていこう。

・・お茶でも淹れるね」


少し照れたので、そう言って、席を立った。



 翌日の昼過ぎになって、昨日助けた夫婦が、少女に連れられて館にやって来た。


「昨日は本当に有難うございました。

親子三人、とても奇麗になった家で、久々に楽しく過ごせました」


「それは良かった。

お役に立てて何よりです」


「それで、お支払いの件ですが・・」


「娘さんがお持ちのチラシに記載されている通りの料金ですので、通常のヒールですと、1回でお一人様銀貨3枚ですから、お二人で銀貨6枚になります」


「あの、普通の治癒師にお願いしても、最低でも一人銀貨10枚以上は取られますし、あんな酷い状態の私達を治療するには相当の魔力をお使いになられたと思いますが、本当にその料金で宜しいのですか?」


「勿論です。

状態に関係なく、ヒール1回は1回の料金ですから」


「有難うございます。

本当に助かります。

・・それで、ご相談したいのですが、長く病気で患っていたため仕事に就けず、今は持ち合わせが足りなくて、銀貨2枚が精一杯なのです。

大変申し訳ありませんが、少しお支払いをお待ちいただけませんでしょうか?」


「分りました。

では、当座の生活費も必要でしょうから、今日は銀貨1枚だけ頂きます。

あとは、お金ができた時で結構です」


「本当に何とお礼を言ったら良いか・・有難うございます。

できるだけ早くお支払い致しますので」


「それと、もしお仕事にお困りになった時は、幾つかこちらでご紹介する事も可能です。

ただ、相手先にも多少の利益がないと引き受けていただけませんので、その場合は、通常の賃金よりほんの少し安くなります。

・・あとは、これは娘さんにお聞きしますが、貴女は勉強がしてみたいですか?」


昨日、彼女の部屋で目にした用紙。


それは、高等学校への入学用件を記したものであった。


大分前に手に入れたものらしく、紙が黄ばんで、所々破けていた。


「え?

・・あの、もしお金があったら、してみたいです」


「君は今、何歳かな?」


「もう直ぐ15になります」


「それだともう初等学校には入れませんね。

高等学校の入学資格は16歳から18歳までですが、その他に、初等学校卒業程度の学力と、入学金と授業料が必要になります。

期間は3年。

君にどの程度の学力があるかは分りませんが、入学金だけでも金貨2枚、授業料は月に銀貨20枚、教材を買う場合はこれとは別に年間で銀貨50枚かかります」


エルクレール帝国の初等学校は、10歳から13歳までの男女が入れ、卒業までに2年かかる。


10歳で入る子供は、卒業してからの4年間を、家庭教師などをつけて高等学校の勉強を先取りしたり、魔法や芸術の習得など、専門的な学習をするのに充てる。


だがこれは主に貴族や裕福な一部の平民だけで、ほとんどは、12か13歳で入る。


初等学校に入学するのにも入学金が金貨1枚かかり、授業料も月に銀貨5枚かかるため、多くは家の手伝いや簡単な仕事で働きながらお金を得て通う。


エルクレール帝国は、近隣諸国の中でも1、2を争うほど豊かな国であるが、それでも、平民の中には初等学校にさえ通えない者も多い。


増して、高等学校は、任官試験を受ける者や、学者、魔法師、芸術家を目指す者以外には無縁の存在として、庶民には高嶺の花であった。


うちにはとても無理です」


聞いていた父親が、諦めたような顔で言う。


「そこでご相談があるのですが、もし娘さんにその気がおありなら、私が勉強を教えて差し上げます。

2日に1回、各2時間、算術や語学、法律、経営学等です。

その代わり、教えた日には1時間、家の仕事を手伝って貰います。

如何ですか?」


「え?

それだけで良いんですか?

