第2話 ほう、これがスキルですか。


 突然真っ暗になり驚いたが、数秒後には周りが見えるようになった。先ほどの真っ白な一本道ではなく、草木が辺り一面に広がっていて坂もやや急なことから、どこかの山中であるようだ。幸いにも視界は開けており、比較的気温も高く過ごしやすそうだ。


「とりあえず、落ち着ける場所で安心した。変な場所だったらどうしようかと思った。さてと、多少落ち着いたところで状況を確認しましょうか。」


 周囲には今のところ危険はなさそうだな。では、今の自分の状況を確認しますか。まず着ているものはと、さっきの白い布ではなく普通の服装になっているな。靴もしっかり履いているな。流石に靴下はないか。腰にはベルトとこれはナイフか。袋も置いてくれてある。この袋は結構丈夫そうだな。大きさも悪くない。


 袋の中身も確認しておこう。予備の服が1着あるな。さらに小さな袋が4つか。1つは干し肉が入っているな。もう1つは銅貨が10枚と銀貨が10枚か。貨幣の価値がわからないから、後で人に会ったときに聞こう。小説によってはお金が無くていろいろ困っていることもあるみたいだし、これはありがたいな。残りの2枚は何も入っていないな。これらは予備か、これも助かるな。


「では、スキルの確認をしてみますか。アマデウスさんが確か鑑定が使えるとか言ってたような。早速試してみますか。では、『鑑定』っと。」


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『水術』・・・水を扱うスキルじゃ。水魔術ではないから、魔法が使えなくてもしっかりと使えるぞい。水の性質を知っていればいるほど様々な用途に使えるようになるはずじゃ。生活系はもちろん治療や攻撃まで思いのままじゃ。いろんなことを試してみるが良いぞ。

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 アマデウスさん直接の説明つきかい。他の転生者もこんな感じで説明されてるのかなあ。まあ、それはさておき水の性質ね。治療はともかく、どうやって攻撃するのだろうか。いろいろ試してみましょうかね。


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『格闘術』・・・己のカラダを使って戦う技能じゃ。お主の昔取った何とやら、ということでこれにしたぞい。拳や蹴りはもちろん、絞め技や関節を極めたりもできる。鍛えていけば一撃で息の根を止められるようになるぞい。打倒ドラゴンじゃ。

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 ドラゴンを素手で、、、。一体どこまで鍛えなきゃならないんだ。とはいえ、しばらくはこれらでどうにかしていくしかないか。あとは、アマデウスさんの加護って気になるな。鑑定してみるか。


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 『アマデウス神の加護 極』・・・ワシのありがたい加護じゃ。世界でもお主にしかない超レアなもの、大いにワシに感謝するのじゃぞ(エッヘン)。この加護は『鑑定(神)』『隠蔽(神)』『幸運+32』がもれなく付いてくる。今はそんなところじゃか他にも場合によっては何か付けるぞい。


『鑑定(神)』・・・人でも道具でも何でも鑑定したいものをごく一部を除いて鑑定可能じゃ。潜在能力までわかるのはこの技能のおかげじゃ。普通はそこまで見えないぞい。


『スキル隠蔽(神)』・・・自分のステータスを他人の鑑定から護る技能じゃ。他人からの鑑定を妨害もしくは隠したいものだけ隠したり、好きに表示できる。上手く使うのじゃぞ。


『幸運+32』・・・幸運値を強制的に50にする付与じゃ。お主は18じゃから+32になっておる。いいことがあったら、ワシの神殿で感謝の祈りを捧げるのじゃ。

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 アマデウスさんって、本当に神だったんだ。とはいえ今更呼び方を変えるつもりはないので、そこのところよろしく。にしても、称号系は隠蔽で隠しておいた方がいいな。ステータスも低いのはともかく高めのやつも隠しておいた方がいいかな。水術はどうしようか。これはそのままでいいか。じゃあ、こんな感じに調整しておきましょうかね。


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 名前  < アイス >  種族  【 人間 】


 年齢  < 35 >   性別  ♂


 レベル  12      職業  【 なし 】


 腕力  19


 体力  13


 器用   5


 知力  19


 魔力   0


 幸運  18


 [スキル] 水術 1、 格闘術 2


 [称号] なし

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 とりあえずはこんな感じでいいかな。いろいろと後で調整できたらしておこう。


「次は村か町を探したいけど、ここから見るとなさそうだな。ねぐらを第一優先として、先に道が見えたら道を進んでみるとしますか。できたら水場も確保しておきたいな。」


 そう思いつつ一直線に進んでみた。生前は山に登ったことなどないので知識は皆無でありどうしようもない。開き直るしかないのだ。ということで襲ってくる獣などに注意しながら2時間ほど進んだところに人が入れそうな穴を見つけた。


「おお、この穴は入れそうですな。とはいえ流石は洞窟、暗い。明かりになるものって今のところなさそうですね。とりあえず、まだ明るい今のうちに中を確認しておいた方がよさそうですね。」


 中に入ってみると、薄暗いが全く見えないほどでは無かった。ぼんやりと壁際が光っているのに気づいた。穴はすぐに袋小路になっていて、入り口は今はいってきた一カ所だけのようだ。広さは8畳の部屋くらいの大きさで、ありがたいことに水場のような小さい池っぽいものも見えた。何か出来過ぎているような気がしたが、何はともあれ、有り難いことに変わりは無い。幸いにも何かが住んでいるような気配も様子も無かったので、ありがたくここをねぐらにさせてもらいますかね。


