第74話 ほう、驚きましたか。
テシテシ、テシテシ、ポンポン、うーんいい朝だ。って、そのまま朝まで寝てしまったのか、、、。まあ、何だかんだいって最後の階層は強敵ラッシュだったし、変なのにも出会ったしでいろいろ疲れていたのだろう。そういえば夕食も摂らずにそのまま寝てしまったんだな。
「おはよう、マーブル、ジェミニ、ライム。そのまま寝ちゃってごめんね。」
「ニャア、ニャア。」
「アイスさん、おはようです。気にしないでください。わたし達もそのまま寝ちゃってましたので。」
「あるじー、おはよう。ボクもいま起きたところ-。」
3人にいつもの挨拶をしてから顔を洗い、新たな服に着替える。よかった予備を用意しておいて。疲れでねぐらに戻れなかったから、風呂はおろか洗濯すらできていなかった。さてと、朝食だけど、ここは王宮だから自分たちで食事の用意をする必要はないため、多少手持ち無沙汰である。こういうときはモフモフを堪能するに限る。ということで、マーブル達とモフモフタイムだ。
しばらくすると、メイドさんが入ってきた。
「おはようございます、アイスさん。それにマーブルちゃん達もおはよう。」
「おはようございます。昨日はそのまま眠ってしまい申し訳ありませんでした。」
「いえいえ、お気になさる必要はありません。アイスさん達だけではなく、アンジェリーナ姫もそのまま眠ってしまい夕食を摂らずじまいでしたからね、というわけで、朝食は期待していてくださいね。早速ご案内しますが準備はよろしいですか?」
「では、期待させていただきます。準備ですが、こちらはいつでも大丈夫です。」
メイドさんの案内で国王の私室に案内された。部屋に入ると国王ならびに王妃両陛下とレイモンド宰相様、ランバラル近衛兵長とオルステッド軍団長に戦姫の3人がすでに座っていた。あ、オニキスも、先日献上したスライムもいた。朝の挨拶を交わすと待ちきれないと言わんばかりに国王陛下が着席を促してきた。私は指定されていた席に、マーブル達はオニキス達がいる場所にそれぞれ向かった。
「アイスよ、早く座るがいい。折角の飯が冷めてしまうのでな。」
朝食にしては豪華なラインナップだった。食べたことのない料理ばかりだったので、具体的に何だったとは言えないが、流石は王家。素材も調理の腕も一流だった。
「昨日の夕食だが、お主達が眠ってしまい起きなかったのでな。それにアンジェリカ達も起きなかったのじゃ。だからその分朝食を豪華にしておいたぞ。」
「お気遣い感謝します。そして折角の夕食が一部無駄になってしまったことをお詫び申し上げます。」
「ああ、そちらは気にせずともよい。残りはスタッフが美味しくいただきました、というやつだからの。」
朝食は和やかな会話とともに進んでいた。ある程度会話が弾んだところで、ダンジョンの成果を聞いてきた。
「ところで、アンジェリカよ。迷宮の成果はどうだったか?」
「お父様、それなのですが、、、。」
「何じゃ? ほとんど成果が得られなかったのか?」
「いえ、逆でございまして、成果が多すぎてこの場ですぐに話せない量でしたの。」
「な、何と。では、すぐに話せる範囲でもかまわないから話してみよ。」
「はい、まず最初に膨大な数の魔石です。」
「膨大な数だと? まあ、ゴブリン達などから獲れる魔石なんかは小さすぎて数えるのが大変なほど膨大になるからな。」
「そのことなのですが、お父様は魔石を一つにまとめたりすることができるのはご存じですか?」
「何っ? 魔石を一つにまとめるだと? それは初耳だが、そのようなことが可能なのか?」
「ええ、同じ種類なら一つにまとめることが可能ですの。ただ、同じゴブリンでも通常のゴブリンとホブゴブリンはまとめられません。何故か種類が違うみたいですの。スライムにしても通常種でしたら色違いでもまとめられますが、同じ色でも種類が異なりますとまとめられませんの。」
「ほう、それは良いことを聞いた。今後このダンジョンの探索時に役立つだろう。で、アンジェリカよ。もちろんある程度はまとめてあるんだろうな?」
「ええ、もちろんですわ。それでも膨大な量になりましたの。アイスさん達がいらっしゃらなければ、こんなに大量に持って帰ることはできませんでしたわ。」
「それは楽しみじゃな。あと他にはあるのか?」
「ええ、ただ、これは我が国の機密事項にしなければならないほどのことですが、よろしいですの?」
「何だと?」
アンジェリカさんのその一言で周りに緊張が走る。
