第10話 たぬき妖怪ポン太と父さん
僕らはナギ君ヤマト君の寝てる座敷にポン太を運び、氷枕を持って来てポン太の頭に敷いたり
果たしてどれが良かったかは分からないがポン太は目を覚ましてくれた。
「はぁ〜、びっくりした。すごい剣幕だでなぁ」
「ごめん、ポン太。つい興奮しちゃって」
「ごめんなさい。ポン太、大丈夫? お水飲む?」
「たぬきさん大丈夫?」
ポン太は体を起こすと美空の持つコップに短い手を伸ばした。
「おぉ、水。ありがと、美空」
ゴクゴクゴク……「ぷはぁっ」とポン太はコップの水を一気に飲み干した。
僕等はじぃっと狸妖怪のポン太を見守り何を話してくれるか期待していた。
「そうだよなぁ、大事な父ちゃんの勝太郎の行方をお前らは知らんかったなら興奮もするなぁ」
ポン太からぼふっと煙が上がり子供の姿に再び姿を変える。
「おらが知ってる話してやるよ。ただし甚五郎達はお前らを
「うん、分かった」
「うん、約束する」
「たぬきさん、私も約束するぅ」
僕らが一斉に頷くとポン太は「よし、約束だからな」と一人一人を見つめた。
「どこから話そう。勝太郎を連れて行ったのが誰かを話すにはちぃっと昔の話をしなくちゃな」
「「「うん」」」
僕は生唾をゴクリと飲んでじっとポン太を見つめた。
美空も彩花も前のめりにポン太の顔を
「まずは、お前らの父ちゃん母ちゃんは幼馴染み。父ちゃんの勝太郎は両親が居なくて満願寺という寺で育てられたんだ。満願寺には甚五郎の友達の和尚がいる。ついでにいうと満願寺のすぐ隣には
「あやかしの子供を?」
「甚五郎と和尚と尼さんは友達でそれぞれが育てている子供同士は近所の子らともよく遊んでい仲良しになった。お前らの父ちゃんと母ちゃん、あともう一人」
「もう一人?」
「妖狐九尾の子供だ」
「九尾?」
「そうだ。九尾の名はハクセン。ハクセンはお前らの母ちゃん
「代替わりってなぁに?」
「彩花、代替わりってのはな。九尾一族の総大将が死んだから跡継ぎにハクセンが総大将になる。これが九尾一族の代替わりだ」
「それが父ちゃんの行方不明と何が関係あるの?」
「ハクセンは九尾の城に梓を迎え入れたいと甚五郎にお願いしたんだ。手っ取り早い話が妖狐ハクセンが梓を嫁に欲しいとな」
「妖狐が……」
「しかし梓は恋した勝太郎を選んだ。だがハクセンは諦めず段手段を選ばずに梓を連れ去ろうとしたもんだから勝太郎は梓とずっと遠くに逃げたんだ。九尾の怒りをかうと甚五郎は結婚を許さなかった。だからお前らの両親は駆け落ちしたんだ。だけどいずれは結婚は許すつもりだったんだろうよ。甚五郎はハクセンと話をつけるつもりだったんだからな」
僕はいっぺんに色んなことが頭の中に入ってきて目眩がした。母さんはもう病気で死んでしまったのに妖狐ハクセンはなんで父さんを……。
「連れ去ったのはハクセンの手の内の者だ。やっと梓の居所を嗅ぎつけたのに梓はもうこの世にはいない。勝太郎を憎んで連れ去ったとおらはみている」
「そ、そんな」
「だってお母さんが死んだのは父さんのせいじゃないのよ?」
「きつねさんがお父ちゃんを……」
そこでガタと音がして僕が振り返ると大根を持ったまま突っ立っているおじいちゃんがいた。
「話したのか、ポン太。この子達に話してしまったんだな」
おじいちゃんは悲しそうな顔をしてポン太と僕らを見渡した。ポン太はすっくと立ち上がってポケットからキーホルダーを出して僕に渡した。
「これが証拠だ。九尾城に続く
「こ、これ!」
キーホルダーには僕ら家族の写真がついている。
僕は美空と彩花に見せた。彩花は僕の手から奪うようにして掴みぎゅっと胸で握りしめた。
「お父ちゃん」
「彩花、父ちゃんは必ず帰って来るから」
僕は彩花と美空の頭を交互に撫でおじいちゃんとポン太を見る。
「父さんを助けられないの?」
「今は無理だ。雪春、美空、彩花。お前たちは絶対にハクセンに会ってはいかん!」
びくっと僕等は体を震わせた。
おじいちゃんがこんなに怒ったのを初めて見たからびっくりした。
「雪春。おじいちゃんが思うにたぶんハクセンはな、最終的には勝太郎だけではなくお前たち兄妹も拐う気だ」
ぐすぐすと鼻をすする音がする。
おじいちゃんの剣幕が怖かったからか美空は少し半泣きに彩花もグスンと泣きべそをかいていた。
「僕らが?」
ふーっとポン太は長く息を吐いた。
「九尾ハクセンは妖力霊力を
ポン太の顔もおじいちゃんの顔も迫力があって僕の少し
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。