70日目
「……でさー、ありえないよねー初めてのデートでプールとかー、マジきもいってっかー……明らか狙ってるってかー」
そこで、キスミは話を止めた。嫌な予感がする。
「着替えないのー? 」
やっぱり。
「う、うん。今日、ちょっと湿布貼ってて。恥ずかしいから」
なるべく上手く笑えただろうか?
「えー? うち、そんなん気にしないよー」
あんたがしなくてもアタシがするんだ。なんで、あんたの意思が全体の意思みたいに言ってんだ。
「ねー? 皆も気にしないよねー」
そこで体育着に着替えていた女子生徒の数名が、苦笑いの様な愛想笑いを浮かべた。
……嘘。
ナギサっ!
きょろきょろと目を泳がせるが、どうやらここには居ないらしい。
となると……。
「……恥ずかしいの」
アタシは、涙を浮かべてキスミを見つめた。
「え……えええ? ……ああ、うん……わ、わかった。ごめん」
キスミは驚いた様に髪を掻きながら女子数名と更衣室を後にした。
部屋にはアタシだけ。
急がないと。
アタシが勢いよく制服を脱いだ時だった。
「な~~~~んちゃって~~~~‼ 」
更衣室のドアがキスミの軽薄な声と同時に大きな音を鳴らして開いた。
キスミと目が合う。
アタシはどんな表情をしていたんだろう。
やがて、キスミの目がどんどんと大きく見開いていく。
目的だったアタシの露わになった肌を見て。
「こら」
その後ろからナギサの声が聴こえた。
「あ……ご、ごめんね。悪気はなかったの」
「いいよ」
上手く笑えただろうか。
「ごめんね、キスミも反省してるから。それと……
絶対、他の人らには喋らないように私が見とくから」
ナギサがそういって扉を閉めた。
別に、大したことじゃないのに。
そう心で反芻しながら
アタシは自分の腰を撫でた。
――異世界転生まで
あと30日――
「ねえ、ナギサ」
「なに? 」
「……」
「あの子さ、すっごい小さい時にすっごい大きな手術してるんだよ。
あれは、その痕。
あんたも、オンナなら理解出来るでしょ? 他人には見せたくないの」
「……謝って、許してもらえるかな? 」
「さぁ? でも、謝らないよりかは全然いいと思うよ。あと、ちょっと迂闊すぎ。他人の気持ちもちょっとは考えなよ? 」
「うん……そうする」
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