「アンジェリカさん、それってパスタさんのことです?」
「いえ、かの御仁はわたくし達がダンジョンから戻ってすぐに報告をいたしましたわ。何か、『我は土壌の開発さえできればそれでよい。』などとおっしゃっていらしたので、早速大臣の方達と仕事の話をしに行かれましたわ。そのことは宰相もご存じですわよね?」
「はい、彼の者は非常に優秀で、むしろ渡りに船といった感じです。しかし、外交問題に発展しそうでしたので、魔族国には事情を伝えるべく使者をすでに送っております。」
「というわけで、アイスさん。パスタさんに関しては報告済みなので大丈夫ですわ。」
「なるほど、そうでないとしたら、一体?」
「ミスリルですわ。」
「ああ、そっちでしたか。確かに機密が必要でしょうね。」
戦姫と私達いがいの出席者が一斉に驚きの声を上げた。
「なっ、ミ、ミスリルだと?」
「ええ、ミスリルですわ。」
「そ、それでどのくらいの量が手に入ったのだ?」
「えーと、10kgの塊が200ほど。」
「は? 今、10kgの塊が200と言ったか? 10gではなくて?」
「ええ、間違いなく10kgの塊が200と申しましたわ。」
国王とアンジェリカさんのやりとりが続いていたので、他の大臣達は発言を控えていたのだが、ついにこらえきれなくなったらしく、宰相様が割り込んできた。
「姫様、それは誠ですか? ミスリルというものは10g程度でもなかなか手に入らない貴重な金属ですぞ。それが10kgの塊とは、、、、、。」
「それよりも姫様、それをどうやって手に入れられたのですか?」
今度はランバラルさんが尋ねてきた。
「地下11階で、ミスリルゴーレムのピュア種が出てきましたので、それを倒したら宝箱がでてきたのですわ。まあ、倒したのはアイスさんで、わたくし達はただ見ていただけですが。」
「ミスリルゴーレムのピュア種? そんな大物を?」
「ええ、ここのダンジョンでしたから、魔石しか出ないだろうなと全く期待しておりませんでしたわ。しかも、あの大きさですと、手に入れた3倍は通常でしたら手に入りそうな大きさでしたのに。」
「あの、姫様、あのダンジョンでミスリルゴーレム自体出てくることがおかしいですからね。しかもピュア種なんて、せいぜいウッドゴーレムやストーンゴーレムくらいしか聞いたことありませんぞ。」
オルステッドさんも唖然としながらそう言っていた。
「ふむう、そうなると、確認する場所は第2訓練所を予定していたが移した方がいいな。」
「そうですな。魔石はともかく、ミスリルも手に入れたとなると、宝物庫近くの部屋がよろしいでしょう。」
「そうするしかないな。レイモンドよ、早速手配を。」
「念のために押さえておきましたので、直ちに移動は可能です。」
「うむ、流石は宰相だ。朝食はここまでにして早速移動するか。アンジェリカ、アイス、一緒に来るがよい。ナターシャよ、そなたはどうする?」
「非常に興味深いですね。私もお供いたします。」
結局、朝食のメンバーで宝物庫近くの部屋へと向かう。部屋の前で一人の魔術師と衛兵らしき3人が待機していた。ん? この気配は、先日謁見したときに物陰に潜んでいた気配と同じか。害意などは感じなかったからそのままにしておいたけど、なるほど、この人か。
「ローレルよ、わざわざ呼び出して済まんな。っと、ローレルとは初対面であったな。アイスよ、この者は我が王国の魔術師長をしておるローレルだ。ローレルよ、こちらが冒険者のアイスじゃ。アイスはCランクではあるが、実力はS以上の猛者だ。」
「初めまして、ローレルと申します。ご紹介の通り魔術師長をやっております。」
「ご丁寧にありがとうございます。私は冒険者のアイスと申します。こちらの猫はマーブル、ウサギはジェミニ、スライムはライムと申します。以後、お見知りおきください。」
「紹介が終わったようだな、では、中に入るとしよう。」
国王陛下が先頭で部屋に入る。って王宮内とはいえ、国王自ら最初に入るって大丈夫なの? といった心配をよそに次々と入出していく。全員が入ったところで、衛兵の一人が内鍵を閉めた。
「早速本題に入りたいと思う。まずは魔石を出してくれ。」
「魔石はこちらに出してくれ。」
レイモンド宰相様が置き場所を指定する。うん、結構スペースあるけど、置ききれますかね。まあ、置けるだけ置いておきましょうか。そう思って次々に出していく。魔石が割れると困るので、とりあえず一つ一つ置いていく。それをローレルさんが鑑定しては衛兵の方達が分けていく。
