第9ー6話 恋華の覚悟

虎白と白王隊が天上門で魔軍全軍を相手にたったの5万で戦っている中で恋華は神族の援軍を求めてオリュンポスへ訪れていた。



周囲が冥府軍に襲われているというのにここだけは平和で国民も平然と暮らしていた。



護衛もつけずに単身で王都へ来た恋華は足早にゼウスの待つ本城へと足を運んだ。



鮮やかな着物をなびかせて美しい白い髪の毛を風に吹かせている。





「白陸の安良木恋華だ。 夫の代わりに天王にお目通りを願う。」





衛兵に連れられて恋華は城の中へと入っていった。



ゼウスの衛兵達は下級神と言われる神族の軍隊だ。



皇国軍ほどの戦闘能力は期待できなくても間違いなく天上界で最強の軍隊だ。



それなのに依然として動く気配はなかった。



夫が今にも死ぬかもしれないというこの時に。



金色に輝く大きな扉を衛兵が開くとそこには純白のベットがあり、恋華は衛兵に背中をボンッと押されて閉じ込められる様に扉を閉められた。





「待っていたぞ。」

「天王・・・」

「さあこちらにおいで。」





布を一枚だけ羽織っているだけのゼウスは恋華の体を舐め回す様に見ていた。



恋華はゼウスに近づくとじっと顔を見ていた。



だが気にする事もなく恋華の白くて小さな手を引っ張り自身に近づけた。





「今日はそなたに最高の快楽を味あわせてやるぞ。 もう鞍馬には戻れぬぞ。」

「ヒッ。 夫の元には戻れないか。」





すると恋華は目を閉じてその力を解き放った。



「第八感」と小声でつぶやくと次の瞬間にはゼウスの喉元に短刀が突きつけられていた。



恋華の驚異な第八感は姿を見せた。



驚いたゼウスは慌てて体を雷に変えた。



至って冷静な表情をしている恋華は淡々と口を開いた。





「夫と運命を共にするのが我が誉れ。 夫以外の者に抱かれてこの身を汚すは夫への裏切り。 我が第八感は生命、物体の全ての時間を操る能力だ。」





それはあまりに驚異的な能力であった。



恋華の金色の帯に差されていた短刀が一瞬でゼウスの喉元に動いたのは恋華本人が短刀を抜いてゼウスの喉元に突きつけようと決めていたからだ。



そして第八感を使う事で鞘から抜く、手に取る、喉元に突きつけるという一連の時間を切り取り、結論である喉元に突きつけるという所まで時間を動かす事ができた。



時間という概念を完全に支配できる恋華の驚異的な第八感を前にゼウスは驚いていた。





「汝は我に歯向かうのか。」

「否。 私はここに死にに来た。」

「なんだと?」

「ご覧いただけかな? 我が第八感を。 短刀は次の瞬間には我が頭に刺さっている事だろうな。 汝が私を粗末にしたから悪いのだ。」





ゼウスは連想した。



一瞬にして短刀が喉元にあった。



恋華の頼みを聞かなければ死ぬ気なのだと。



万が一に恋華が死ぬ事があれば虎白が常軌を逸した怒りをぶつけにくる事は明白だった。





「夫を甘く見てはならない。 必要なら到達点への門を開ける事もあり得る。 私の弔い合戦のために全皇国軍が汝の首を狙いに来るぞ。」

「貴様・・・我を脅すか!!! あー!!!!!!!!!!!!!!」





怒りに身を任せたゼウスは恋華に目掛けて雷撃を浴びせたが、雷は恋華を避ける様にして軌道を変えていた。



雷が自分に当たる前に第八感で雷の動きを自分に都合の良い軌道に操っている。



恋華の第八感はゼウスの攻撃すら当てる事はできなかった。



全ての時間軸は恋華を中心に動く。



雷に当たらないのも恋華が立っている場所だけ雷が通らない時間に変えられた。





「無駄な事は止めろ。 汝は勘違いしていないか? 汝がお飾りの天王でいられるのも我ら皇国があるからだと。 到達点の番人は我らぞ。」





じっと睨みつける恋華の瞳はあまりに鋭く、ゼウスは思わず目をそらしてしまった。



これが皇国の皇女なのか。



天才、鞍馬虎白の正室なのか。



ゼウスは雷を体に戻すとベットに座った。



そしてじっと恋華を見ていた。





「惜しいな。 我は以前よりもそなたが欲しくなった。 鞍馬が羨ましい。」

「相応しき者同士が愛し合うのが皇国の伝統故にな。 汝は私に相応しくないのでな。」

「兵を出せと?」

「左様。」






気高くも美しい。



それどころか小柄で可愛らしさまで兼ね備えている。



そして頭脳は賢くも冷酷だが夫や家族を一番に思いやっている。