2時間教えていただいて、1時間働くだけで?」


「ええ。

妻もこれから忙しくなると思いますし、家事をしてくれる方がいると助かるのです」


「・・お父さん、私、勉強してみたい」


少女が遠慮がちに声に出す。


「こちらとしては願ったり叶ったりですが、見ず知らずの私達に、何から何までこんなに親切にしていただいて、その理由をお聞きしても宜しいですか?」


娘の顔をちらっと見た父親は、少し不安げに尋ねてくる。


下級とはいえ貴族が、自分達のような下層の平民に、そこまでしてくれるのには訳があるのではないかと、心配になるのは尤もだ。


「・・私達も、辛く苦しい時に、神によって助けられたからです。

神に頂いたご恩を、困っている方々のお手伝いをする事で、少しでも神にお返ししたい。

只、それだけです」


「神、ですか?」


「ええ。

私もつい最近までは信じておりませんでしたが、神は本当に居られます」


少女の父親が、まじまじとロッシュを見る。


彼の清らかで、真っ直ぐな眼差しを受けて、何かを納得したように頷く。


「分りました。

娘を宜しくお願い致します」


「有難う、お父さん。

・・それから、アスタート先生、これから宜しくお願いします」


少女はとても嬉しそうに微笑んだ。



 「そう。

でもどうして彼女に勉強を教えようと思ったの?」


少女達が帰った後、妻に報告にきたロッシュの話を聞いたリサは、疑問に思って尋ねる。


「1つには、彼女の部屋にあった高等学校の募集用紙が目に入ったから。

もう1つは、彼らのこれからの事を考えたからなんだ」


「これからの事?」


「僕なりに色々考えてみたけど、お金がなくて治癒師に掛かれない人に、その時だけ治療を施しても、根本解決にはならないと思うんだ。

勿論、安価で適切な治療は大前提だ。

だけど、無料でするのでなければ、仮令たとえ安くても支払うお金は必要になる。

今日の人達も長く病気で働けなかったせいで、お金が足りなかっただろう?

ならば、そのお金を稼ぐ手段を与えてあげれば良い。

ここのチラシを配りながら、先々で仕事の需要はないか、どんな仕事があるのかを聞いて回っていたけど、学がなければ、ほとんどは荷物運びや掃除、皿洗いなどの単純で安価な肉体労働しかない。

これではいつまでたっても彼らは貧困から抜け出せない。

お金を短時間で効率良く稼ぐには、どうしても頭脳労働や特殊な技術が必要になる。

そのために、意欲はあっても貧しくて学校に行けない人達に学問を教えて、そこから抜け出す機会を与えてあげたいんだ。

君が助けた人に、僕がアフターケアをしていく事で、より深く、救済できると思う」


「・・そうよね。

一度病気を治しても、同じ環境にいれば、またそうなる可能性の方が大きい。

利益面だけで考えるなら、治癒師にとっては患者が減らない方が良い。

だけど、私達はお金のためだけにしている訳ではないものね。

私も賛成するわ」


「有難う。

君に相談したい事はもう1つあるんだ。

神様は君に水と火の魔法もくれたと言っていたよね?」


「ええ。

単純なウォーターボールとファイヤーボールだけだけど」


「一度それを使って、どのくらい水が溜められるか、お湯が作れるか、試して貰えないか?」


「良いけど、どうして?」


「もし君の魔法で十分なお湯が確保できるなら、この館の敷地に、浴場を造ろうと思うんだ。

・・先日訪れた地域の様子は君も見ただろう?

