第4話 手に入れた力

 知的生物として最低限のよそおいを整えたチロは、さっそく生活魔術(初級)について調べてみた。

 

 その結果、表示されたステータスの『生活魔術(初級)』を指でタップすると、生活魔術(初級)でどんなことができるのかが表示される、ということが分かった。


 それが、これだ。


  

----------生活魔術(初級)----------


 着火=ライターくらいの火が出せる。

 浄水=水をキレイにできる。

 送風=爽やかなそよ風。

 微光=ほんのり明るい。

 遮光=目元に使えばアイマスク。

 静電=パチパチ。

 制土=茶碗くらいは作れる。


----------------------------------

 


 …………以上だ。


 やれることは多いが、正直どれも大したことはない。


 少なくとも、自分がラノベの主人公のような立ち位置ではないのだと、チロは改めて理解した。


 しかし、『着火』で火種を作り出せることと、『浄水』で水をキレイにできること、『制土』で陶器的なものを作れることは間違いなく便利だった。


 水を作り出せるわけではないので、生きていくためには水場を探さなければならないことに変わりはないが、生活をする上で最低限の準備は整っていると言っていい。


『微光』も、照明器具の存在しないこの場所では役に立つだろう。


 だが、『送風』『静電』『遮光』の三つに関しては、今のところ使い道が思いつかなかった。

 

「……まあ、そのうちなにか役に立つこともあるかも知れないな」


 チロは希望的観測で、自分の気持ちを盛り上げた。

 どんな能力でも、あって困るということはないはずだ。


「さて────」


 と呟き、チロは周囲に目を向けた。


 それほど鬱蒼うっそうと茂っているわけではないが、辺り一面、見えるのは木と草ばかり。


 生きていくためには、なにはともあれ水場を探さなければならない。


 だが、どちらの方向に向かえばそれがあるかなど分かるはずもないので、やるべきことはただ一つ。


「────探検、するか」

 

 チロは適当に方向を決めると、そちらに向かって歩きだした。


 その先に、なにが待ち受けているのかは分からない。

 

 それでもチロは、異世界生活の第一歩を踏み出したのだった。

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