42日目

 春と梅雨の間の気候は、嫌いじゃない。


 少し早く目が覚めても、朝陽がもう起きていて景色を明るく彩ってくれている。


 の、割に窓を開けた時の風は少し肌寒く、肺に流れる時に心地良い清涼感がある。


 丁度、あの時もこんな風だったな。


 俺の見ている景色が懐かしい赤銅セピア色の記憶と重なっていく。


「ありがとう――ありがとう‼ 」

 その思い出の向こうであいつが礼を言っている。


「ごめんなさい……ごめんなさい‼ 」

 今度は、誤っている。随分とせわしない。


 俺はひっそりと呟いた。


「いいから」


「もう泣くなよ」


「姉ちゃん」


――異世界転生まで

  あと58日――

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