【始まり始まり】07
日替わりランチ、主菜に金目鯛の煮付け、副菜に大根のべっこう煮・・・・・・
これは”完全なる和食だ”!
「うお!美味い!」
なんだこれ?!今までに食べた事がない程に美味い!箸で割けばホロリとくずれ、口に含めば旨味の爆弾が爆発して美味しさに身震いするほどだ。
「はは!美味いだろ、外見で判断しちゃいけないって事が分かってよかったな」
今度からは外を見るのではなく内を見る事にしよう。
「さっきの話の続きだが――もしも霧縫 夜靄が――事件(仮)の容疑者だとしたら――昨日の事件(仮)を隠蔽することが可能かどうかだが」
定食を食べながら父さんはあっさりと僕のもう一つの疑問である事を答えた。
「可能だ。財力は言わば
「いや許されるって――」
「世間体から言えば許されないさ、極刑ものだ。だけどそれはただの世間体だ。別に見つからなきゃそれは効力を発さない。いじめは見つからなきゃいじめじゃないってのと同じ理屈だよ。故に霧縫 夜靄は人殺しになれる」
「そっか」
「驚かないんだな」
驚きかない、その答えが父さんとの会話で薄々感づいていたから。
「事件(仮)の隠蔽の仕方はみーちゃんの言った仮説通りだろうな、それに公園に居たお爺さんは借金があったらしい、ならその借金したのがFog関連なら――って感じだ」
「僕が見た時、少女が馬乗りになって男性を包丁でめった刺しされていたんだ。飛び散った血はどうやって――」
「飛び血ねえ――もしかしたら警察と関係を持っているのかもしれないな――犯罪件数零の実態はもしかしたら霧縫が何かしらの力で捻じ曲げているのかもしれない――そこら辺はみーちゃんに頼んで探りを入れてもらうしかないな」
「なんか――ごめん」
ここまで否定もなしにずっと僕の話に深く考えてくれる父さんに申し訳なく思ってしまう。
「謝るな、俺もみーちゃんもお前が大事だからしてる事だ。もし犯人がお前を見ていたら次の標的はお前何だからな、できるだけ敵について調べとく必要があるだろ。それにお前が自分を見つめ直す機会になるかもしれないからな」
「ありがとう」
それからは沈黙が場を支配して黙々と料理を食べ続けた。モグモグと。
十九時五十分
食事を終えてすぐにレストランを後にして事務所の前に僕は帰るために自転車にまたがっていた。
「陽が落ちちまったな、気を付けて帰れよ」
「そっちこそ、頑張りすぎて倒れんなよ」
別れ際の挨拶を言った後にペダルを漕いで自転車を奔らせ、父さんは事務所入っていった。
生まれて初めて僕は心から思った。僕の両親があの人達で良かったと。
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