建物は掃除すればある程度は何とかなるけど、身体の汚れは彼らが使う浄化程度では十分に落ちない。

病気の予防は清潔な環境を作る事から始まる。

仮令毎日ではなくても、定期的に風呂に入れれば、かなりの数の病気が減らせるはずなんだ。

普通の人の魔力量なら、こんな事は不可能だ。

でも、君はあれだけの治癒魔法や浄化を使っても全然減らないと言っていた。

だから、試してみたいんだ。

・・何もかも君に頼っている自分が情けないけど、手伝ってくれないか?」


そう言って、頭を下げるロッシュ。


「止めてよ。

頭なんか下げないで」


リサは徐に椅子から立ち上がり、ロッシュの側に歩み寄ると、彼をそっと抱き締めた。


「私達は幼馴染で、自然に恋人同士になり、当然のように夫婦になった。

これまでの人生の大半を、一緒に過ごしてきたわ。

あなたと私は一心同体。

あなたのしたい事は、私のやりたい事でもあるの。

だから、私にも手伝わせて」


「・・有難う」


泣きそうな顔を妻に見せないように、彼もまた、リサを優しく抱き締めて、その肩に顔を埋めた。



 それからは、少女の親から話を聞いた彼らの近隣の住人達が、日に何人か、治癒を受けにやって来るようになった。


動けぬ者がいる場合は、妻と二人でその家まで赴き、治癒の序でに、汚れた家を浄化して回った。


料金を全額払える者は稀だったので、足りない分は、自分の館の浴場建設予定地で、その作業に従事して貰う選択肢も作った。


2日に一度来るようになった少女の名はソナといい、溢れる意欲と、元々の頭の良さで、ロッシュが教える事をどんどん吸収していき、彼の指導意欲を掻き立てた。


授業が終わると、昼食を妻との三人で食べながら、テーブルマナーなどの作法をも教え、仕事と称して裁縫や料理の基礎を学ばせる。


その傍ら、ロッシュは夜に、高等学校時代と変わらぬ程の勉学に勤しんだ。


妻が働いて学費を稼いでくれていたあの頃よりも、肩の力が抜け、より多くの分野に目を通し、妻の供で赴く先で貧しい人々の暮らしを見ては、何が必要か、どうしたら良いかを考える日々。


リサの治癒に安価で効果が高いとの評判が立ち、貧しい人だけでなく普通の平民にも客が現れ始めると、それらの客を通して、仕事に必要な人脈をも築いていった。



 4か月経った頃には、到頭浴場も完成した。


男女別で、其々三十人くらいの人が入れる広さ。


上流貴族のように大理石で造る訳にはいかなかったが、木造でも、技術のしっかりした職人と知り合う事で、上質の湯船を作成でき、大人が入っても、座って首まで浸かれる深さがある。


貴族といえど、大きな領地を持つ上流貴族でなければ、その屋敷にある風呂は、せいぜいドラム缶3つ分くらいの広さでしかない。


魔法が使えなければ、水を汲むのも、お湯にするのにも苦労する。


湯船の素材も、木は腐るとのイメージから、石造りが定番で、その分、建設費用もかかる。


当然、庶民には高嶺の花であり、大部分の人々は、桶にお湯を入れて、布で身体を拭くのが普通であった。


では何故、ロッシュは木で造ろうとしたのか?


そこにはある秘密があった。


毎日深夜まで書物に目を通し、国の大図書館の常連とまでなって、浴場を安く効率的に建設する術を探していたロッシュは、日頃の疲れから、ついそのまま書物に突っ伏して寝てしまう。


朝の光を浴びて、重く感じる身体をどうにか起こした彼の視界に、本の間に挟まった1通の手紙が映る。


寝落ちする前はなかったはずだと不思議に思った彼がその封を切ると、中から、木造で浴場を建設する際の注意点や、石鹸の作り方、水の効率的なろ過方法などが記された十数枚の紙が出てきた。


驚いて差出人を確認したが、封筒には何も書かれていない。


だが、ある事に気が付く。


その封筒の材質が、あの、パンの包み紙と同じだったのだ。


その事に気付いた彼は、神に感謝の言葉を述べ、妻の下に走るのだった。



 完成した湯船に、リサが魔法で水を張る。


人がゆったりと三十人は入れる浴槽に、どんどん水が溜まっていく。


5分もせずに湯船一杯の水が溜まると、ロッシュは妻に尋ねる。


「魔力はどのくらい減った?」


「うーん、大体だけど100分の1くらいかな。

ほんの少し欠けたくらいね」


「・・想像はしていたけど、神様は君に大魔法師の何倍もの魔力をくれたんだね。

あまり人には言わない方が良いな。

それじゃあ、今度は火魔法でお湯にしてくれるかい?」


「ええ」


リサが水の中に片手を入れる。


ファイヤーボールをそのまま水に打ち込むと、表面の水分が蒸発し、水位がかなり下がる。


効率が悪く、室内が湿気だらけになるので、普通に放つより何倍もの魔力が必要になるが、水中で熱を発した方がずっと早く温まるのだ。


数分で、リサが水中から手を引き抜く。


「こんなものかしら」


「どれ」


ロッシュが自分の手で温度を確かめる。


少し熱めだが、湯もみをすればちょうど良いくらいだろう。


「うん、良いね。

魔力の減りは?」


「これはさっきより多いわね。

今ので残り9割くらいね」


「それでもまだ9割あるんだ?

・・時間にして約10分、魔力量1割か。

ただ、男女別で浴槽は2つあるから、実質その2倍。

営業中も一度はお湯を入れ替えないとならないだろうし。

・・毎日2つはきついかな。

1日ずつ交互に開けるかい?」


「私なら大丈夫。

それでもまだ魔力は半分以上残る訳だし、簡単な治癒魔法は、ほとんど魔力が減らないから。

それに、皆に1日の疲れを癒す場を作ってあげたいの。

一生懸命働いて、汗や埃で汚れた身体を奇麗に洗い流して、また次の日頑張れる。

貧富の差なく、皆がそんな暮らしができたら素敵だと思うわ。

私では、ここだけで精一杯だけどね」


「十分だよ。

神様ではない以上、人一人ができる事は限られている。

君は本当によく頑張ってるよ。

僕ももっと努力しなきゃ」


「あなただって十分頑張ってるじゃない。

人の為に役立つ知識を得るため、毎日夜遅くまで勉強してるの、私、知ってるのよ?」


「まだ結果を出していないけどね。

有難う。

・・それじゃあ、明後日から浴場も開業しよう。

念のため、君の魔力が1日でどれくらい回復するかも見てみないといけないし。

時間はどうする?

君の診療が終わる頃に開ければ良いかな?」


「それだと少し遅いわね。

営業時間が短いと混雑するかもしれないし」


「でもそうすると、僕達二人だけでは無理だよ?

人を雇うしかないけど、良いのかい?」


「ええ。

仕事が忙しくなれば、どのみち人手は必要になるもの。

ソナさんにお願いしてみたらどうかしら?」


「彼女か。

・・人柄は全く問題ないし、店番や簡単な作業なら一人でも大丈夫かな。

できればもう一人欲しいけど。

・・分った。

明日にでも話してみるよ。

折角お湯を入れたのだから、今日は君がゆっくり浸かると良い。

この浴場の本当の意味での1番風呂は、君にこそ相応しい」


「ここはあなたの館じゃないの。

この浴場を造るために、庭もほとんど潰してしまったでしょう?

私の仕事を手伝ったり、ソナさんを教えたり、夜遅くまで勉強したりして、あなたこそ疲れが溜まっているはずよ。

あなたが最初に入って」


「・・じゃあ、一緒に入るかい?

館の風呂だと、二人では無理だからね」


「・・そうね。

小さな子供の頃以来ね。

背中を流してあげる」


その日は、広々とした浴場を貸切状態にして、二人でこれまでの疲れをじっくりと癒した。


因みに、妻の魔力は朝には全回復していたそうだ。



 「是非お願いします!」


翌日、ソナにここで働いてみないかと尋ねたところ、二つ返事で了承された。


「助かるよ。

では、授業のある日は14時から17時まで、ない日は12時から17時まで頼む。

浴場の営業時間は14時から19時までで、途中16時半から30分、一旦閉めて、お湯の入れ替え作業が入る。

授業がある日は16時半まで店番と石鹸などの商品の売り子、その後30分は脱衣所の簡単な片付け作業、ない日は男女2つの脱衣所と浴室の掃除をしてから、13時から14時までの昼休みを挟んで、17時まで働いて貰う。

因みに、掃除の時は、浄化の魔法は禁止だ。

必ず手作業でやること。

時給は銅貨25枚、休みは浴場の休日と同じ週1回。

勿論、都合の悪い日があれば、事前に言ってくれればその日も休みにするよ。

何か質問はあるかい?」


「時給銅貨25枚!?

本当にそんなに頂けるのですか?」


この国では、高等学校の最短卒業年齢である19歳を以って、成人と見做す。


それ以前には、結婚をする事でも一応の大人扱いをされるが、あくまで一応である。


公法上は大人と同等の権利を得るが、私法上においては、特に個人間の労働契約などでは、専ら子供より少し多い程度の給料で使役された。


知識や技術の要らない単純な仕事には、労働力が余っているせいで、雇い主の言い値しかつかない事が多いのだ。


酒場の女給が、成人未満なら時給銅貨30枚(900円)でも良い方だと聞けば、その酷さが分るであろうか。


15歳の、何の資格や技術も持たないソナに時給銅貨25枚は、この裕福な国でも破格である。


「勿論。

経営が順調にいけば、もう少し出せるかもしれないが、暫くはそれで我慢して欲しい。

その代わり、休憩時間も時給を払う。

授業がない日の昼食も、いつも通り用意するよ」


「我慢だなんて、とんでもありません。

喜んで働かせていただきます」


「それと、従業員特権として、仕事が終わったら、毎日浴場を無料で使って良いよ」


「え?

でも、浴場の料金はお幾らなんですか?」


「今の所、一人銅貨15枚にしようと思ってる」


「そんなに安いんですか!?

お風呂なんて、貴族か裕福な商人でもなければ、普通は入れませんよ?

物凄く混むんじゃないですか?」


「どうだろう?

元々、利益目的だけでやる訳ではないからね」


「あの、幾ら何でも、私ではそんなにまでしていただく程のお仕事はできないと思いますが」


「別に君を酷使しようとしている訳ではないから、心配しなくて良いよ。

それに、自分の価値なんて、本人では分らないものさ。

人の何処に、どれだけの価値を付けるかは、相手次第。

少なくとも私は、今の君には最低でもそれだけの価値があると思っているよ」


「・・アスタート先生、私、精一杯頑張りますね。

先生のご期待に少しでも沿えるように」


「有難う。

だが、君は勉強もしなければならない。

無理は決してしないように」


「はい」


後にリサが開く孤児院で、彼女の片腕として、子供達の世話をしながら様々な事を教える事になるソナとの絆は、この時から、より強固なものとなっていったのである。



 (浴場の営業初日を終えて)


「・・ソナ、済まないが、君のお母さんも、ここで働けないか、聞いてみて、くれないか?」


「・・分り、ました。

多分、大丈夫だと、思います。

いえ、必ず、連れて来ます」


予想の何倍もの来客があり、店を予定より2時間早く閉めたにも拘らず、疲労困ばいで、陸に口も利けない二人であった。



 更に3か月が過ぎた。


リサの療養所は、この頃にはかなり知れ渡っていたが、客層を平民に限定していたため、客を奪われた他の治癒師達も、大口の得意客である貴族からの依頼は受けられたので、それ程不満を募らせる事はなかった。


元々、彼らの提示する金額では、陸に払えない貧しい人々を対象にしていたせいもある。


ただ、中には例外もあった。


極稀に、ロッシュが見覚えのある同じ下級貴族の者が、平民と同じような格好をして、療養所を訪れる事があった。


彼らは、浴場建設と同時期に改装した館の療養所用の入り口で、自分が貴族だと分っているロッシュに対して、ばつが悪そうに何かを言おうとしたが、ロッシュはそれを言わせなかった。


他の患者に見えないように、直ぐに彼らを診察室まで通し、こう述べただけであった。


「これからは、いつもの格好で訪ねて来て下さい。

ただし、こちらではなく、館の方の玄関から。

同じ貴族同士の友人としてね。

その時にもし、リサの治癒が必要な状況にあるのなら、玄関の扉の裏に下げておく札を裏返しにして下さい。

それだけで、あとは何も話す必要はありません。

こちらから、お屋敷の方にお伺いする必要があるかどうかだけ、お尋ねします。

・・それで、今日はその必要がありますか?」


「・・済まん。

宜しくお願いする」


その日訪ねて来た男は、そう言って、泣きそうな顔をしながら頭を下げた。


懐事情がどうであれ、貴族には、ある程度の見栄が必要である事は、自分もよく分っている。


でも、食べ物などは節約できても、病気の治療にはそれができない。


治癒師にお金がないと言えないからだ。


仮令言えたとしても、普通の治癒師には相手にされないし、貴族達の間に噂が広まり、社交界で爪弾きに遭う。


ロッシュのように、疾うに社交界から離れ、平民のような暮らしをしているのでなければ、貴族が『お金がない』と言う事は、相当な覚悟が要る。


最後まで見栄を張り通し、家族を見殺しにする者より、自分が恥をかいてでも、大事な家族の命を救おうとする者を、ロッシュが笑いものにするはずがなかった。


急いで妻と駆けつけた屋敷の中では、男の娘が高熱を発し、かなり呼吸が荒かった。


意識が朦朧としている。


「リサ!」


直ぐ様彼女がヒールを掛ける。


一刻を争う状況で、少し加減を間違えた彼女から、通常より多めの魔力がほとばしる。


娘の身体が蒼い光を帯び、その直ぐ後に、まるで何事もなかったかのように目を覚ました。


「・・あら、お父様、どうされたのですか?

