第9話



優月視点



フォートレスを倒して王城の正門に辿り着く。そして遂に王城に入る。


王城内はアンデットが居なかったが、《感知》では一つの大きな部屋に強力なアンデットの気配を見つけていた。僕はそれを見つけた瞬間に《把握》も始め、完了するまで王城内の散策をすることにした。



部屋を回っていくとここに住んでいた王族たちはとても豪華な暮らしをしていたのが分かった。煌びやかな衣装に装飾品の数々、絵画も多くあり、どれも高価なものだという存在感を放っていた。散策をしていくるうちに《把握》が完了した。



(散策は終了して、ここのボスとやりますか。多分ここは10階層分あったのだろうな。ボスがアスール以上の強さのようだし。こんなこと一階層降りただけじゃ有り得ないことだからね。

まぁ、いいか。兎に角、ボスを倒して先に進もうか。)



僕は敵のいる部屋までゆったりと歩いていく。

他の部屋よりも豪奢な装飾の施された扉の前まで着き。その扉をゆっくりと開けていく。


中はどうやら謁見の間だったらしい。左右にはスケルトンナイトとメイジが並び、奥には玉座に座った王らしきスケルトンと、その側に他のスケルトンよりも格上そうなスケルトンナイトとメイジが立っていた。



‘ようこそ、侵入者君。我はアルビデス王国国王ダンクラス・フォン・アルデビスである。

よくぞここまで辿り着いた。我もここにいる皆もフォートレスに負けると予想していたのだがああもあっさりと倒すとは驚いたよ。

さて、ここのフロアのボスは私だがまずは我が騎士達の相手をしてもらおうか。’



王がそう言うと、左右にいたスケルトンどもが動き出す。僕はそれに対して《命令》を使う。



『スケルトンどもよ、その場で静止しろ。』



《命令》は体力を消費するため、簡単な命令をする。《命令》は『死ね』といえば相手が自害するということもできるが、それは先程の命令よりも倍以上に体力を消費する。命令の種類や規模、レベル差等で体力の消費が変わるのだ。よって、今回はただ止まるというだけの命令にしたというわけだ。


スケルトンどもは命令を聞きその場で静止する。僕はその隙に『円月・断閃』で全てのスケルトンを一瞬にして倒す。



「もう終わりましたが、お次は?」



僕は王に向かって挑発でもするように言う。



‘ふむ、流石だな。では次はこの二人が相手だ。’



そう言うと、側にいた騎士と魔法使いが動き出す。

即座に《看破》でステータスを見る。



________________________



名前 :

性別 :

種族 :スケルトンナイトリーダー

職業 :騎士

Lv : 21

技量ランク : C


スキル : 骨強化lv.3 剣術lv.4 盾術lv.3 加速lv.5


マスタースキル :


ユニークスキル :


称号 :


________________________



________________________



名前 :

性別 :

種族 : スケルトンメイジリーダー

職業 :魔法使い

Lv : 23

技量ランク : C


スキル : 火属性魔法lv.3 風属性魔法lv.2 詠唱短縮lv.2 魔力回復lv.3


マスタースキル :


ユニークスキル :


称号 :


________________________



正直言って思ったより弱かった。



(余裕過ぎるな。一撃で決めて、王と戦おう。)



ナイトリーダーはこちらに向かって来る。段々と速くなっているのは《加速》を使っているからだろう。その後方ではメイジリーダーが二重詠唱を始めている。第10階層と同じ戦法のようだ。というか、まんまそれである。


僕は納刀して、居合の構えを取り『瞬華』でナイトリーダーを頭から股にかけて両断する。それを見ることもせずメイジリーダーへと駆けていく。僕が到達する前に魔法が完成したのか火と風の魔法が飛んでくる。ボール型のそれらを僕は『散華』で霧散させ、連撃の最後を魔力で飛ばしメイジリーダーの頭を砕く。


僕が倒し終えると、また、声が聞こえてくる。



‘まさか魔法まで斬るとはな。我も流石に驚愕を隠せないぞ。さて我が騎士達も倒されてしまったことだし、我が相手をしよう。’



どうやら本命のご登場のようだ。早速看破でステータスを見る。



________________________



名前 :ダンクラス・フォン・アルデビス

性別 :男

種族 :スケルトンキング

職業 :指揮者コマンダー 剣士

Lv : 37

技量ランク : B


スキル : 骨強化lv.5 剣術lv.5 指揮lv.6


マスタースキル :


ユニークスキル :配下創造


称号 :スケルトンを統べる者 アルデビス王国国王


________________________



ユニークスキル

配下創造 : スケルトンを創造できる。数に制限はないが、上位種の創造には時間がかかる。



どうやら、アスールよりは厄介のようだ。ユニークスキルにより配下を創造してその間にさらに強いやつを生み出すことができる。雑魚に手間取っていては物量攻撃でやられるというわけだ。



(さっさと終わらせて次に行くか。)



僕は刀を構えて敵を迅速に殺すために行動を開始する。



僕が刀を構えると同時にスケルトンが百体以上も創造される。



‘我が僕たちよ、我を守れ。’



その命令に従いスケルトンたちは王の周りに陣形を組んで王を守る。

僕はその時間稼ぎをさせまいと魔術銃を抜き、魔力弾を連射する。しかし、倒しても倒しても創造されるため一向に数が減らない。むしろ増えていっているようだ。



(数が多過ぎる。このままだと手数が足りなくて、押し切られるかな。範囲攻撃で一掃していくか、一点突破で王を倒すかだな。どっちにしてもその時間が作れるか。手を止めた瞬間にスケルトンの群れに呑まれそうだ。

仕方ない、こちらも時間稼ぎといこう。)



