33日目

「はぁ……」

「ガチャ」「何溜息なんてついてるのよ」「コンコン」


「姉ちゃん、今日は悪いけどほっといてくれ」

 だが、俺の言葉など届かないのだ。女という生き物は全く話の本質をみようとしねぇ、感情的になったら人前で泣くし、こんなに落ち込んでる俺が「ほっといて」と懇願しても自分の伝達事項が優先される。


「なによ、あのつまんない小説書いた相手でも、泣かせたの? 」

 俺はドキリとカラダを揺らした。


「……まぁ、いいんじゃない? 嘘はべつらかせて情け与えても酷だし。女子なのに男子のアンタに自分の小説読ませるとか、そういう意味だし」

 姉は、許可してないのに「ボスン」と勢いよくベッドに腰掛けた。

 だが、俺が返事せずにその言葉をもぐもぐと咀嚼し続けている事で何か勘づいたらしい。


「……え、あんたのオンナなの? 」


「違う」

 それだけは即答出来た。違うけど……という意味合いだけど、そこまで言ってしまったら姉は直ぐに気付いてしまう。


「あ~……今日は、いいや。私も自分の部屋で書く」

 重苦しい空気に耐えられなくなったらしい。


「じゃあ、また元気出たら、私の傑作で忘れなさい。それがいい」

 それだけ言うと、姉は出ていった。


――異世界転生まで

  あと67日――

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