非モテの引きこもり高校生が異世界から来たと主張する美少女に出会い、人生が変わる話

kaizi

プロローグ 再会 

 キヨトは、目の前にいる少女の横顔に思わず自分の目を疑う。

 ようやく会えた。

 この三年間、何度忘れようとしても決して忘れることができなかった少女に。


 少女との出会いは、キヨトの人生を変えた。

 今こうして、キヨトがまがりなりにも、今社会に居場所があるのは、少女との出逢いがあったおかげだ。


 もし、彼女に出会っていなければ、キヨトは今も一人、あの小さな世界、部屋の中に閉じこもっていただろう。

 

 なんと・・・声をかければいいのだろう・・・


 もしも再会することができたなら、彼女に聞こうと思っていたことはそれこそ数え切れないくらい考えていたはずだ。

 

 だが、今のキヨトの頭の中には、そんな用意していた言葉は綺麗さっぱり消えている。

 頭の中は、先ほどから真っ白だ。


 ただ、少女に会えたことが嬉しくてたまらなかった。

 少女はキヨトの方を見る。

 その姿は、初めて少女に会った時と変わらなかった。


 無表情で、何を考えているか、皆目検討がつかない不可思議な少女。

 キヨトの脳裏に強烈に焼き付いている印象そのままに少女はこの場にいる。

 その少女の幻想的な美しさに、キヨトは心を奪われたのだ。


 そして、少女の存在は、キヨトの考えを決定的に変えた。

 彼女が、殻に籠もっていた・・・いや社会の常識に囚われて、自らを縛り、もがき苦しんでいたキヨトを解放してくれた。


 でも・・・だからこそ・・・・


 キヨトには、彼女にかける声がない。

 彼女が、しようとしていることは明らかに社会の常識からすれば、間違っている。

 でも、今のキヨトにとって、彼女のすることは間違っているとは思えないのだ。


 彼女が今からすることは、彼女にとっては救いになるのだから。

 だけど・・・キヨトにとってそれは・・・

 

 キヨトは、少女の名前を呼ぶ。

 キヨトの選択は今なされた。

 

 少女のためか・・自分のためか・・・

 どちらを優先するか。


 キヨトの投げかけた言葉を聞いた少女は、微笑し、こちらに近づいてくる。

 

 やっぱり・・これでよかったのだ。


 キヨトは、心の底から安堵した。

 もう二度と、彼女を失いたくはない。

 少女の両手が、キヨトの頬を優しく包み込む。


 外にずっといたからなのか、少女の手はびっくりするほど冷たかった。

 だけど、それでも、キヨトの心は、いいようのない心地よさに包まれて、温かった。

 こんな想いを抱くのはキヨトにとっては、本当に久し振りだった。


 一度は諦めた。

 そして、忘れようとした。

 少女の存在を。


 だけど、少女は何の前触れもなく、キヨトの目の前に再び現れた。

 そして、キヨトの心を鮮やかに染めていく。

 三年前と同じように、暗い一色しかなかったキヨトの心を色とりどりに変えていく。


 数秒見つめ合った後、少女の薄い紅色の唇がキヨトの唇に触れる。

 彼女と口づけをしている瞬間は、一秒にも満たないわずかな時間のはずだ。

 だけど、キヨトはこの時のことをきっと生涯忘れることはないだろう。


 この至福の時間とその後に起こったことは、キヨトの脳に決して忘れることができない記憶を刻みつけることになる。

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