40日目

 一体何が起きたのだろう。

 俺は、全く現状が理解出来ない。

 ただ、現実として受け入れなければなるまい。


 舞台は、俺の部屋。

 時は、明日を休日に置いた夕方時。


 登場人物は3人。

 俺と姉。ここまでは解る。


 そして――姉の正面に彼女。


 ……?

 え? なにこれ?

 なんで、あの娘が俺の部屋に居るの? え?

 夢?


 そもそもの発端は、昨日の放課後。

 俺と彼女が図書室で、小説の意見交換をしようとした時だった。


「待ちなさい‼ 」

 突然、姉がそこにやって来たのだ。


「な、なななな」

 俺は言葉が出ない。

 すると、姉はザっと床を鳴らし、彼女の前に立った。


「え? えと、お、お姉さん? 」

 戸惑うのは彼女も同じだ。

 そんな彼女に、姉は鼻息を捲し立てて顔を近づけた。


「弟は、私の読者なの。私のアイディアを聞いてるの。

 つまり、貴女の作品に、送れるものなんて何も無いの。

 わかったら、諦めなさい? 」


 多分、姉自身自分が何を言っているのか理解らないのではないだろうか。


「……え?

 お姉さんも……小説を? 」


 だが、そんな時に冷静だったのは彼女だった。

 姉の言葉のキーフレーズを見事に捕らえたのだから。


「……‼ ち、ちが……」

 否定しようと距離をとろうとした姉の両手を彼女が掴んだ。

「ひぃっ」


 姉が小さく情けない悲鳴を漏らしたが

 そんな事に気付かない程間髪入れず。


「あ、あの‼

 もしよかったら、お互いの作品を読み合いませんか⁉ 」

 彼女の言葉が空気を切り裂いたのだった。


――異世界転生まで

  あと60日――

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