絶叫
「ちょっと眉唾だったけれど、華麗ちゃんの言うことは本当のようね」シンディは響樹が到着したのを確認してから口を開いた。
「え?」
「だって、造幣局は日本の経済の根幹を担う場所よ。こんな場所に、怪しい警備員が配置されているなんて、グラン・オーバーズはかなり厄介な組織のようね」
「なるほどな、行くぞ!」静香の合図で中に突入する。 大きな扉があり鍵がかけられていたが、静香の日本刀が正確に隙間を駆け抜け、開錠した。
扉が、ゆっくりと開く三人は、頷き合ってから建物の中に飛び込んだ。
表の、ガードマンに全幅の信頼を置いていた為か、建物の中は全くと言っていいほど無防備であった。
響樹は目に付いた、扉を片っ端から開放していく。
「くそ、勇希先輩は何処なんだ?!」
「響樹、焦っては駄目!」シンディが響樹を
「何者だ!」
「不法侵入しておいて、何者だとは・・・・・・図々しい言い草ね」そこには、ムチを手にした女の姿があった。女は長い髪を紫色の布で結び、巫女のような姿をしていた。
「あ、貴方は・・・・・・まさか!?」静香の額から大量の汗が流れている。
「久しぶりね、静香さん。・・・・・・・それから
「静香! 誰なのあの女は?!」状況を理解出来ずに、シンディが尋ねた。
「あれは、紫宝 詩織・・・・・・・私の、幼馴染だ」静香は、呆然とした表情を見せながら詩織の名前を告げた。
「幼馴染って、・・・・・・まさか、あの女も・・・・・・響樹!」シンディは響樹の顔を
「い、いや俺は知らないって・・・・・・・!」
記憶を無くす前の自分は、一体どれだけの女性に手を出していたのだと、響樹は情けなくなった。
「違う、そんなはずは無い。・・・・・・・たしかに、詩織は響助と口づけしたが、あの力は現れなかったのだ。・・・・・・・詩織が昔の姿のまま、ここに居る訳が無いのだ」響助とは、響樹の昔の名前のようであった。
「そう静香、貴方は響助さんと同じ、運命を生き続けている。だけど・・・・・・私は駄目だった」
「う、こ、これは・・・・・?」静香がその場に
「それは、私達が開発した能力を封じるリング。それを装着している間は、貴方達の力は封印されるのよ」
「や、止めろ! 何が目的なんだ。 俺の心臓が欲しいのならやる! 彼女達と勇希先輩を解放しろ!」響樹が叫ぶ。
「・・・・・・・心臓? 何を言っているの、響助さん。 私が欲しいのは貴方。 貴方の心よ」言いながら、ムチで静香の体を攻撃する。
静香は旨く体を動かせないようで、まともに攻撃を喰らっていた。
「私は、貴方が憎かった! 響助様は私と愛し合った、夫婦になる約束を交わしたのに。町道場の小娘が横取りして!」その顔が狂喜に変わる。
「や、やめろ!!!!!」響樹が静香の体を庇う。響樹の背中をムチが襲う。「痛!!」響樹の顔が苦痛に歪む。
「響・・・・・・」静香は激痛で気を失いそうになっている。
「ま、また貴方は、静香を選ぶの!? このぉ!」詩織は響樹の体を攻撃する。 しかし、響樹は避ける事無く、静香を
「ひ、響樹!」シンディが、ブーメランを投げるが力及ばず、詩織の目の前で地に落ちた。
「貴方は関係ないのよ、・・・・・・・ジッとしておいて」詩織は見下すような笑みでシンディを見た。
「か、関係無いって・・・・・・・冗談じゃないわ!」シンディは苦痛に顔を歪めながら呟いた。
一陣の風が駆け抜けていく。華麗が部屋の中に転がり込んできた。
「やー!」華麗は体制を整えると地に落ちていた、静香の刀を握りしめて詩織に切りかかる。
突然の攻撃に、詩織は対応することが出来ずに刃で衣の前を切り裂かれた。
「き、貴様!」詩織の顔が激昂で歪む。
彼女は、はだけた胸を隠しながら華麗の体に手を当てた。
「え!」その動きに華麗は反応することが出来なかった。
「死ね!」その瞬間、詩織の掌から激しい振動波が発射されて、華麗の体が後方に弾け飛んだ。
「か、華麗!!」響樹は華麗の体を受け止めた。
華麗は既に虫の息であった。
突然、詩織の体から湯気のようなものが発生する。
「んん、時間ね・・・・・・少し、失礼するわ」そう告げると、詩織は暗闇に姿を消した。
「華麗! しっかりしろ! 華麗!」響樹は彼女の名前を叫び続ける。
「うう・・・・・・御免ね。やっぱり、お姉さまを助けたくて・・・・・・」華麗は消え入りそうな声で呟いた。
「そ、それと、華麗、初めて・・・・・・男の人を・・・・・・好きになれた・・・・・気がした……」華麗の手がガクリと落ちた。
「華麗!!!!!!」響樹の絶叫が響く。
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