第12話 燃える赤い鳥

 僕らは離れの茶の間のテーブルをみんなでかこうようにして晩御飯を食べ始める。

 皆といってもおじいちゃんはまだ定食屋で頑張っているし妖怪組ようかいぐみ(豆助、虎吉、ポン太)はまだ帰って来ていない。

 僕と美空と彩花にサクラさん、長い昼寝から目覚めたばかりのナギ君とヤマト君がテーブルに座る。

 木で出来たでっかいテーブルの上に煮込みハンバーグにコーンとほうれん草のバターソテー、ブロッコリーと人参のグラッセを載せた白いお皿と茶碗がところ狭しと並んでいる。

 僕とサクラさんはマッシュポテトも大量に作ったので煮物を入れる大きな陶器の器に山盛りにして入れテーブルの真ん中に置いた。

 蔵之進さんがもし来た時に食べてもらえるようおじいちゃんの分と一緒に彼の分のおかずも冷蔵庫に入れて置いた。


 僕が取り分け用のスプーンを取りにキッチンに行くと窓枠に小さな赤い変な鳥がいた。

 頭からぴよーんと銀色の毛が生えていて長い触覚みたい。

 口に何やら咥えている。

 赤い鳥はバサバサと羽を羽ばたかせ僕の足元にやって来た。


 火の鳥だ!


 この鳥が赤いのは炎を体に纏わせているから。

 体の周りが燃えてる鳥なんて普通の鳥じゃないことは一目瞭然いちもくりょうぜん、妖怪のたぐい仲間だろう。

「わわっ、君だれ? いたっ、いたっ」


 何かを咥えたままの嘴で僕のスネをつっつく。嘴は熱くはないけれどするどく尖っていて痛い。

 火の鳥はプッと口から手紙らしき物を放すとけたたましく騒いだ。


「早く受け取れェ。オレは忙しいんだァ。豆助からの便りだゾ」

「しゃ、喋った!」

「喋って何が悪いんだァ? 妖怪屋敷に住んでるくせに今さらじゃねぇカー。豆助に借りがあるからなァ仕方なく来ただけだァ。確かに届けたゼェェ〜!」


 そういうと火を放つ小さな鳥はキッチンの窓の隙間から飛んで行った。

 僕は呆気あっけにとられながらも火の鳥が持って来た手紙を床から拾うとザラッとした和紙の手触りを感じる。

 僕は手紙のふうを開けた。


【俺たちは今夕こんゆうある計画を実行する。

 もう我慢がならん。

 あのおさなき兄弟を離れにてかくまうように。

 けっして甚五郎の店に近づけないようにしろな。

 あと美空と彩花も店に来さすな。

 絶対だぞ。

 おっかねぇから。


        豆助より】



 豆助からの手紙すごく恐い感じだ。どんな計画なんだ?

 何をやろうとしているんだろう。

 僕は好奇心の強い美空や彩花には手紙を見せずにサクラさんだけにどう伝えるか考えた。

 えっと。


「サクラさぁん! 麦茶パックはどこにありますかー!?」


 茶の間の方に向かって大声を掛けるとサクラさんがやって来てキッチンの出入り口からひょっこり顔を出す。


「なぁに? 雪春君。麦茶パック?」

「サクラさん、これ見て下さい。さっき赤い変な鳥が来て手紙を」


 サクラさんはサッと顔色を変え豆助からの手紙を読んだ。


「雪春君は御飯を食べたらお店の方に顔を出して様子を見てて。私は皆を見てるわ」

「ここに書いてある計画って何だと思います?」

「分からないわ。でも豆助がおっかないなんて書くんだもの。きっととんでもない事を思いついたのよ」

「おっかないって一体なんなんだ?」

「さぁ、早く御飯を食べましょう。豆助たちが計画を実行したら食べてる場合じゃなくなるかもよ」


 僕は胸騒ぎがしつつも晩御飯を急いで食べ始めた。


「いただきます」


 サクラさんと一緒に作ったせっかくの美味しい煮込みハンバーグも添え物の野菜もゆっくりと味わっている暇はなくちょっぴり残念に思いながら。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る