introduction13
・・・やあ、待ってたぜ。
とうとうこの日が来たな。お前は今まで、12人のサイコパスに取材をしてきた。
ここに収容されているサイコパスは全部で13人。今回の取材で、とうとう最後。お前が熱望していた、とびきりに狂った奴。13人目のサイコパスにいよいよ御対面ってわけだ。
長かったか?取材の日々は。
俺は、また腑抜けた野郎が来やがったな、って思ってたよ。最初はな。
ところが、回数を重ねていく内に、お前は段々と顔つきが変わっていった。
最初の内は、ギラギラしてたぜ。もちろん、そりゃ世間知らずのただの馬鹿のツラだった。失うものなんて何も無いって気取った、無知な野郎の馬鹿面さ。
やがて、お前はここの奴等に毒されだした。当たり前だわな。凡人が心底ヤバい奴等の内面に踏み込んでいくんだ。ましてや、なんの心構えもしてない奴がそんな真似したら、毒されるに決まってる。あっという間に、情けないツラになりやがった。
しばらくすると、お前は追い詰められた羊みてえなツラになったな。毒され過ぎたんだ。深淵を覗き過ぎた奴の末路さ。
ところが、お前はまたギラついた眼になった。最初の頃のような眼にな。だが、俺は薄々分かってたさ。ただの強がりだってな。世間の批判に押し負けて、粋がってただけさ。脅迫状が届いた時点で、お前の精神は折れちまう寸前だった。
だが、どうだ。お前はそんな苦悩や挫折を乗り越えて、とうとう最後まで辿り着いた。
・・・なんだ、そのツラ。講釈垂れるなってか?
いいじゃねえか、俺にだって感慨深いもんがあるのさ。馬鹿面こいたヒヨッコが、真剣なツラの一人前になったんだからな。
ふん、冷めたツラしやがって。まあいい。
迷わずここに来たんだ。そのツラ見りゃ分かる。覚悟してる奴のツラだ。前も言ったが、引き返す気はないんだろう?
ああ、俺も、もうとやかく言うつもりはない。さあ、サインしてゲートをくぐれよ。
ほら、お待ちかねの部屋だぜ。一番奥の突き当たりの扉。あの向こうに、奴がいる。待望の13人目さ。
なんで、俺がアイツを最後にしておけ、って忠告してたのか教えてやろう。アイツはな、この施設史上、最強最悪のサイコパスだ。
対面すれば分かるが、アイツくらいなもんだ。拘束衣どころじゃねえ。椅子に縛り付けられて、目も口も封じられてるのはな。取材時にしていい反応は、首を縦に振るか横に振るかだけだ。
それだけ、アイツは危険視されてる。この施設ですら、扱いに困り果てて持て余してるほどにな。
ほら、行って来いよ。
もう今のお前にとやかく言う事はない。どんなサイコパスだって、お前は取材できるだろうよ。お前な———。
・・・っは?
おっ、お前、なんでナイフをっ・・・。
うっ、ぐああっ!
ううっ、はあっ、はあっ・・。クソッ、血が・・。
なんでだ!お前、ゲートをくぐっただろうが!なんでナイフがっ・・。
おい、やめろっ、近付くなっ!俺に何しようってんだ!どうして俺を殺す必要がある!俺が何をしたっていうんだ!
はあっ、はあっ・・。・・・俺が憎かったのか?毎度毎度、俺が垂れる講釈にイラついてたってわけか?
確かに俺はお前を焚きつけたこともあったが、あれは取材の成功を祈って俺なりに・・・。
・・・・・何?鍵?扉を開けろ・・?
お前、まさか・・・。
おいっ、よせっ!やめろっ!鍵を返せっ!そいつだけはっ!そいつだけはやめるんだ!扉を開けるなっ!
そいつだけは、そいつだけは解放しちゃならねえ!そいつが野に放たれたら、何十人どころじゃねえ!何百って人間が死ぬんだぞ!よせ!開けるなっ!よせーっ!!
