とある中年男性の転生冒険記

うしのまるやき

第1話 ほう、転生ですか。

「ん? ここはどこだ? それにこの格好は?」


 いきなり見慣れない光景にびっくり。


 周りはとにかく殺風景で、床が白っぽくひたすら長い廊下のような一本道が続いているが、奥は遠すぎてわからない。


 これは、夢なのだろうか? にしては、感覚がしっかりとしているし、認識もはっきりしているし、何より服装がいつもの寝間着ではなく、何だか少し肌触りの良い布をかぶった感じで、これって何かの儀式で着たりするやつ? というように疑問は尽きることがない。


 私の名は郡元康(こおり、もとやす)。45歳のいわゆる『おっさん』だ。外見は他の人はどう評価するかわからんが、自分では可もなく不可もなくと思っている。周りの評価もそうだといいなあ(泣)。体型は一般よりも横幅は広い。一応人並みには鍛えていたんだ。そこのところはよろしく。


「客人、我が世界にようこそ。ワシの名はアマデウス。この世界におけるいわゆる『神様』というやつじゃな。」


 いきなり出てきた老人にびっくり。考えてほしい。周りには何もない殺風景なところからいきなり人が現れたんだぜ? びっくりするなという方が無理な話というもの。


 で、言われた言葉が『この世界』やら『神様』やらで、訳がわからないのですが、、、。


「どうやら驚いているようじゃな。郡元康。先ほども言ったとおり、お主を歓迎する。」


「そりゃ、驚くでしょう。何もないところから、いきなり現れて、『この世界』だの『神様』だの言われれば。ところで、どうして私はここにいるのでしょうか? 寝て起きたらいきなり見たことのない場所にいた上に、着ているものはいつもの寝間着ではなく、布を頭からすっぽり通した感じの服といえるかどうかもわからないものになってるし。」


 はっ!これって、拉致? こんなおっさんつかまえて拉致も何もあったものではないかと。どうせ拉致るなら、美少女やら美女やらイケメンにすればいいのに、なんでよりにもよって『おっさん』なのか、、、。


「これ、何いきなり物騒なことを考えておるのじゃ。くれぐれも言っておくが、これは拉致ではない。平たく言うとお主は転生してこの世界に来ておるのじゃ。じゃから歓迎すると言っておる。」


「転生ということは、私は死んだのですか? 死んだ原因がさっぱりわからないのですが。」


「そうじゃ。お主は死んだのじゃ。死んだ原因はワシにもわからん。お主のいた世界の神から、原因不明で死んだかわいそうな人間をワシの世界で面倒を見てくれと頼まれたのじゃ。というわけで、お主はこれからワシの世界の住人となってもらう。」


「あ、そうですか。わかりました。ところで、アマデウスさんの世界はどうなっているのですか? そちらの方が気になりますが。」


「気になるのはそっちかい。」


「まあ、死んでしまったものは仕方がないですし、騒いだところで生き返るわけでもないですしね。」


 そう、死んでしまったものは仕方がない。受け入れるしかない。どうせ独身だし、家族は一人もいなかったので心配してくれる人もいない。敢えて言えば、住んでいたアパートの管理人さんくらいなもの。でも、家賃は向こう何年も払えるくらいは残高あるからなあ、放っておいてくれれば毎月入金されているわけだし問題ないか。気楽にいこう。


「そうか、では、ワシの世界のことを説明するぞい。ワシの世界では、・・・(説明中)・・・。」


 アマデウスさんが言うには、平たく言うと人間はもちろん、エルフやドワーフを始め様々な種族が生活しており、もふもふも存在するそうな。魔物も魔人もいて魔法や剣がかつやくするといういわゆる定番ファンタジーの世界らしい。いい年して厨二病心を忘れていない私としては、心配よりもワクワク感が強い。ちなみに勇者も魔王も存在するらしい。もちろん私が勇者な訳ないでしょう。おっさんですよ、おっさん。所詮はモブみたいなもんさ。


