とある夏祭り・弍

それからというもの、変化は特にない

ただただ、夏祭りらしいままである。


特に物色するものはなく

手に取って見るのは露店にある商品。


「…かき氷か。もうそれなりに時間が経ってるのに溶けないとはな…」


常識なんてない、あるのは疑い。

そして、かき氷がある棚にあったのはひとつのビー玉。

黒く輝いているカラス製には違いないだろうが…なにやら横に穴が空いている。


「首飾りに使う物ね」

「首飾り?」

「そうよ、多分これは妖に必要な品。あの少女に見せあげなよ」

「あぁ…。てか、場所知らないんだけど」

「あの子は鳥居前に居るはずよ」


そう言われて、以前弾かれた鳥居に向かうと…。あの狐お面をした少女が居た

だが、鳥居の向こう側に立っている。


「………」

「何か用かしら?」

「…これ」

公平は手のひらに乗せたビー玉を見せた。

「これは…」っといい少女は声を詰まらせた。


下を俯いた狐お面の少女

その手を見ると、微かにだがギュッと手を握りしめていた。


「君さ…何あったかは知らないけど大丈夫か?」

「君じゃないわ、私は千棘。このビー玉は…私の大切な人に送った品の一部…こんな所にあったんだ…」


そのビー玉を手に取り、大事そうに握ってその場所をさって行った。


「……。色々あるんだなこの場所も」


ーーーーーー


それから数日が過ぎただろうか…

再び千棘が訪れた。


「………」

「特に用はないけど、来ちゃった…」

「来るのはいいんだが、早く俺をこっから解放してくれよ」

「私の力じゃ無理、君自身で解かないと。それに…十五回目の祭りはある意味呪いよ」

「呪い?」

「1度あるなら2度ある様に、それを何度も繰り返していくうちに…祀られていた祠の神さまは目覚める。私達妖と違って…別次元な存在よ」

「………」

「ここに居る小狐が1匹いるでしょ?」

「あぁ…ツンツンしてるけど」

「ツンツンしてるけど、悪い子じゃないわ。その子と私は「神隠し」を暴くためにもここに来てる」

「…でも結界があるじゃん。あれどうしたんだ?」

「あれは…私の脇差見て」

「あ…」


白い柄がちらっと見える…刀に違いない。

結界を切るぐらいの、妖の霊力がある刀って事なんだろうか?


狐お面をした少女は白い柄に手を触れて抜き取ると…刀身がない。


思わず公平は「何を切るんだ…?」っと口にしてしまう。


狐お面の少女は「刃が見えないって事は、まだ妖にも、連れていかれてない証拠。よかったね、君はまだ元の世界に戻れるからね」っとさらっと口にした。


実質的には、公平的には複雑な気持ちの心境である。

狐お面の千棘は好きな人と生き別れになった様なもんである、そう考えると公平的にはどうにかしたいっと言う気持ちが芽ばえる。


「…なぁ、千棘ってさ元々人間なのか?」

「…わからない。私は妖として生きてきたし、前世のことはわからない」

「そっか…」

「うん」

「可能なら、人間として連れていきたいかな」

「え?」

「だって、寂しくないのか?小狐1匹と千棘1人だけで…神隠しに抗うなんて」

「……寂しさなんてない。私は…神隠しの謎が解ければそれだけでいいの」

「それじゃただの使命感だろ?」

「そうかもしれないけど、君には分からないよ。生前託された人の気持ちなんて…」


そう言って、千棘はゆっくりと立ち上がり鳥居へと歩く最中で公平は「まって」っと声を飛ばすと、千棘の進む足が止まる。


「君って名前じゃない、俺は公平だ千棘」っと言った、千棘は何も言わずに鳥居の向こうの世界へと消えていった。


それから…千棘が姿を表さなくなった

次千棘と会った時には…悲惨だった。


神隠しに隠された謎があまりにも強すぎたからだーーー。


ーーーーーー


千棘が来なくなってさらに数日が過ぎた

小狐は寝てれば、特にすることが無い

妖って存在は、霊力を使い切るとある一定の時間で休眠をする。

それで、霊力を回復させるらしいが…こうして見ると可愛いのである。


さて、撫でたい気持ちを我慢して公平は、鳥居前まで行く。

少しだけ指を伸ばすと、やはりバチッ!っと音がなり弾かれる。

結界がやっぱり強すぎるのである、てゆうかなんの為に結界があるのか疑問である。


すると…バリバリと音が鳴り響き出す

鳥居の真ん中辺りから、閃光を放ちながら何かが現れ公平に向かって落ちる。

当然公平は下敷きである。


「いたた…」


ムニュッと右手に柔らかいもの、そして眼前に意識を失った少女の姿が目に止まる。


「こ、これは…?」

「ん…?」


少女はうっすら目を開け始める


「お、おはよう…?」

「……?」


公平をじーっと眺めて、今の状況に気づく


「へ?!な、ななななぁぁぁぁぁぁ!!?」

「落ち着けうごくな!」

「へ、変態!!」


少女からの右ストレートパンチを顔に向かって放たれ強打。

しばらく意識を失い、はっと目覚めると…胸の上に座る小狐が凄い睨みをきかせながら「あら?変態さん目覚めたのかしら?」っと言われる始末であった。


理不尽とは、言葉にはできない理不尽がある。


さて、その少女は結界がある鳥居でアタックチャレンジしてるっと小狐が言う。

止めればいいじゃんっと公平が言うにしても

「小狐が喋るなんて変よ?」っと返されたので

なぜに俺の時は喋るんだ?っと問い返すと

「あんたには今日またがある。別に深い意味は無いからね?!」っと言い返された。


まぁしょうがなく、鳥居チャレンジする少女を見る、セーラ服で明らかに夏着でポニーテールをした子である。

それを見ると、妖である千棘に近い

とはいえ千棘は巫女服に狐お面とミディアムヘアースタイルである、もちろん胸も違いがあれば身長も違う。


この子は、千棘よりも少し高い身長

運動神経もそこそこあるようだ。

茂みからひっそり眺める公平。


「ぐっ!?なんで通れないのよ!早く帰んなきゃならないのに!!」


やっぱりそーなるんだろうか?

って最初の自分もそうだったなっと再確認

茂みから抜け出て、公平はこう話しかけた。


「君、諦めなよ」

「……(ギロッ)」

「そー怖い顔するな、あれは理不尽だ」

「私の胸を触っておいてその態度はなによ?」

「理不尽だからって思ってるからだよ。何度やっても通れないよ」

「…やって見なきゃわかんないでしょ?」

「……!」

「君よりも早く、俺はここにいて、変える方法を探してる。そんな時に君が現れた」

「ここにいてどれくらい?」

「残念ながら感覚ならもう二週間、だが、常識なんて通用しないなら。それよりも半分遅い1週間だ」

「二週間前?確か夏祭りで意識不明の高校生男子が居たわね。しかも、屋台には人が居なかったらしいね。そんな意味がわからない怪奇現象に私はこの村にある祭りを調べてきた。そしたらーーーー」


見知らぬ声が私の脳にこう告げた。


時ハ、来タナリ。


我ハ目覚メ、コノ村ヲ守ラナケレバ。


コノ神社二、踏ミ入リ者ヨ。


守護者トシテ、我ヲ解放セヨ。


十五回目ノ祀リ、神隠シハ「暁」二アリーーー。


そんな声が、響いたと思った瞬間にこの囚われた場所に辿り着いた。


意味が全くわからなかったけどね。




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