第5話 拠点
森の中には道らしい道もなく、正直チロは自分がまっすぐ歩いているのかどうかすら
湧き水ではないので、普通であれば飲料水としては使用できないが、幸いなことにチロには『浄水』がある。
そして、『制土』もある。
さっそく地面の土を『制土』で
「うへっ」
湯呑に顔を近づけて覗いてみると、池の水は、縁日で売られているミドリガメのようなにおいがした。
色もなんだかやや緑がかっている。
顔をしかめながらも、チロは『浄水』をかけてみた。
すると、ミドリガメのようなにおいは、すーっと薄くなっていき、色もだんだんと透明になっていった。
そして、最終的にはなんのにおいもしない、透明な液体に変化した。
「…………」
正直、元のにおいを思い出すと、飲みたいものではない。
においがあったということは、すなわち何らかの菌が繁殖していたということだからだ。
果たして『浄水』に殺菌作用はあるのか、そしてもしなかった場合、『毒耐性』は菌による腹痛や感染症なども防いでくれるのか…………
それを知る
だが、数時間歩いたせいで喉は乾いているし、いずれは飲まなければ死んでしまう。
チロは意を決し、湯呑に入った池の水を一気に飲み干した。
「…………うまい」
水は、普通にうまかった。
そのまま数分間様子を見てみるが、特に腹がゴロゴロするような気配もない。
どうやら『浄水』は菌にもしっかりと作用しているようだ。
チロはもう一度湯呑になみなみと水を汲むと、浄水をかけてそれを飲み干した。
「ふぅ…………」
そして水分を補給したことでひと心地着くと、今度は腹が減ってきた。
生まれ変わってから何も口にしていないのだから当たり前だ。
キョロキョロとあたりを見回すが、周囲に木の実などはなっていない。
あるのは腰ミノにも使っている、やや背の高い草ばかり。
「…………」
チロは、草をむしった。
そしておもむろに口にいれ、
「……うん、うん」
それは、なんの変哲もない草だった。
舌にはザラザラとした繊維質の食感とともに、えぐみ、苦みが広がり、青臭さが鼻に抜けていく。
有り体にいえば、まずい。
ベッ、と地面に吐き出して、チロは浄水した池の水で口をゆすいだ。
「ないな、これはない」
軽率な行動だった。
毒に対する耐性があるからといって、なんでも食べられるという訳ではないのだ。
チロは自らの
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