———ガチャン——ギギ・・ギイイイイ—————————。
ふふ、ようやく辿り着いたね—————。
俺が扉を開けた先には、拘束衣を着せられ、革製の厚いベルトでギチギチに身体中を椅子に縛り付けられている一人の人間がいた。顔には革製のマスクが取り付けられており、視界と発声を奪われている様だった。
背後に、警備員の苦しそうな声が聴こえる。痛みにこらえながら、うずくまっているのだろう。
確実に肝臓を刺したから、激痛で動くこともままならないはずだ。いずれ大量出血で死ぬ。放っておこう。今はそれどころではない。
警備の者が来る前に、13人目の取材を終えなくてはならないのだから。
最初は、名声目当てだった。
どんな記事を書いても、俺の書く文章には誰も見向きしなかった。
だから、過激な題材を選んだ。異常者、大量殺人犯、精神病質者、サイコパス。そんな奴らに取材をして、そいつらの言葉を文章にする。
時にはそいつらの心理をくすぐり、過激な発言を引き出す。少々脚色して文章にすれば、あっという間に過激で強烈、先鋭的なコラムの出来上がりだ。
思惑通りに、世間の連中は記事に食いついた。批判の声ばかりだったが、モラルや道理、倫理観なんて関係ない。所詮は過激な娯楽に飢えた暇人がごまんといる世間だ。俺の記事は瞬く間に注目を集めた。
編集部は批判に怖じ気づいていたが、炎上していようが注目されていることは確かだった。
”目新しい”、”斬新だ”、”もっとやれ”。
批判の声に混じって、いくつかそんな意見も上がった。
俺はその声援を胸に、めげずに取材を敢行し続けた。狂った奴等の言葉に惑わされ、精神を擦り減らしながらも、ここに通ってサイコパスどもの声に耳を傾けた。
やがて、悪評と好評が拮抗した。炎上商法だなんだと言われたが、俺の記事が注目されたことが嬉しくて、批判の声など耳に入らなかった。編集部にも実力が認められ、いい気分だった。
俺の名をもっと世間に轟かせてやる。
火事場に油をぶちまけるように、俺は取材を続けて過激な文章を綴った。
だが、甘く見ていた。深淵を覗き過ぎた。俺は奴等の狂気に少しずつ蝕まれていった。
言葉のやりとりだけだった。それだけなのに、俺は命の危機を感じた。まるで奴等の手の内に俺の心臓があるようだった。
それに加えて、批判の声は度を過ぎたものになっていった。
”糞ライター”、”三流以下の素人コラムニスト”、”恥知らずの物書き”、”モラルの欠片もない人間”、”所詮は殺人犯の言葉をそのままコピーしてるだけのクズ”。
さすがに参ってきた俺は、編集部に取材の休止を提案した。だが、記事の人気を見たお偉方は、俺に取材を続けろと命じた。
俺はズタボロの精神で覚悟を決め、何もかもかなぐり捨てて取材を続けた。
やがて、編集部に俺宛の脅迫状が届いた。家のポストに中傷の手紙が詰め込まれ、玄関には罵詈雑言のビラが貼られた。ネットには俺の個人情報が晒され、夜道を歩いていると、カメラ片手につけてくる奴まで現れた。
俺は限界寸前だった。護身用にナイフを持ち歩いても、不安は拭えなかった。
それでも取材を続けた結果、俺はぶっ壊れた。
もう記事の評判なんかどうでもよくなった。俺は俺だけの為に、取材をやり遂げることにした。
13人目のサイコパス。その評判は聞いていた。最強最悪のサイコパス。史上最悪の異常快楽殺人犯。
俺は今から、この男を殺す。
そして、俺はサイコパスになる。世間に本物の、俺という殺人犯の声を聞かせてやるんだ。今度は奴等の受け売りじゃない。俺そのものが、サイコパスになるんだ。それも、最強最悪のサイコパスを殺したサイコパスに。俺の名を、声を、世間に響き渡らせてやるんだ。