僕は思考を止め、刀を納刀して魔術銃をもう一丁抜く。しかし、そちらの手は使わずに片手のみで応戦する。


そのまま数分が経過する。相変わらずスケルトンは減らず、そればかりか段々と上位種が増えていく。特にアーチャーが厄介で矢に対していちいち魔力を消費して、魔障壁を張らなければいけない。


魔障壁 : 魔力で構成された透明な壁。強度は使用者の魔力量等に左右される。


さらに増えるスケルトンに対して、僕の対応は少しずつ間に合わなくなってきている。



(だが、数分は稼ぐことができた。これだけ貯めれば充分だろう)



ここで僕は遂に先程から一度も使用していなかった魔術銃を構える。そして、膨大な魔力が込められたその魔術銃の引き金を引き、魔力弾を王のいる場所目掛けて発射する。


凄まじい威力を発揮した魔力弾はスケルトンを吹き飛ばしながら衰えることなく王のいる場所まで飛んでいく。



‘なにっ!?’



これには王も驚いたようでいつのまにか創造していたフォートレスを何体も盾にして身を守る。魔力弾はフォートレスを全て倒し、王の手前で消え去る。


何故これほどの威力の魔力弾を撃てたのか。それは《増幅》の並行チャージをしてたからである。刀を納刀した時に抜いた魔術銃に魔力を込め、それを《増幅》で何倍にもしていたのだ。そして今そのチャージが完了したため遂に撃ったというわけである。


僕は王までの道が開けた瞬間に銃をホルスターに入れ、刀を抜刀して王に接近する。《増幅》で床を蹴る力を倍にし、一瞬にして、刀の間合いまで詰める。王は急いで生み出していたナイトリーダーを何体も盾にする。


月華天真流 桜華おうか



*********


月華天真流 桜華


刺突による八連撃技。刺突した場所に桜の華が咲くようだという意味。


*********



刺突時にさらに魔力を込め、貫通力を上げて一気にナイトリーダーたちを蹴散らす。ナイトリーダーたちに隠れていた王は剣を構えていたが、そんなもの関係ない。『散華』を放ち、剣を吹き飛ばした後に残りのスケルトンも完全に殺す。



「これで終わりですね。」



‘っ!!まだだ!我が負けることなどあり得んのだっ!!’



僕の一言に対して王は必死の形相で距離を取ろうとする。そして、なんと剣を自分の核に突き刺す。



‘ぐぅっ!ア、アァァァァァァ!!!’



すると剣が粒子に変わり、王に溶け込んでいく。王は段々と変化していき、白かった骨は黒く染まり、威圧感が増す。僕はすぐさま《看破》を使用して変化を確認する。



________________________



名前 :ダンクラス・フォン・アルデビス

性別 :男

種族 :ブラックソードスケルトンキング

職業 :指揮者 剣士

Lv : 42

技量ランク : B+


スキル : 骨強化lv.7 剣術lv.8 空間属性魔法lv.6


マスタースキル :指揮官lv.3


ユニークスキル :配下創造 狂化 魔剣化


称号 :スケルトンを統べる者 アルデビス王国国王 魔剣を取り込んだ者


________________________



マスタースキル

指揮官 : 指揮系統の高位スキル。戦略等が上手くなる。


ユニークスキル

狂化 : 身体能力と魔力を大幅に上昇させる。ただし、理性が無くなってしまう。


魔剣化 : 魔剣を取り込んだ者が所有する能力。その身を魔剣と化すことで魔剣の能力を全て引き出すことができる。ただし、一度使えば元には戻れない。



(随分と強くなったな。さしずめ第2ラウンド開始といったところか。)



‘フゥ、チカラガワイテクル。コレナラバキサマモタオスコトガデキヨウ。’



そういうや否や《配下創造》を使用してくる。



(体力は大幅に消費するけど使うしかないか。)



僕はすぐさま決断し、《命令》を使用する。



『《配下創造》を使用するな』



‘ウグッ!リ、リョウカイシタ。’



(はぁ、これで手数で勝負されることは無くなったな。)



僕は少し呼吸を乱しながら、次にどう王を倒すかを考えていた。



(刀主体で攻めるか、銃を使って消耗戦にして、核が見えた瞬間に一撃で殺すかだな。でも、今の銃の威力だと厳しいかな。ならば、やはり刀主体で攻めるとするか。)



僕は攻め方を変えずにいくことにした。決断と同時に王に詰め寄り『散華』を放つ。しかしその刺突は王の手前で見えない壁に衝突し、止まる。



「空間属性魔法か?魔障壁は発動していなかったし。」



‘その通り。これこそがこの世界でも有数の超希少魔法属性の空間である。流石の汝も突破出来ないか。’



僕の独り言に対して、王は反応し興奮したように話しかけてくる。



(厄介だけど、魔力がなくなれば意味はないな。)



僕は『散華』と『桜華』を連続で放ち続ける。しかも《増幅》を一撃ごとに使い、威力を高める。その連撃を王の手前の壁の一点のみに集中させる。


流石の王も魔法にかかりきりのようで動くことができない。暫くしてその均衡が崩れる。王の魔力が枯渇寸前となり、障壁の維持ができなくなり、障壁が消える。そして遂に僕の攻撃が届く。『桜華』による八連撃が王の四肢を穿つ。それにより、王の左手と右足が砕ける。


しかし、王は痛みを感じていないのか、機敏な動きで僕から距離を取る。



‘キサマァァ!!ワレノテアシヲヨクモヤッテクレタナァ!モウユルサヌ。

スキルハツドウ、《キョウカ》、《マケンカ》!!’



王の叫びと同時に王の黒い体に赤い線何本も広がり、脈打ち始める。更に砕いた手足は戻り、剣の形を取る。

変化が終わると、そこには四肢が剣となり、《狂化》の影響で理性を失った、怒れる王がいた。

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