私に、できるかな(2/4)
昼
ここ一週間は授業後はいつもここでリア、マルティナと待ち合わせをしていた。たった一週間だが、もはやそれが
中庭にただ立ちすくむ。いつもなら
(……いないか)
当然、約束などしておらずここに二人の姿はない。両名とも次の中間試験の内容はもう聞き
なんとなしに近くのベンチに
(筋トレ……いや、魔法訓練場で魔法訓練?それとも図書室で小隊での戦闘に関する教材がないか探すか……)
と、ケントがこれからの予定を考えていると、不意に
「――してッ!」
あまり
「返して!なんで、こんなこと……」
「何の事?言いがかりはやめてくれる?」
リアと向かい合う三人の内、その中心にいる一人がリアの言葉を突っぱねる。肩口で切り
「
「――ッ!」
リアが歯を食いしばって、一瞬視線を下げた。その視線を追い、ケントは気付く。彼女がいつも持っている
ここ最近、リアはどこであろうと書き取りの訓練を行えるように紙と筆記用具の入った肩がけ鞄を常に身に着けていた。その鞄、彼女が努力するために必要な道具がその小さな肩にかかっていない。
リーダー格と思しき女生徒と、その取り巻き二人は
(……なるほど)
状況を
助けたいと思う。しかしこういう時、どういう風に声をかけるべきか分からなかった。
そもそも、なぜリアがこんな目に
常に成績トップで
ケントが思考を空転させている内に、リーダー格の女生徒が口を開いた。
「――何か困ってるなら、アンタには頼れる人がいるんじゃないの?」
ねぇ、と一人が他の二人に視線を送ると、取り巻きの二人もそーそーと口を
「あの“天才”なら、どんなに困ったことでもすぐに解決してくれるんじゃない?あのケント・バーレスなら!」
その名前が
(僕の、せいか――)
当の昔に解除していた待機詠唱のための精神領域に、黒々としたヘドロのように
「――どうして、ここでケント君の名前が出てくるの……!」
拳を
「だって、あの落ちこぼれのアンタが、まともに戦えるまでになったのよ?そんなこともできるんだから、無くした物を見つけるぐらいあの天才にはわけないでしょ」
リアのことをよく知る同じ魔法科の生徒だからこそ、昨日の演習の様子は目を
使う魔法をもっともこの演習で
それが、第三者には“魔法”に見えたのだろう。
おの落ちこぼれがここまでやれるわけがない。きっとあの“天才”が何かしたのだろう、と。
「……確かに、私はケント君のおかげでちゃんと戦うことができた。でも、私だってちゃんと
「落ちこぼれのアンタがいくら頑張ったって、どうにかなるわけないじゃない。あれは全部あの天才のおかげ。そんなことも分からないの?ま、分からないから落ちこぼれなんでしょうね」
言い返したいという思いはある。だが、リアとしてもケントに教えてもらわなければ頑張ることすらできなかったのも事実。
だからリアは、口をつぐむしかなかった。
その様子が、ますます彼女らを
「天才と同じ班になれたからって、あんまりいい気になってるんじゃないわよ」
「――最近さあ、
「ちがっ!そんなんじゃ――!」
「ほら、天才が実は……ってよくある話じゃない?アンタみたいな
そして、三人で笑う。
リアは、
プツン
ケントの中で何かが切れた音がした。
自分自身を馬鹿にされることなど、どうでもよかった。
ただ、ケントは知らなかった。今まで友達らしい友達もいなかったから。
自分自身への
だから、ここまで心が動かされたことが、ケント自身にも驚きだった。
友人を
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