私の愛する喫茶店
仕事を終え、家に帰る前に、私は必ずこの店に寄ることにしていた。
柔らかい間接照明。
心地のいい音楽に、コーヒーの香り。
以前はコーヒーの味や香りなど分からなかった私だが、この店に通いつめるようになってから、だんだんと違いが分かるようになってきた。
とはいっても、決まったコーヒーを飲むようになったわけではない。
私は必ず、その日お勧めのブレンドコーヒーを飲むことにしていた。
日々新しい発見がある。
それだけでも、この店に通いつめる価値があるが、私がこの店に通い続ける理由は別にあった。
それは、この店の雰囲気だ。
店員は教育が行き届いており愛想がよく、話しかければ丁寧に応じてくれる。
訪れる客も礼儀正しい紳士ばかりで、かしましくおしゃべりをするおばさん連中なんかは一度も見たことがない。
なんと居心地のいい空間だろうか。
日々仕事に追われる私にとって、心を癒してくれるのはこの店だけだ。
だが、いつまでも長居するわけにもいかない。
この店を愛する客は、私以外にもたくさんいるのだ。
会計を済ませ、わざわざ見送りに来てくれた従業員にお礼を言いながら、私は後ろ髪を引かれる思いで店のドアを開けた。
「ありがとうございました。いってらっしゃいませ。ご主人様♡」
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録(無料)
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます