Sanctus 5

「全隊、まもなく出撃します。各部隊は、部隊長の指示に従って、地上連絡坑から地上に出撃してください。観測所タワーによれば、目標とは一時間後に会敵予定です」

 ハルカの指示に従い、東東京詰所イースト・トウキョウ・ステーションの「V」たちは部隊ごとに散開し、それぞれの地上連絡坑を目指した。セリナはハルカとともに、フミコは第二部隊と第五部隊を率いて、エレナは第三部隊と第四部隊を率いて別々の場所から地上に向かう。地上へ向かうエレベータはいつもよりも熱気に包まれていた。

対竜装フォースはここで起動してください。ただし、得物はまだです」

 ハルカの冷静な言葉に、全員の装備が黒く染まる。

 エレベータが開き、地上への連絡通路に出ると、ハルカは先頭に立ち全員を見上げる。ここにいるのは普段から率いている第一部隊だけだが、みな引き締まった表情でハルカを見つめていた。緊張の先を行く、もっとも力を発揮する表情。ハルカはそれをよく知っている。

「螺旋階段を上った先は地上です。前の人が出たらすぐに続いてください。引き返す、もしくは待機する場合は立ち止まりますので、足を止めてください。得物は地上に出てから抜いてください」

 冷静に、丁寧に作戦を説明するハルカ。分隊を任された残りの二名も、おそらくは思い思いの方法で隊を統率しているのだろう。しかし、第一部隊は常にこのやり方で、損害を最小にしてきたのだ。

 彼ら、もしくは彼女らは明らかに、最大の能力を発揮できるような環境にあった。地上に出た第一部隊は、ハルカを除いた全員が自らの得物を取り出し、翼をはためかせる。

「上空で待機。敵と接見次第攻撃展開します。あとは指示しますのでその都度確認してください」

 そう指示するとハルカは先に飛び立った。セリナたちもすぐにハルカに追従する。

 空はまだ、静けさを保っていた。

 第一部隊が空中に集結してまもなく、それほど離れていない場所から、黒い列が飛び出してきた。それとほぼ同時に、別の場所からも黒い点が列になって煙のように上へと伸びている。

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