37日目

「よーし、じゃあ後ろの人からプリント回収してー。

 はい、もう書くなー、鉛筆置けー」

 

 チャイムと同時に、監視の教員のその声で、3日間に渡る中間試験が幕を下ろした。

 3日間、結局俺と彼女は会話を交わさなかった。

 ひょっとしたら、何か機会を貰えるかも。なんて甘い考えを持っていた事が恥ずかしくなる。


「よし、じゃあ今日はまっすぐ家に帰る事。明日からクラブも解禁だから今日は大人しく帰るんだぞー」


 教師がそう言って教室を後にすると、一気に騒がしくなる。


「あー、解放感半端ねー」

「おい、部室いくべ」


「帰り、カラオケよってかなーい? 」

「ヤバくない? 先生たちがマークしてっかもよ? 」


 俺は、そんな喧騒の中気付かれないように溜息を吐くと、帰り支度をする為に後ろのロッカーに荷物を取りに向かおうと席を立った。


 ――その時だった。手元に音もなく紙の切れ端がスッと置かれた。

 それを置いたのは前の席。彼女だった。

 俺がポカンとそれを見ていると、彼女はせかせかと立ち上がって行ってしまう。


 メモを取ると、周りの目を何故か気にして俺は覗き込んだ。


 ――明日……放課後図書室にきてください。


――異世界転生まで

  あと63日――

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