ナイフを握りしめた。ゲートの金属探知に引っ掛からないセラミック製を選んだのは正解だった。前回の取材時に、引っ掛からないかテストしておいたおかげで、気兼ねなく持ち込むことができた。切れ味も抜群だ。ダイヤモンド製の砥石で限界まで研ぎ澄ました甲斐があった。
椅子に拘束されている、13人目のサイコパスに近付いた。せめて顔くらいは拝んでやろうと、耳の横のベルトにナイフを当てた。力を込めると、ベルトはほんの少し伸びた後に、バツンと音をたてて切れた。
同じように反対側のベルトを切断し、マスクをむしり取った。拘束されていた男は、無表情で眼を閉じていたが、突如として明るくなった視界に反応したのか、ゆっくりと目を開けた。
「・・・お待ちしておりました。この瞬間を———」
男は微笑みを湛えながら、虚ろな目で言葉を発した。
「お前が、13人目だな。さっそく取材に入ろう。邪魔が入る前に」
俺は男の首元にナイフを当て、見下すように眼を剥き、顔をグイと近付けた。
「私はあなた様を、心待ちにしていたのですよ。ついにこの時が来たのかと思うと、私は———」
意味不明な言葉を発しながら、男は涙を流し出した。身を震わせているのか、拘束衣のベルトがギシギシと鳴っている。
随分と長い間、視界と声を奪われて、拘束されていたのだろうか。いかにサイコパスといえど、最早、別の方向に精神が崩壊してしまっているのかもしれない。
「なあ、教えてくれよ。俺は、狂っちまったのかい?」
男は質問に答えず、涙を流しながら遠い目をしていた。俺のことなど、視界に入っていないようだった。
「・・・なあ、狂っちまった俺は、これから何をすると思う?」
男の様子は変わらない。腹が立つ。
「今からあんたの喉を切り裂いて、俺はサイコパスになるのさ。あんたらの言葉を世間に広めるなんて、もう飽き飽きだ。世間に、俺の言葉を聞かせてやるのさ。サイコパスになった、俺の言葉を———」
「ぅうるさいっ!!!!!!!!!!!!」
突然の絶叫に、思わず身体が跳ねた。拘束された男は眼を剥き、喉元のナイフを気にも留めずに大口を開けて吠えた。
「邪魔をするなっ!!!!!私は!!報告しているのだっ!!私にとっての神にっ!!!お前の戯言など知った事ではないっ!!!失せろっ!!!」
男の豹変ぶりに気圧され、ナイフを持つ手が震える。口の中に生唾が溜まり、鼓膜にビリビリと残響が残る。
一体何なんだ、こいつは。
戸惑っていると、ナイフの切っ先が肌を傷付けたのか、一筋の血が首元を伝っていた。
「ふ・・、はははははははははははは!!!!」
俺はナイフを握り直し、そのまま男の首にズンと突き立てた。
「ぉごっ・・、ほがっ、かっ・・・」
男は声にならない声を上げた。突き立てたナイフの傷口から、男の口から、鼻から、大量の血が溢れ出た。
ざまあみろ。凶悪なサイコパスだろうが、所詮はただの人間だ。血を流した時点で、お前は俺に負けたんだ。
ナイフを引き抜き、空を切った。血がピシャリと純白の壁に滴った。
さあ、後は待つだけだ。やがて施設の人間が俺を拘束し、警察が来て檻にぶち込まれるだろう。世間に俺の名が知れ渡り、新聞で、ニュースで、ワイドショーで、くだらないネットニュースで、騒ぎ立てられるだろう。
俺はその光景を檻の中から笑って眺めるんだ。事情聴取には満面の笑みを浮かべて応じてやる。狂った言葉を吐き、警察の奴等を惑わせてやる。その様を、ありとあらゆるメディアが記事にする。俺の言葉が世界を蹂躙するんだ。
俺はサイコパスの烙印を押される。もしかしたら、この施設に収容されるかもしれないな。
ふふ、それも悪くない。
俺は、こいつの後釜として、この部屋に———。
・・・・・・?