「さて、とりあえず落ち着ける場所は確保できたし、ありがたいことに水場っぽいものがありますな。これがただの水たまりだと泣くに泣けませんがね。まずはこの水が触れても大丈夫かどうかですね。」


 深さもきになるところだけど、いきなり突っ込んで実は酸の池でしたとかシャレにならんから、とりあえず指で触れてみると特に異常はなかったので、指から手、そして腕へと徐々に突っ込んでみると肩の辺りまでになってもまだ底に着くことはなかった。


「よし、水は十分ですな。あとはこの水が飲めるかどうかですが、水術の確認も兼ねてみますか。って鑑定すればいいだけの話しだった(泣く)。」


 安全かどうかは鑑定すればいいだけなのに、それを忘れているとは案外精神的にも余裕がなかったのかもしれない、というか、ほとんどそんなものはなかったのだけど当人はそれを意識していなかった。


 鑑定結果はというと、『水・・・普通に飲めるどころか、結構いい水じゃぞ。どこかの清流からの湧き水だから安心して飲むがいい。』という結果が出てきた。またアンタかい。心の中で突っ込みを入れると、『忘れられても困るからこうやってちょくちょく登場するからの』という表示が追加されていた。あのご老体のことはともかく、飲み水には苦労することは無さそうで安心だ。


 ありがたくいい水場とねぐらを確保できてので、水分補給をした後は暗くなる前に周辺を探索しますか。お世辞にも方向感覚はいいとはいえないので、目印用のナイフを持ってねぐらにも目印を付けてっと。荷物は遭遇戦に備えておいていきますか。他の人に見つけられて盗られたらその時はその時、ということで。


 周りは木に囲まれてはいたが森や林というにはほど遠く、等間隔ではないものの比較的木と木の間にはある程度の広さがあり視界は結構良かった。また、一部には太めの竹があり、これで何かいろいろと作れそうだった。竹を切って持ち帰ろうとも思ったが、ナイフでは流石に厳しいのでせめて石斧にできるくらいの石が欲しかったが見つからなかったので竹はあきらめた。何かに使えそうかなと、適当に持てるだけの木や枝をねぐらに持ち帰っていった。


 ねぐらの中は明るいうちは、ぼんやりとした明るさ程度にしか感じていなかったが、空が暗くなっていくと入り口側ではそれほど明るくないのだが、奥では袋の中身が確認できる程度に明るいことがわかった。生活もできそうなことに安堵しつつ袋の中の干し肉を1つ取りだして一口かじると、かなりのしょっぱさに驚くと同時に折角水が豊富にあるので、スープにしようと考えたが、ふとあることに気がついた。


「これ、どうやって火を起こすんだ? その前に皿とかないじゃん(泣く)。明日は探索範囲を広げて皿とか器になりそうなもの探しますか。」


 どうにもならなそうなので、必要以上にゆっくりと干し肉を食べたあと、まだ眠気とはほど遠い状態だったので水術をいろいろと試すことにした。


 水場の水を眺めてどうしようかと考えていたが一向にいい考えが浮かばなかったので、常識的にできなさそうなことをやってみるかと思い、水を少し取り出そうとしたら、できてしまった。コップ1杯程度の水がいきなり宙に浮かんできた。


「うわっ。」


 最初はびっくりしたがこういうものかと思い、この水をいろいろなところに動かしてみると、思ったところに水が移動した。だんだん面白くなってきて、気合いを入れて水を動かしてみると自分の等身大くらいの大量の水も動かせることがわかった。水場はどうなったかというと、取り出した分水が補充されるように水位が上がってきた。これで穴を掘れば、洗濯などもできるな。次の探索の目的の一つにしますか。


 次は水の性質について考えてみた。この世界ではどういう認識かわからないが、生前の世界では水に限らずほとんどの物質は気体、液体、固体があり、温度によってその状態は変化するもので、その状態によって物質を構成する分子の状態が変わっていて、分子が固まっていて動けない状態では固体、分子がある程度動き回れる状態では液体、分子がばらばらに動き回っている状態では気体だということがわかっている。つまり、分子の状態をいじれば、水を凍らせたり蒸発させたりもでき、それは温度を管理できるのにも等しいということ。


 ものは試し、ということで今度は未使用の袋を使って水をくみ、分子を粒と考えてその状態を思い描いてみる。まずは粒をひとかたまりにしてみた。すると、水は凍った。少し触れてみると冷たかった。氷だ。ちょっと嬉しかった。


 今度は、粒をある程度動き回らせてみると、氷は溶けて水になった。触ってみるとちょっと温かかった。粒の動きを激しくしていく、するとだんだん熱くなっていった。袋からも熱さは感じたので動きをゆるめると熱いから温かいに変わっていった。やっぱり嬉しかった。これで氷やスープや蒸し物まで自由自在に操れる。水術最高!!


 実験結果に満足しつつも、楽しい実験だったのでその後もあれこれと試していき、いくつかわかったことがある。


 それは、水は空気がある限り集めることができ、水の味にさえ目をつむれば、飲料水には困らないということ。


 また、粒の動きを意識しておけば、水を集めなくてもその場所を凍らせたり蒸発させたりできるということである。


 とはいえ、まだ水の量が多くないとそれほど大きな事はできない。練習あるのみです。


 ともあれ、いろいろと分かってきたので、食糧問題さえ解決できればここで生活する術を手に入れてから村や街に行っても遅くは無いかなと正直思った。怖いのは魔物よりも人間だと思う。安定した生活だった前世でも油断できない場面も多かったから、死と隣り合わせのこの世界では生き残れる手段をできるだけ多く身につける方が重要だと思う。


 というわけで、しばらくここにとどまってお世話になるとしますか。



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