閑話 剣聖

ロイ視点



私は今日本の協会からの任務で、ある犯罪組織を潰しに来た。任務内容は組織の壊滅。さらにそこに囚われている人達の救出とそこで行われていた研究の資料や価値のある武器等の回収である。



組織の幹部やボスは二つ名持ちであり手強かったが、流石にSランクとAランク4人がいれば倒すことができた。


幹部やボス達を殺した後、私達は囚われている人たちの救出へ向かう。


暫く捜索をしていると、キムから発見したという報告が来た。私たちは急いでそこへ向かうとそこにはナニカがいた。人ではない。むしろ凶魔に似た感じだが、人のような部分も見られる。



「なんだっ!これは!」



私はその余りに奇妙な生き物に対して最悪の想像をしてしまい、そう叫んでしまった。



「落ち着け、ロイ」


そうみんなが言ってくるのを聞き、冷静さを取り戻した私は、改めて周囲を見回す。


この部屋のいたるところに先程のナニカが檻の中に入っており、奇声を上げていた。


(もう、生存している者はいないのか?いや、まだ諦めるのは早い。全てを探し終えるまで諦めるのはやめるんだ!)



「みんなこの部屋にはもう生存者は居ないようだ。他の部屋を見て回ろう。もしかしたら、生存者がいるかもしれない。あと、途中で資料があるかも確認だ。」



そうして、私たちは捜索を再開した。いくつかの部屋を見て、いくつかの資料を発見した。それによりあの奇妙な生き物の正体も判明した。



「何でこんな実験をしてるのよ!しかも被験者は全員子供なんて!」



「そうね、酷過ぎるわ。あの子達は私達が責任持って楽にしてあげましょう。」



そこに書かれていた実験の内容に私達がそんな会話をしていた時だった。



「みなさんこの資料を見てください!」



キムがいきなり大声をだして私達を呼んだ。そして促されるままにその資料を読んだ。そこには1人だけ凄まじい戦闘の才能があったため別の実験をしていたことが記載されていた。そして彼が生きていることも。



「っ!すぐに救出へ向かうぞ!」



その情報を得た私達は急いで彼の救出へ向かった。彼のいる場所は先程のナニカがいた部屋の奥のようだった。私達は部屋へ辿り着いた後、キムに奥の部屋へ通じる扉を見つけてもらい、鍵を開けてもらって、中に入る。


部屋は暗く、光は見えない。さらに部屋に充満する血の匂いに顔を背けたくなった。


私は先頭に立ち部屋へと入る。

そして彼がいるのを確認して声を掛けた。



「私は剣聖という。君をここから助けよう。」



彼は私を見上げて、暫くすると少し頷いた。そして私の言うことに素直に従って部屋の外へ出る。部屋の外へ出るとナニカが相変わらず奇妙な声を発していた。


(そういえば、これは彼と一緒に捕まっていた子供達なんだよな)


私はそう思い彼がどんな表情をしているのかを見た。


彼の顔は何も感情を映していなかった。


私はそれを見て、彼を生きて助けはしたが、心は助けられなかったのだと思った。



「すまない。」



私は気づいたらそう口にしていた。彼は私の突然の謝罪にも何の反応も示さなかった。


それを見た私はせめて早く彼らを楽にしてやろうと、剣を抜いて、斬ろうとする。


しかしその斬撃を彼はあっさりと手で弾いた。


私は驚き一度剣を引く。そして何をしたのか問うたが、はぐらかされてしまった。


さらにナニカを殺そうとした私へ彼は自分でやると言ってきた。それが約束なのだと。私はそこに初めて彼の感情を見たような気がして、それを許した。


反対するミーナを説得しようとしているといつのまにか彼はナニカを殺そうとしていた。


その光景に私達は見入ってしまった。普通ならそんなこと有り得ない。


暫くして、全員を殺し終わった彼は表情一つ変えずに、私達に声を掛けてきた。その後、彼の案内で資料室や武器庫に行った。


資料室で私は彼についての資料を見つけた。名前は書いてなかったが、どんな実験をしたのかはわかった。


余りにも、余りにも酷かった。初期の頃は武術の訓練と痛みに慣れる訓練。少しすると、あらゆる耐性を得るための拷問のスタート。その他にも過酷な実験が行われていた。


資料には備考として、彼は感情を全く表に出さなくなったと記されていた。それも当然だろう。5歳の頃から過酷な実験をされていたのだから。


その後彼と合流し、武器庫へ向かう。武器庫には沢山の素晴らしい武器が置いてあった。私達はそれを異次元収納マジックバックの中に入れるていく。


一通りやる事が終わり、彼を連れて外へ出る。


だが、ここで私は彼のことを知るために自己紹介をすることにした。


彼は 十六夜 優月 というらしい。


さらに驚いたことに、今世界各国が注目している"死神"と"絶影"であるという。


このことに私は何故か納得をしてしまった。それは他の奴らも同じなようで、驚きこそすれ疑うことはなかった。


全員が自己紹介を終え、ついに転移で帰ることにした。


ミーナが転移スキルを発動させるなか、私は1人彼が今後幸福な人生を送れるように願った。

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