97日目

「コンコン」

 アタシは返事を待つ。


「ガチャ」

 真っ暗な部屋に廊下の灯りが入り込む。


 殺風景な部屋。


 ドアの向かいの壁にある勉強机には、綺麗に教科書とノートが整頓されている。


 本棚には週刊漫画雑誌。一番新しいナンバーは2週間前のもの。


 時間が止まった部屋。


 入るとアタシに「主はいつ戻ってきますか? 」と尋ねてきそうだ。


 壁に掛けられた制服はまだクリーニングに出していない冬服。


 そっと近づくと汗と湿気の臭いが少しする。

 母がしていた毎日の部屋の換気も最近はしていないからな。


 もう一度すんっとその臭いを嗅ぐとぽろりと涙が落ちた。


「はは、目に滲みる臭さ……」


 息を止めたその部屋に


 確かに弟が居た。


――異世界転生まで

  あと3日――

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