クイーン・マリ

 飼い猫のマリが怪我をして帰ってきた。


 近所の猫と、喧嘩でもしたのだろうか。


 元気そうだったが、足に血が滲んでいたので一応医者に連れて行った。


 診断の結果はただのかすり傷だったが、舐めないようにとカラーを着けてくれた。


 パラボラアンテナみたいになったマリを抱いて帰ると、夫が、


「イギリスの女王様みたいだな」と言った。


 なるほど、そういう見方もあるのか。


 マリは慣れないものを着けられて不満そうだったが、見方を変えてみると、その不機嫌そうな顔もなんとなく威厳があるように見える。


 私は女王陛下のご機嫌をとるために、豪華なディナーを作ってさしあげた。


 カリカリの茹でササミ乗せだ。


 陛下は食事を平らげると、「苦しゅうない、寵愛をくれてやろう」と擦り寄ってきた。


 私は恭しくお辞儀をすると、膝の上に陛下を乗せた。


 マリにかしずく生活というのも、なかなか楽しそうだ。

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