18日目

「ダメだ。くそ変だ」

 俺は、それだけ言うと姉の方へタブレットを突き返した。


「はぁああ~~~~~????

 あ、あんたの言った通り、キャラを食わさせたじゃないの‼

 何が、不服なのよ‼ 」


 姉は、襟もとがダブダブのシャツなのに、俺の勉強椅子からコタツ机に四つ足になるように手をつく。

 ぐわっ、こいつ下に何も着けてねぇ……。


 俺は顔を横に向けて更に瞼を閉じたまま続けた。


「あのなぁ、折角仲間の親友が怪物に捕食されるって壮絶な展開なのに、主人公とヒロインは何でその横でキスしてんだよ。

 しかも、その後怪物を瞬殺って、どういう事だよ。親友助けれただろ。

 更に、更によ? なんだよ、この親友が絶命する直前に『俺、ヒロイン子ちゃんの事……好きだったんだぜ? 』って告白は。

 それを、受けて主人公とヒロインの『ありがとう、お前の分まで幸せになるよ』ってなんだよ。気持ち悪すぎる台詞で、吃驚するわ。この二人、どういう神経してんだよ。サイコかよ」

 姉はぷるぷると震え出す。

「あ、あんたに子ども同然のキャラが食われる苦しみが解るって言うの? 」


 うん、マズい。俺の伝えたい中枢が伝わっていない。


「違う違う。展開は良いの

 主人公とヒロインの感情と行動をそれに合わせて読者と同じ目線にしなきゃいけないの」


「だから、キスを……」


「なんでだよ‼ 」


――異世界転生まで

  あと82日――

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る