そのようなお顔をなされて。

なんだか長い夢を見ていましたの。

沢山寝たので、凄く身体が軽いですわ」


そう言って、ベットで伸びをしながら、ロッシュ達に気が付く。


「・・済みません。

お客様がいらっしゃるのに、わたくしったら・・」


重い病から突然回復し、記憶が混乱して、寝巻きのまま無防備な姿を晒した事を恥じ入る娘を、男は力一杯抱き締めた。


「理由を聴かないのかい?」


男の屋敷を後にして、自分達の館まで帰る途中、平民限定で始めた療養所の客に、下級とはいえ貴族を取った事に対して、リサにそう尋ねるロッシュ。


「聴かなくても分るわ」


「そうか」


同じ事を思い出している二人に、それ以上の言葉は必要なかった。



 後日、改めて礼を言いに来た男に、ロッシュは仕事の相談をする。


国の大図書館で、こちらが指定する本の写本を作成して貰えないかと。


大図書館は、貴族なら身分証の提示だけで入れるが、平民にはその他に、お金を払って会員証を作成する必要がある。


その金額は金貨2枚。


本自体が未だ貴重なものだからこその金額で、会員を辞めてもお金は返ってこないので、平民で大図書館の会員になろうとする者は、ほんの一握りに過ぎない。


国の検閲を通った全ての本が納められており、過度に汚したり、破損した場合は賠償金を取られるが、写本は自由だ。


持ち出しは厳禁なので、館内で読む以外にない。


ただ、ロッシュが男に依頼した本は、彼が既に読んだ事のあるものばかりだ。


彼は、ただその本が手元に欲しいというだけで、男に依頼したのではない。


その仕事を通して、男にそれなりのお金を稼がせてあげる意図があった。


先日の、彼の娘の治癒、巷の治癒師に掛かれば、最低でも金貨1枚は取られただろう。


でも、貴族からすれば、たかが金貨1枚だ。


余程の事がなければ払えるはずだ。


それを、恥を忍んで自分の所に頼みに来た。


つまり、相当お金に困っていたのだろう。


自分にも経験がある。


高価な治癒代を払えず、何とか払える薬で治療しようとしても、効き目がなければその費用も馬鹿にならない。


どんどん家計を圧迫していく。


遂には、治癒師に診せた方が安かったという事はよくある話だ。


最初にそれだけのお金を用意できなかったばかりに、益々不幸になっていく。


この男も、きっとそうだったに違いない。


娘が元気になった時の様子を見れば、男が如何に家族を愛しているかがよく分る。


自分と似たような境遇にあった男に、ほんの少しだが、手を差し延べたかった。


「それで仕事の料金ですが、本1冊当たり金貨1枚。

あまりに分厚い本の場合は、その分、割り増しでお支払いします。

期日は1冊で1か月以内。

写しが正確であれば、早い分には構いません。

できれば、娘さんにお願いしたいですね」


話を聞いていた男の目が見開かれる。


男にも、ロッシュの意図するものが理解できたのだ。


下級貴族といえど、その当主が、人に使われて写本のアルバイトをするというのは、些か体裁が悪く映る。


だが、娘など、子供のアルバイトなら話は別だ。


店の売り子などの肉体労働より、貴族としての見栄えも良い。


しかも、よく見ると、彼が依頼してきた本の書名は、どれも任官試験に欠かせないものばかりだ。


自分の娘の年は16。


資金繰りが苦しく、高等学校には通わせていないが、まだ十分通える歳だ。


これらの本を正確に写し取る事で、そこで必要な知識は十分得られるだろう。


割高な仕事を与えてくれるだけではなく、そんな事まで考えて?


