49日目

「あっついねぇ」


「まぁ来週から衣替えだしね」

 俺は、原稿用紙に目を落としたまま返答する。


「……へへ、アタシね? 6月誕生日なんだ」

 突然、嬉しそうに彼女がそう言ったから、思わず視線を上げてしまった。


 そして言葉の抑揚通り、彼女が満面の笑みを浮かべていて、思わずこちらの心もウキウキとしてしまう。

「お、おめでとう」なんとか振り絞って出せた言葉だった。


「へへ、ありがと。

 ……ところで君の誕生日はいつなの? 」


「え? 」


 俺は、驚いて彼女と目を合わせてしまった。

 一瞬色々な考えが浮かんだが、答えるのに問題は無いだろうという判断を下した。


「2月」


「なんにち? 」


「……14日……」


「バレンタインデーじゃん‼ 」


 目をキラキラと輝かせた彼女を見て、やっぱ言わなきゃよかったと思った。


――異世界転生まで

  あと51日――

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