 世界の様子は自分の目や耳で確認するようにと言われたんだけど、、、。使命なども特にないので、自由にやってほしいと言ってくれるのはいいが、転生してすぐに死ぬのは勘弁して欲しいところだ。


 言葉については、転生するときに読んだり書いたりできるようにしてくれるそうだ。これは助かる。言葉が通じないと地獄だからねぇ。


「ありがとうございます。転生してそちらの世界でお世話になろうと思います。ところで、転生ものの定番としてステータスとか、スキルとかがあると思うのですが、そちらの世界ではそれらはどうなっているのでしょうか。」


「いきなり食いつきが良くなったな。まあよい、ではステータスやスキルなどについて説明するぞい。この世界ではな、・・・(説明中)・・・。」


 ステータスはこんな感じかな。


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 ・名前と種族 ・・・ 名前は <  >、種族は【  】で表される。


 ・年齢と職業  ・・・ 年齢は<  >。職業は【  】で表される。


 ・状態  ・・・ 毒などの状態異常を表す。何もなければ正常と表示される。


 ・レベル ・・・ 強さの基準。経験値が一定になると上がる。

          レベルが上がると能力が上がったりする。


 ・生命  ・・・ 生命力。いわゆるHP。 現在値/最大値 で表される。

          ダメージを受けると減り、現在値が0になると死ぬ。


 ・魔法力 ・・・ その人の扱える魔力の量。いわゆるMP。 現在値/最大値 

          で表される。

          魔法を使うと消費される。現在値が0になると気絶する。


 ・腕力  ・・・ 高いほどダメージが大きくなる。物理攻撃の命中率などにも影

          響する。


 ・体力  ・・・ 物理防御や生命の伸びに影響する。


 ・器用さ ・・・ 攻撃の命中率や罠についての解除率に影響する。


 ・知力  ・・・ 主に補助魔法や回復魔法の成功率などに影響する。


 ・魔力  ・・・ 主に攻撃魔法や回復魔法の威力に影響する。


 ・幸運  ・・・ これが高いといいことがある、かも。


 ※腕力から幸運については装備によっては補正値が付くものもあり、そのときは能力値に+や-の表示がある。

  また、数値の隣にある( )は限界値

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 また、ステータスについては生命や魔法力はレベルが上がれば上がるほど増えていくらしい。腕力から幸運については、個人ごとに限界値があるらしい。16が基本的な限界らしく、素質があれば17以上にもなるみたいだが、逆もまた然りらしい。その道の一流と呼ばれる人は20を超えていると言ってた。ショボかったら悲しいな。


 とはいえ、生命や魔法力以外のステータスに差があってもやはり経験がものをいうらしく、レベル1のALL20と、レベル10のALL15とで戦闘すると、レベル10の人がほぼ間違いなく圧勝するそうです。それほど経験は大事と言っていたな。


 これって、某有名3DダンジョンRPGみたいなやつでは?


 スキルについては、剣術、火魔法、水魔法、探知などがあり、それらにもそれぞれレベルがあり、単純に戦闘をこなせば上がるものではなく、そのスキルを使わないと上がらないみたいだ。何やらものすごい数があるらしく、これは自分の目で確かめてほしいとのこと。まあ、全部説明されても覚えきれないしそれでいいと思う。アマデウスさん、わかっているな。


 さらに、ステータスやスキルの他に称号などもあるらしく、称号などによってはステータスアップやスキルアップなどのおまけもつく場合があるそうだ。


「ステータスやスキルについてはわかったかの?」


「大体わかったと思います。あとは実際に確かめてみます。」


「うむ、それがよいじゃろう。ところで、お主のスキルやステータスについては、生前のお主に合わせてこちらで勝手に決めたからの。希望を聞いてしまったらチート満載で不公平丸出しになるからのう。」