先日も、彼は平民を装って来た私を、少しも蔑んだり笑ったりしなかった。


男は、ロッシュの顔を真正面からしっかりと見据え、偽りのない言葉を吐いた。


「私は、私だけは、これから何が起きようと、ずっと君の味方だ。

この恩は、決して忘れない。

・・有難う」


また一人、彼に心強い味方が増えた瞬間であった。



 浴場の経営は、当初の予想を大幅に上回り、毎月金貨20枚程度を稼ぎ出した。


入浴料を銅貨15枚という破格の安さに設定したのが功を奏し、石鹸やタオルといった備品の販売も好調で、ロッシュはその利益を、人々に仕事を振る事で還元していく。


浴場の営業時間を1時間増やし、20時までにして、その分、人手を増やした。


ソナとその母親の他に、ソナの友人の女性を二人雇い、一人当たりの作業量を減らすと共に、掃除を徹底させ、1日に二度もお湯を入れ替える事で、客が常に気持ち良く利用できるようにした。


営業して間も無くの頃、途中でお湯を入れ替える作業を終えたリサが、驚いてロッシュに報告してきたのだ。


「魔力の回復が早くなってるの。

最初にお湯を溜める時に使った魔力が、もう全回復していたのよ」


最早、リサの能力には笑うしかなかった。


安定して高収益が出せるようになったため、ソナに約束した通り、時給を銅貨30枚に引き上げた。


休日を除いた上で単純計算しても、まだ15歳故、17時までしか仕事をさせないソナやその友人達でさえ、一人当たり月に銀貨30枚(9万円)程度の金額になる。


フルタイムで働けるソナの母親はそれ以上だ。


彼女達の生活は劇的に向上し、ソナの一家は、ロッシュの館にほど近い、普通の平民が暮らす地域に移り住んだ。


ロッシュも、生活に困って売りたいと申し出てきた下級貴族から、自分の館の隣にある、古い貴族屋敷を金貨30枚で購入した。


この時は、夜遅くまで営業している浴場で、騒音などの迷惑をかけているとの思いから購入したが、後に思わぬ所でこの家が役立つ事になる。


また、石鹸を、その作り方と共に、貿易商時代に懇意にしていた職人達に伝え、特許料を取らない代わりに安価で作成させる契約を交わし、その普及に努めた。


それは、とある星の麗しい女性達が、その美肌に磨きをかけるために使うような高品質の物ではないが、十分に脂と汚れを落とせ、風呂に縁のない庶民の病気とされていた皮膚病の予防に、大きく貢献する事になる。


更に、ほとんどの家庭に石鹸が行き渡るようになると、人々に石鹸で手を洗う習慣が生まれ、食中毒や、乳幼児などの細菌に対する抵抗力の弱い存在の死亡率が減り、結果的に国力を強くする事にも繋がった。


もう1つ、彼が始めた画期的な試みは、自警団の組織化である。


地域の金回りが良くなれば、悲しい事に、それを狙って盗賊などの歓迎されない存在が増える。


夜遅くまで営業している浴場の客や関係者の被害を出さないように、先のセレーニア王国との戦争後、軍を退いた者や、腕に自信のある住人などに声をかけ、参加は自由とした上で、一人当たり1日銀貨1枚を払って、毎日夜の18時から21時までの3時間、四、五人で1つの班を作り、自身の住む街の見回りを頼んだ。


その見回りにおいて、もし盗賊や不審者に遭遇し、実際に戦闘になった場合、賊を捕らえて、その賊に懸賞金などが付いていた際は、それはその時の参加者で分けさせ、戦闘で怪我をした場合は、療養所で無料で治癒を施した。