次々に出てくる魔石とその種類を聞きながら、両陛下と大臣の方達は最初こそ、ややホクホク顔で頷いていたが、30分くらい経つと、ホクホク顔をしていた方達から笑い顔が消えていった。驚きを通り越して呆然とし始めた。レイモンド宰相がいち早く我に返る。
「お、おい、アイスよ。あとどのくらいかかる?」
「そうですね、とりあえずまだ3分の1といったところでしょうか。まだ、ゴブリンとスライムとオークしか出しておりませんので。」
「は?」
「ですから、3分の1です。」
宰相が戸惑っていたので国王が助け船を出した。
「アイスよ、済まんが、魔石は一旦そのくらいで止めてくれ、それよりもミスリルを頼む。」
「承知しました、では箱ごと出しますので、中身を検めてください。」
そう言って、ミスリル、緋々色金、アダマンタイトが入っていた箱を取り出す。もちろん、私の取り分は除外しておりますよ。取り出した箱を早速開けて中を見せた。
「た、確かにミスリルだ。しかし、この量は、、、。」
「何か輝きが違うぞ。今まで見てきたミスリルが偽物みたいだ。」
「量ももの凄いあるな、、、、。」
これを見た一同はありえない純度と量に驚きを隠せなかった。
「と、ところでローレルよ、これらはミスリルで間違いないか?」
「はい、ミスリルで間違いありません。しかも純度100%の純ミスリルです。これほどの質を持ったミスリルは初めてです。」
「そうか、余もこれほどの質と量のミスリルは初めてだな。ところでアイスよ。余は魔石についてはこちらでもらうから、ドロップ品などについては好きにして良いと、アンジェリカと話して決めておったのだが、これだけのミスリルをもらってもよいのか?」
「そのミスリルは戦姫の取り分ですので、アンジェリカさんが良いというのであれば問題ありません。あと、私も少し頂いているので、ご遠慮なく。」
「そうか。アンジェリカよ、これらのミスリルはこちらでもらってもいいのか?」
「ええ、かまいませんわ。代わりにいい武器も手に入りましたので、ミスリルは王国のためにお使い下さいませ。」
「わかった。ありがたくもらっておこう。ローレルよ。済まんが、引き続き魔石の鑑定と整理を頼むぞ。」
「かしこまりました。後はお任せ下さい。」
そう言うと、両陛下と近衛兵長と軍団長は部屋から出た。私達は引き続き魔石を出しては鑑定して、それが終わったら種類ごとに仕分ける作業を続けた。昼食の時間になっても終わらず、全部を確認し終えたのは夕食前だった。私達も大変だったが、鑑定作業をひたすらしていたローレルさんや仕分け作業を頑張っていた衛兵の皆さん達はもっと大変だったと思う。というわけで、お礼も兼ねてとっておきの肉を渡して後で食べてもらいましょうかね。
「ローレル魔術師長、ならびに衛兵の皆さん、お疲れ様でした。さぞ大変だったでしょう。お礼と言いますか、陣中見舞いといいますか、後でこれでも食べて下さい。」
ローレルさんは鑑定続きだったため、出した肉も反射的に鑑定してしまったらしい。鑑定結果を見て慌てて言ってきた。
「こ、これはドラゴンの肉ではありませんか! こんなに高価なものを我々に?」
「そうです。朝からこの時間まで鑑定や仕分け作業、大変だったでしょう。これを食べて、疲れを癒やして下さい。今はこれしか出せませんが、たまにはいいでしょう。」
「あ、ありがとうございます。ここにいる者達でありがたく頂くとします。」
「ええ、そうして下さい。では、私はこれで失礼しますね。」
ローレル魔術師長と衛兵さん達に何度もお礼を言われて逆にこちらが恐縮してしまった。
その後夕食を頂いて、部屋に戻ると、服が綺麗になっていた。メイドさん達が洗濯してくれていた。入ってきたメイドさんに感謝をして、お礼をしようとしたら、マーブル達をモフらせて欲しいとのことだったので、その希望に応えることにした。マーブル達もあのメイドさんになら、ということで思う存分モフらせてあげていた。その後風呂に入って寝るだけだ。
ついに、明日は第2王子だっけか、運び屋としての仕事をしなければならない。正直断りたかったが王家直々となると断りづらい。明日のことを考えると面倒なことこの上ない。それを察したのかマーブル達が体を寄せてくる。ここは甘えて思う存分モフらせてもらう。
モフモフぷよぷよ天国を味わって落ち着いた私は明日に備えて寝ることにする。
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