おれても

いわしまいわし

おれても

子どもの夢と大人の夢は全然違う。夢叶えるために人の足引っ張るなんてまっぴらゴメンだ。1人しか座れない椅子ならぶっ壊す。粉々になるまで踏みつぶす。サイテーか? クズに思うか? そのサラサラになった更地に100人の夢追いを乗せてやる。そしたら全員で笑えるぜ? そのためならゴミにでもクズにでもなってやる。

偉い賢いヤツの言うことだから聞くんじゃない。そいつは真っ当に夢叶えたか? 理不尽に涙流したやつはいなかったよな? 胸張って夢叶えたやつだけ俺に説教しろ。

俺はバカだ。経済も科学もわかんねぇ。政治家にすらなれねぇ。東大にすら入れねぇ。それどころか1+1がどうして2になるのかすらわかってねぇ。でも匂うんだ。テレビの奥から。ワイドショーのすみから。

小説家になりたいって夢は諦めた。認めさせたいって願いは叶わなかった。俺は小説を動画にしたかった。スポーツにしたかった。それもダメだった。ビックマウス癖は治らない、いや治らせない。ジジイになっても吼えてやる。いつまでも上だけ向いて歩きたいんだ。

折れるってのは消えるじゃない。夢の数が一個増えた。

誰かの努力を笑うな。誰にでもできるって言うな。1番にならなきゃ意味がないって言葉は何の意味ももってない。お前が言った悪口の数はお前に向けられた陰口の数だ。

笑顔は作るものじゃない。自然になるもんだ。作ってる時点で無理矢理だ。すればするだけ感情が削られる。そのうち自分が楽しくて笑ってるのか楽しくなりたくて笑うのかわかんなくなってくる。そうなったらオシマイだ。お前は人間じゃねぇ。

折れるってのは消えるじゃないんだ。俺は2つに増えたんだ。

負けた数なら誰にも負けねぇ。と信じてたけどそれすら負けてる。中途半端な人生。生きてる価値ねぇって思いながら死にたくねぇ。俺の言葉は誰にも好きになってもらえねぇし、俺は俺のことが大嫌いだし、神は俺になんの才能も与えなかった。

だからなんだって言うんだ。

死にたくねぇから生きてる、それの何が悪いんだ。俺が大嫌いな文学を書いてて誰に恨まれなきゃいけないってんだ。たまたま生きてる。たまたま書ける。だから今それを夢にしてる。文字に才能全部ベットして誰にも文句言われる筋合いはねー。

手のひらに残ってるのはちっぽけな過去の栄光。誰も知らない小さな梅賞が俺の誇り。がんばればいくらでも盛れる。まるでノーベル賞取ったみたいに大喜びできる。割りに合わないくらい雀の涙で3年続けた。でも、夢だからまだ書ける。折れても折れてもまだ書ける。

もうちょっとだけ、もうちょっとだけやらせてくれ。まだ終わりたくないんだ。やめたくないんだ。長くなってごめんな。飽きたよな。ありがとうな、ほんとうにありがとうな読んでくれて。

がんばるってなんだよ。努力するってなんなんだよ。全部結果だろ。結果出さなきゃがんばったって誰も褒めてくれねぇ。信頼なんかない。ちょっとウンが回ってくるだけでアイツの中の何かが努力に変わる。誰かがピストル鳴らさなきゃレースを始めることすらできない。勝手に走り出したらフライング。大ブーイングとペナルティがまっている。「時代に合わない」、「理解できない」ふざけんじゃねぇ!

折れると消えるは全然違う。折れた分だけ俺が増えてやる。

やれるやれる俺はやれるって何度も言い聞かせた。大丈夫って思うと途端に不安がこみ上げた。大丈夫じゃないってずっと思ってた。将来のこと考えると白髪が増えた。

死ぬときに何を思い出すんだろう。今死ぬとして、俺に思い出せることなんて何もない。数えきれない恩をもらった。一個も返せなかった。せめて金くらいは何とかしたかった。だって誰もががんばって手に入れるものなんだろ?

汗水流して俺は何をやってきた? なんの結果を出せた? どんな結果を求めた? 楽しいだけじゃ生きていけないんだよ! 今日死ぬと思って生きてみろ。人生なんてそんくらいの価値しかないんだから。言い聞かせた3年。そこそこに楽しかったよ。

折れるは消えるじゃないって。増えた夢が絶対救ってくれるんだ。

急に叫び出したくなることがある。ウウとかアアとか意味もないこと言えない。ごめんなさいごめんなさいごめんなさい。無意識に声に出す。俺に意思なんてない。謝って済むならそれでいいんだ。

誰かが喉から手が出るほどほしい仕事から逃げ続けた人生。しょうがないだろ。俺は小説で食べていきたかったんだ。俺がほしい仕事はみんなで取り合いへしあい殴り合い。名前のない中間発表に心を蹴り飛ばして無意味じゃなかったと無意味な遠吠え。

それでも価値があったんだ。書いてよかったんだ。やったことに後悔はするな。俺が泣いたかわりに誰かが笑えるんだ。次は俺が笑う。泣いたことは絶対に忘れない。

頭がいいなら小説なんか書かない。だからなんだ。もっと賢い生き方なら掃いて捨てるほどある。それがどうした。恥ずかしくてこんな作品出せない。だからなんだ。俺は1人だ見つけてなんかもらえなかった。だからなんだ。才能があるやつが羨ましかった。それがどうした。結局なんにも得られなかった。だからなんだ。それがどうした。

折れるは消えるなんて甘い言葉じゃない。増えるんだ。一生俺についてくるんだ。

折れても消えない。ただ増える。小さくなってもゼロにはならない。

折れた分だけ夢は増える。全部掴み取れ。全部俺なんだ。おれつづけろ。一欠片も取り残さない。

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