38日目

「来たね……」


 先日とは逆の立場で彼女はそこに佇んでいた。

 俺は、その先日の事を思い出して思わず顔を顰める。


 そんな俺を尻目に、彼女は真直ぐに視線を合わせると、立ち上がりゆっくりと近づいてきた。


「まさか、あんなにダメだしを喰らうとは思わなかったよ」

 その瞳に光は無い。


「でもね? 同時にやっぱりアタシの眼に狂いはなかったと思ったよ」


 そして、間髪入れずに彼女は「ドン」っと大きな音を立てた。

「ひぃっ」情けない声が漏れる。


 ………?

 俺は、恐る恐る瞼を開いた。


 そこにあったのは――


「さぁ、君に言われた欠点はもうないよ‼

 アタシの新作――その名も『おれサガット』‼ 」


 あの日よりも更に大幅増量した原稿用紙の山だった。


――異世界転生まで

  あと62日――

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