千の鈴の華を尋ねて

バル@小説もどき書き

第1話 勉強が……

  私、ともやまって言います。数少ない友達からはスズって呼ばれてます。

 高校に入学したら周りのみんなが知らない人。知ってるのは中学が同じだった人だけ、そう思ってました。

 私がこの学校に来たのは高校生になってから、普通の高校受験のときです。一番仲の良い友達のモモと一緒のクラスになれて一安心と思っていたら、周りの人たちの仲良し度が思っていたのと少し違う様子でした。

 小学校からほぼメンバー変わらずに中学生になった、みたいな、クラス替え的な感じでした。

 後から知ったのですがこの高校、中高一貫校だったのです。雰囲気に流されてここに来たところあったので知りませんでした。

 まあ、私みたいなのと友達になってくれるのはモモぐらいだろうし友達増やそうとも思ってないからいいんだけど……ちょっと不安? 寂しい? なんというかこう、置いて行かれちゃった感がありました。

 予想通りというか必然的というかモモは一週間ぐらいでクラスメイトはみんな友達、みたいになってました。良いんだけどね。モモ、ちゃんと私のとこにも来てくれてるし。

 でもでもっ、自分の学力に合ったところに進級したので勉強は置いていかれるはずはありません!

 置いていかれるはずは……置いていかれるはずは……

 最初のテストではそこそこ上位にいた私ですが、そこからだんだんと成績が落ちていき、今や真ん中のあたり。

「半分より下にはいきたくないなぁ」

 次のテストは夏休み前。赤点は……まだまだ大丈夫なはずだけど、赤点取っちゃったら補習で夏休み削られちゃうし。

「どうしようかなぁ。モモには相談できないし……」

 モモは赤点回避できればそれで良いって感じだからなぁ。そんなことを考えながら歩いていると中庭に来ていました。

「自分なりにちゃんと勉強してるんだけどなぁ。勉強時間も中学の時より増えてるし……あれっ? もしかして受験の時より悩んでる⁉︎」

 中庭のベンチに座ってそんなことをグルグル考えているときでした。

「貴方、大丈夫?」

 驚きながらいつの間にか下がっていた頭を声のした方に向けてみると、そこにはサラサラの長い髪が印象に残りそうでスラッとした、控えめにいって美人、みたいな人が心配そうにこちらを見ていたのです。

「ぅええ⁉︎ 」

 びっくりして変な声が出て、反射的に飛び退いて背もたれに背中をぶつけたのが私です。

「ちょ、ちょっと。本当に大丈夫⁉︎」

 相手の方も相当焦っておられました……


「なるほどね。頑張って勉強してるのに結果が出ないと」

 私のことを心配してくださったこの方は私より二つ上、三年生のすがわらひろさんで、なんでもテストではバグってるとしか思えないような点数しかとったことがないのだとか。

 たまーにいるらしいんですよね、こういう人。

「私はそういうのじゃないわ。頑張って勉強してるもの。多分貴方が考えてるような人は授業だけ聞いてればそのくらいの点が取れる人だと思うの。知ってるもの、そういう人」

 ええとつまり、私の前にいるこの方は技量がバグってて、お話に出てきた方はスペックがバグってる?

「そんなことより、私が勉強教えてあげましょうか?」

「え? いやでも、受験勉強とかあるんじゃないですか? 伸び代のない私なんかに時間を割かなくても……」

「私の受験勉強はもう始めてるし、高一の勉強ぐらいなら十分教えられるわ。あとは貴方に勉強を頑張りたいという意思があるかどうかだけど?」

「え? あ、はい。頑張りたい、です」

「そう。じゃあ今日の放課後、図書室に来れる?」

「……はい」

「じゃあ今日の放課後に。そろそろ休み時間終わるから教室に戻るわね」

 そう言って去っていった菅原さんはピッタリ十五分前行動でした。私はというと……ボーゼンとしていて気づいたら予鈴が鳴っていました。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る