この取り組みは殊の外好評で、毎日希望者が殺到し、くじ引きになる程の人気ぶりであった。


浴場の店番でもあるソナ達が17時で仕事を終えると、ソナの母親しか人員が残らなくなるため、それ以降は、ロッシュが男性用の番台に座る。


そのため、リサの療養所は、原則16時までしか往診の依頼を受けない。


営業は17時までだが、見知らぬ場所に妻一人で行かせる事は、仮令妻が望んだとしても、彼が絶対に許さない。


17時から閉店までの3時間を、彼は番台に座りながら本を読むか、客と世間話をして、情報収集する時間に充てる。


その日はちょうど、最近よく顔を見せるようになった、商人組合の職員だという男と話をしていた。


男の名はジルといい、何でも、一人娘がキーネル皇太子と結婚したそうだ。


キーネル・マクシミリアン・エルクレール。


言わずと知れた、この国の元皇位継承権第1位保持者である。


以前はその地位を鼻にかけ、やりたい放題だったと聞くが、先のセレーニア戦争で、帝国の切り札である魔導船を3隻とも失い、継承権1位の座から追われた人物である。


未だに皇太子を名乗れるのは、本来なら直ぐに決まるはずの次の継承権第1位の座が、皇帝陛下のお考えで、空白になっているからだ。


そんな人物の下に、大事な一人娘を嫁がせて大丈夫なのかと心配したが、彼曰く、その後は生まれ変わったように好人物になり、日々、国民のために奔走しているという。


あまり信用できなかったが、男の表情を見る限り、娘の結婚を心から喜んでいるようだ。


皇太子の婚姻なら普通は大ニュースだが、落ちぶれて、現状では玉座に最も遠いと言われている人物故、誰も騒ぎはしなかった。


成る程、相手の女性が平民の出身という事情もあったのか。


後宮には、多くの愛人が居たはずだが、どうやら皆、彼を見限ったらしい。


自業自得とはいえ、少し彼を哀れに思うロッシュであった。


「それで、実は貴方にお願いがありまして・・」


自身の思考に沈んでいたロッシュに、ジルから遠慮がちな声がかかる。


「何です?」


「その、キーネル殿下が実は今、商隊の交易ルートを再編成する仕事を頼まれておりまして・・。

ですが、何分殿下には全く縁のなかった範疇の仕事ですから、かなり苦戦を強いられております。

私は職業上、貴方の家が以前、貿易商のお仕事をされていた事を知っておりましたので、できればお知恵をお借りしたく・・。

お家が巻き込まれた騒動も、勿論存じております。

本来なら、話題にもしたくない事であるのは、重々承知しています。

ですが、恥を忍んで、今回だけお頼みします。

どうか、殿下にお知恵をお貸し下さいませんでしょうか?

あのお方は今、これまでの事を悔い、反省しながら、心無い者の陰口に耐え、必死に働いているのです。

一度だけでも、殿下にお会いして、お話を聞いていただけませんでしょうか?」


ジルが深々と頭を下げる。


正直、ロッシュは少し迷った。


領地も持たぬ下級貴族として、今まで散々、上級貴族から蔑まれてきた。


成績が急上昇した高等学校時代は特に酷かった。


キーネルから直接何かをされた事はないが、彼の分類では、キーネルはその上級貴族の親玉である。


だが、彼はそこで思考を止めなかった。


自分を振り返る。


今の自分は、人並み以上に裕福だ。


この街でも、仲が良かった者とはそれ以上に、一度離れていった者は、何とかして自分との関係を修復しようと励むほどの立場になりつつある。


でもそれは、自分だけの力ではない。


リサのお陰だし、自分達を救ってくれた神のお陰でもある。


それに、存在感を増したとはいえ、それはあくまで同じ土俵の中にいる者同士での話で、上級貴族からすれば、相変わらず、取るに足らない存在でしかない。


自分達の力では、真に貧困に喘ぐ人々を救うための、国を動かすような行動が打てない。


・・キーネルなら、それができる。


落ちぶれたとはいえ、仮にも皇太子殿下である。


もし仮に、彼が本当にジルが言うように改心したのなら、自分達が力を貸す事で、この国は今の何倍も良くなるかもしれない。


もう1つ、彼が改心したという事を裏付ける心当たりがある。


セレーニアとの戦争では、我が帝国は完全に悪である。


皇太子の私利私欲で、一方的に攻め込んだのだから当然だ。


あの戦いでは、神が奇跡を起こし、負け戦にも拘らず、ほとんどの兵士が生還したが、勿論、戻らなかった者も少なくはない。


その数百人の中に、キーネルが入らなかったのは何故だ?


もし自分達と同様に、神が彼にもやり直しの機会を与えていたとすれば、辻褄が合う。


ここまで考えれば、彼を手伝わないという選択肢は、最早存在しない。


本当に神に助けられていたのなら、断れば取り返しがつかない。


「分りました。

お会いしましょう」


「本当ですか!?」


半ば諦めていたのか、驚いたように言うジル。


「ええ。

殿下のご都合の良いお時間に、館までお越し下さいと、お伝え下さい」


「有難うございます」


心底嬉しそうにそう言うジルを見て、自分の考えは間違っていない事を確信するロッシュであった。

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