「ありゃ、そうでしたか。とりあえず、考える手間は省けましたね。あとは自分の工夫次第といったところでしょうか。」


「流石にそれなりに齢を重ねているものは違うのう。若い者はここぞとばかりにゴネたりするものでな。」


「では、お主のステータスやスキルを公開するぞい。自分で見るときは『ステータス』と唱えるがよい。人目が気になるときは暗唱でもよいぞ。」


「ありがとうございます。では『ステータス!!』」


 最初だから気合いを入れて唱えてみた。


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 名 前 < ●×え■○(゜д゜)  >  種 族【 人間 】


 年 齢  <35>    性 別  ♂


 レベル   12     職 業  なし


 生 命   125/ 125


 魔法力     0/   0


 腕 力  19(21)


 体 力  13(16)


 器用さ   5( 5)


 知 力  21(35)


 魔 力   0( 0)


 幸 運  18(18)+32(50)


 [スキル] 水術 1、 格闘術 2


 [称号など] アマデウス神の加護 極

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「どうかの? それが、お主のステータスじゃ。」


「ほう、こんな感じですか。って、ちょっと待て。ステータスもそうなんですけど、名前がおかしくないかい?」


 何これ? 私の名前ってこれどう読むんですかい? 意味分かりません。年齢は、少し若返ってるか。でもこれ、『おっさん』の半ばから入り口に戻ったようなもので『おっさん』であることは変わりないな。まあ、いいか。職業は、と、無職ですか。これは後で決まるんだろうな。定番ですから。で、レベルは12と、ひよっこには勝てるレベルといったところかな。


 ステータスは何か極端な感じですかね。超不器用なんですが、これは? いや、全体的に見たらありがたいことにチートも混ざっているけど、折角の魔法ある世界なのに魔力0って。0って何だよ(血涙)。あと、幸運の数値がとんでもないんですが、これ実感できるときが来るんですかね。


「ふむ。ちと申し訳ないが、名前に関してはあちらの世界で名乗っていた名前はどうも使えないようじゃ。というわけで、早速これから名前を決めてもらうかの。ステータスに関してじゃが、ある程度尖った方が工夫のしがいがあるじゃろ?」


 ふむ、なるほど。名前に関しては文字の違いとかいろいろとありそうですな。


「ステータスに関してはいろいろと含むものもありますが、名前についてはもう決めましたので。」


「ほう、さすがはいい歳した厨二病の持ち主じゃ。」


「それは恥ずかしいから突っ込まないでください。」


「そうか、では新しい名前を名乗るがいい。」


「では、名字の郡からアイスと名乗ることにします。」


「なるほどのう。名前はともかく家名は付けなくてもよいのか?」


「貴族の身分ではないので、名前だけで。」


「そうか、しかしろくに説明してないのに貴族の存在について知っておるのか?」


「そこは定番ですから。」


「なるほどのう。では設定が終わったからお主には実際にワシの世界に入ってもらおう。行き先はどこになるかさっぱりわからんから気をつけるのじゃぞ。」


「とりあえず、転送先が石の中だったりシャレにならないところは勘弁してください。」


「そこはお主の運次第じゃ。そのために加護まで与えたのじゃ。たぶん大丈夫じゃろう。あ、ワシの加護には鑑定のスキルが使えるようになっておる。後で使ってみるとよい。」


「これ以上ゴネても仕方ないので、あきらめて飛ばされます。それはそうとして、ありがたくこの世界を楽しみたいと思います。アマデウスさん、ありがとうございました。」


 新しい人生をもらえたことに変わりはないので、心からの感謝の気持ちを込めてアマデウスさんにお礼を言った。


 アマデウスさんは慈しむ表情で元康、いやアイスに応えた。


「この世界を楽しんでくれい。お主のことは見守っておるぞ。」


 さてと、どこに降り立つのやら。定番では森の中だったり、平原のど真ん中だったりする場合が多いけど、果たしてどうなるのやら。絶海の孤島とか勘弁してくれよ。これ、前振りじゃないからね。


 期待と不安の気持ちを半分ずつ抱いて、アイスは流れに身を任せていた。



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