第10話 オーラ

 私とユキさんがアイスを食べながらゆっくりしていると、モモから電話がかかってきました。

「ごめーん。そろそろ集合場所につくから迎えにきて〜。そこからの行き方知らないの〜」

「うん。もちろん行くつもりだったよ。ちょっと持っててね」

「分かった〜。って言ってもまだついてないんだけどね」


「ユキさん、モモがそろそろ集合場所まで来るみたいですよ。行ってあげないと」

「って言ってもそこからちょっと曲がって裏道に入ってるだけなんだけどね」

「まぁ、歩く距離少ないしすぐ着けるだけ良いんじゃないですか?」

「まぁそうね。行きましょうか」


 私たちは徒歩二分とかからない距離だったのにモモの方が先についていました。

「あっ、モモ早かったんだね」

「そりゃあね。私が遅れちゃったせいでまた来てもらわないといけないんだからね、待たせられないよ。スズは、今から家出るって連絡したらその時点で移動初めて待ってそうだし」

「まぁそうかも?」

「本当はもっと服とか髪とかに気を使いたかったんだけどそれも諦めたからね。それはそうとスズのそのワンピースかわいいねぇ。初めて見たかも。ユキ先輩は……今度ショッピングにお供しましょうか?」

「い、いいわよ私は……オシャレなんて」

「え〜。でも大学って私服なんですよね? だったらちょっとはオシャレの勉強もしとかないとって思いますけど?」

「分かったわよ。今度ね」

「はいっ。行きましょうね〜」

「まずはこれから勉強だけどね」

「うっ、わかってますよ?」

「なら良いのよ。行きましょう」


 そこから十五分としないうちにユキさんのお家に着きました。

「あ、おねーちゃんおかえり〜 って誰?」

「わ〜。この子がユキ先輩の妹さんですか? はっじめまして! 私は、清弘萌望音だよ〜。モモって呼んでね」

「あ、えっと、友山鈴華です」

 相変わらずモモはビシッと決めていました。瞬間的にいろんな人と仲良くなっちゃうモモでも妹さんには通用しないみたいです。モモ以上の衝撃があったみたいで……

「え? お姉ちゃんのお友達? おかーさーん! おねーちゃんが友達連れてきたー」

「ちょ、やめなさい。今日はみんなでお勉強するの。邪魔しないでね」

「ユキ先輩! 邪魔なんて言ったら妹さんがかわいそうじゃないですか!」

「莉子のことを邪魔って言ったわけじゃないからね?」

「へ〜。妹さんは莉子ちゃんっていうんですね」

「あ。えっと、菅原莉子です。よろしくお願いします?」

「こちらこそ〜。私はモモ。で、こっちのワンピース着てるカワイイのがスズね。敬語とか使わなくていいからね〜。レイちゃんって呼んでもいい?」

「え? 良いですけどなんで“レイ”?」

「ん? それはね、莉子ちゃんの莉の字。これはレイと読むからです!」

「そういうあだ名の付け方もあるんですね」

 私にはこのとき妹さん……えっと、レイちゃん? いやいや、莉子ちゃんがちょっとだけ笑った気がしました。

「おんなじ感じでちーちゃんはユキってなるんですか?」

「ちょ、その呼び方やめてったら」

「いーじゃん。可愛くて」

「あー、ユキ先輩の名前の千尋からとってちーちゃんかぁ。その“千”の字の別の読み方で“ユキ”っていうのがあってね……」


「なんだか長くなくなりそうね。この2人ほっといたらずっと喋ってる気がするわ」

「私もそう思います。なんとなく雰囲気というか、オーラ? 的なものが似てると思います」

「オーラ? まぁいいわ。勉強始めてもモモは見てるだけだろうし。始めましょうか。こっちの部屋でやるわ。ついてきて」

「あっ、はい」

 モモは妹さんとお話ししてるのにこっちの状況はちゃんと理解してるし、大丈夫そう。っていうかすごい。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る