トマト

 私は、名も無き雑草に憧れる。


 私はトマトと呼ばれているが、自ら名乗ったわけではない。


 人が私の有用性を認めたから、名前がつけられたのだ。


 もし私が毒にも薬にもならなくて、人間の舌には合わない味をしていたなら、こんな名前が付くこともなかっただろう。


 雑草とは、まだ人間がその利用方法を見つけていないものの呼称なのだ。


 彼らは、実に植物らしく生きている。


 時期を外れて実をつけることも無く、温室で育てられることも無い。


 天の恵みに従って、栄枯盛衰を繰り返している。


 そんな彼らの生き方を、私はひどく羨ましく思うのだ。

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