ふと違和感を感じた。何だ?何かがおかしい。この部屋。この部屋は、一番奥の突き当たりの扉を開けた部屋だ。待ち焦がれた、この施設で最も恐ろしい患者が収容されている、13人目のサイコパスの部屋だ。
・・・いや、違う。
違和感の正体を突き止めた。
ここは、前室だ。
そうだ。どの患者も、病室の前には前室が用意されていた。前室の向こうに、面会設備が併設されている病室が存在するはずだ。
今しがた殺したこいつはなぜ、前室にいる?
ここだけ、特別な造りなのか?だが、男の背後に病室に続くであろう扉を見つけ、その仮説は早くも崩れ落ちた。
ここは、間違いなく前室だ。血が飛び散った壁を眺める。見慣れた壁だ。隅には机と椅子、反対の壁には待合用のソファーが置かれている。それ以外には、何もない殺風景な前室。天井の隅には、監視カメラが・・。
・・・どういうことだ。
俺の行動は、カメラ越しに見られているはずだ。だというのに、警報のひとつも鳴っていない。何か妙な行動をとれば警備システムが働き、ここは監獄に早変わりのはず・・。
なぜだ?一体、どういうことだ?
「・・・やあ、待ちかねたよ」
背後で声がした。透き通っているような、落ち着き払った声だった。
振り返ったが、地べたに転がっている警備員以外には、誰もいなかった。
どこだ?誰が、どこで、喋っているんだ?
「・・・ぁあああ、がびよ、おばちして・・」
拘束されていた男が声にならない声で何事か呻いた。まだこと切れていなかったのか、口からゴボゴボと血を噴いている。
血が泡立つ不快な音に腹が立った。とどめを刺そうと、ナイフを握り直して——。
・・・・・?
ナイフがない。手に握りしめていたはずのナイフが———。
「へえ、研いであるんだね。セラミック製なんて、切れ味が悪いだろうに」
また、あの声がした。再度振り返ると、いつの間にか男が立っていた。黒いシャツを着た、中性的な顔立ちの男だ。掌で、俺のセラミック製ナイフを弄んでいる。
「・・・誰だ、あんた」
「これ、通信販売でしょ?質が悪い四流品だね。研がなきゃ使えないなんて、刃物失格だと思わない?」
男は飄々とした態度で続けた。その声は、男のようであり、女のようであり、若者のようであり、大人のようでもあった。
「質問に答えろ、お前は、一体誰だ?」
凄んだが、男にはまるで効いていないようだった。
「ふふ、いやだなあ。僕は・・・、俺だよ」
男は、後ろ手に持っていた何かを頭に乗せた。それは、警備員のかぶっていた紺色の帽子だった。
だが、そんなことはどうでもよかった。
俺が刺し殺したはずの警備員がそこにいた。
「俺の顔を忘れちまったのか?冷てえ野郎だぜ。ここに来るたびに、俺はアドバイスしてやったっていうのによ」
何が起こっているのか理解できなかった。
さっきまで目の前にいたのは、突然現れた中性的で無個性な顔立ちの男だ。だというのに、帽子をかぶっただけで、あの警備員が現れた。まるで変身したように。
それだけじゃない。先ほどまで聴いていたのは、透き通るような声だった。だが、たった今発せられた声は、声色、口調、表情、全てが、あの警備員そのものだった。
「まったくよ、俺を刺しやがって。だが、甘かったな。肝臓までは達していない。所詮はセラミックだな。本物のナイフなら、俺を殺せたかもなあ、へへっ」
あまりに奇妙な事態に、脳が消化不良を起こしている。こいつは、誰だ?あの警備員なのか?
いや、あの警備員だった奴なのか?
「おお~、痛い痛い。まあ、これくらいならホッチキスで十分だな。・・よし、と。手当て完了だ。シャツに穴が開いたが、これは安物だからな。勘弁しといてやるよ」
警備員は、足元に落ちていた制服から取り出したホッチキスを腹にあてがい、二度ほど鳴らして放り投げた後、シャツの裾を正してニヤリと笑った。
「あ、・・あんた、一体誰なんだ?」
ようやく言葉が出た。だが、その言葉はつい先ほども言ったはずの言葉だった。
「俺かい?今更、自己紹介しなくたっていいだろう。もう何回も俺たちは会ってるじゃねえか。初めて会った時に言った通り、俺は、ただの真面目な警備員さ」
言葉は理解できるが、状況が理解できない。聞き慣れた口調と見慣れた身のこなしが拍車をかける。確かに目の前にいるのは、何度も会う度に講釈を垂れてきたあの警備員だ。
「はは、そんな顔すんなよ。分かった分かった。・・・これでいいかい?」
警備員は帽子をとった。そこにいたのは、先程まで掌でナイフを弄んでいた、あの奇妙な男だった。よく見ると、警備員と同じスラックスとベルトを身に着けている。
「——がび、ばだじのがびよ、やりばじだ、おおぜのどおりに」
背後で拘束されていた男が呻いた。
「ああ、君に礼を言わなきゃね」
男は、ゆらりと歩いてこちらに向かってきた。
その瞬間、突如として指の一本たりとも動かせなくなった。呼吸が止まり、心臓が締め付けられる。真横を通り過ぎるその姿は、まるで大型の肉食獣の化物が歩んでいるかのような、今までに未体験の奇妙な感覚を脳に植え付けた。
「よくやった、ありがとう。君のおかげで、随分と長い間、自由を楽しませてもらったよ」
背中越しに、声だけが聴こえる。
「ああああああ、あびがだぎじあばぜでず。もっだいないおごどば・・」
「でも、良かったのかい?こんなことして。仮にも、君はここの警備員だった人間だろう?」
「いいんでず。あなだざばのじぶうのだべなら・・」
「大丈夫かい?苦しそうだね。この出血量ならもう助からないだろう。特別に、僕の手で息の根を止めてあげようか?」
「ばあああああ!!ばい!あびがだぎじあばぜでずううう!ばやぐ!ごろじでぐだざい!おねがぎじばず!ばやぐ!ばやぐ!あああああ!!!!」
「ふふ、そんなに焦らないで。ほら」
バギン、と聞いたことのない鈍い音が響き、場に静寂が訪れた。相変わらず、身体は硬直したまま、その場から一歩も動くことが出来なかった。
「どうしたんだい?ボーっとして。ああ、ちょっと緊張してるんだね。ほら」
パアン、と柏手を打つような音が聴こえた瞬間、緊張の糸が無理矢理切らされたかのように場の空気が変わり、ドッと息を吐いた。締め付けられていた心臓が、早鐘のように鳴り出した。冷たい汗が、ジワジワと額に滲む。
「質問に答えようか。せっかく取材に来てくれたんだしね。僕は——」
「一体何なんだ!あんた、一体誰なんだよっ!」
強張った喉で怒鳴りながら振り返ると、俺が殺したはずの拘束されていた男が、完全にこと切れていた。
それは、一瞬で理解できた。
拘束されていた男の首が、その膝の上に乗っていたのだから。
捻じ切られたような跡を残す首からは、ブシュブシュと血が湧いていた。丁寧に膝元に置かれた生首の頭には、警備員の帽子があしらわれていた。
その満面の笑みを浮かべる生首の顔は、あの警備員にそっくりだった。
またもや、脳が混乱した。その傍らには、警備員だった男が微笑みを湛えて立ちすくんでいる。警備員が2人・・?いや、違う。この男は警備員だった男で、拘束されている男はかつての警備員で・・?
”仮にも、君はここの警備員だった人間だろう?”。
”随分と長い間、自由を楽しませてもらったよ”。
・・・・?
混乱する脳の中で舞う情報が断片的に繋がり、最悪の想像を導き出した。
まさか、こいつが——。
「理解できたかい?」
男は俺に優しく微笑みかけた。まるで幼子を相手にしているかの様に。
「僕が、13人目のサイコパスさ」
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