驚異の第八感を有しても夫のためにしか使う事はない。



世界に完璧という生命が存在するのなら恋華の様な者を完璧というのかもしれない。



天上門への援軍派兵を渋々承諾したゼウスを見ても恋華は満足しなかった。



「今直ぐに出せ」とゼウスを見ていた。





「出兵には時間がかかるのだ。」

「戯言は聞かぬ。 即刻全戦力を天上門に送れ。 神話も例外ではない。」





天上界の位で最高位に等しい「神話」という位はゼウスの子供達で構成されていた。



戦神アレスやアテナといった異次元の強さを持つ神話を天上門に送れば魔族を撃退できる。



恋華は譲る気が一切なかった。



もしゼウスが断れば短刀を頭に突き刺すつもりだ。





「よいな?」

「よかろう・・・」

「ではこれにて。 妙な事を考えれば私はこの生命を汝の前で捨てると心得よ。」





恋華はその体一つでゼウスを説き伏せてきたのだ。



一切汚す事もなく。



正室としての誇りを守りきり、援軍の確約までしてきた恋華は王都を歩いているが白陸に戻ろうとはせずに次に向かったのはミカエル兵団本部だ。





「安良木恋華だ。 通せ。」





女性のみで構成されているミカエル兵団だが、強さはオリュンポスに負けないほどの強さを誇っている。



だがこれといって活躍する事もなく、問題が起きれば白陸が解決してきた。



恋華が見逃すはずもなかった。



白く大きな門をスタスタと歩く恋華はミカエルの待つ大聖堂へと訪れた。



すると目を覆いたくなる様な眩しい光と共にミカエルが現れた。



恋華はじっと見ていた。





「天上門に援軍を出せ。」

「無礼だな。」

「同胞である神族を見殺しにする者へ払う敬意は心得ておらぬのでな。」

「・・・・・・」





ミカエルはじっと黙り込んでいた。



魔族の討伐に天使の総帥が出ないなんて恋華には許せなかった。



ルシファーやサタンは元は天使だ。



闇に落ちたルシファーがサタンと名乗ったと言われているが確かにそこには2体の魔族が存在していた。



かつてミカエルの手によって冥府に落とされたルシファーが今もなお生きている。



その結果、虎白は友人を失う事になった。






「冥府に落とせば終わりだと?」

「私がルシファーを・・・」

「記憶にないと?」

「いいや。 だが何故だ?」





すると次の瞬間恋華は頭が割れてしまうほどの頭痛に苦しんだ。



前を見るとミカエルも眉間にシワを寄せて黙り込んでいた。



大天使ルシファーが冥府に落とされた理由は様々あるとされている。



人間に知恵を吹き込んだ、人間に味方をしようとしたなど。



どれも不可解な事ではあった。



そしてミカエルの口から出た「何故」という言葉はルシファーが冥府に落ちた理由がわからない様にも聞こえた。



頭痛に顔を歪めた恋華は壁に手を当てている。





「と、とにかく兵団を前線に・・・」

「どうやら私が確かめねば。」

「それと・・・どうして兵団の動きが鈍いのだ?」

「・・・・・・鈍い?」





ミカエルは何も理解していないのか。



頭痛に苦しむ恋華は「とにかく頼んだぞ」と兵団本部を後にした。



街へ出ると驚くほど頭痛は回復して先程までの激痛が嘘の様だった。



白陸の街に入ると安堵感から空腹すら感じた。



街では国民が徐々に戻ってきていた。



冥府軍の亡骸を片付けている憲兵の手伝いをしている。





「れ、恋華様!?」

「ご苦労であるな。」

「ご、護衛もつけられずに!? 憲兵を呼びます!!」

「構わぬ。 続けよ。 白陸のために大義であるな。」

「それは・・・お守りくださり感謝しています・・・この先も我々人間に稲荷様のご加護があらん事を・・・」






恋華を見てその場に跪き手を合わせる人間を見てニコリと微笑むと街を歩き始めた。



冥府軍の奇襲で荒廃した街を必死に復旧している国民はとても頼りになる存在だと恋華も関心していた。



神族を甘く見る愚かな人間の姿はないと安堵もしていた。



そして恋華は城に戻ってくると紅葉が飛びかかる勢いで走ってきた。





「抱かれてしまったのか!?」

「まさか。 目にもの見せてくれた。」

「なんだって!?」

「天王は兵を率いて天上門に行くであろうな。」






淡々と話す恋華に驚きが隠せない紅葉は城に残った1000狐の兵を連れて出陣の支度を始めた。



兵が恋華の鎧兜を運んでくると紅葉が慣れた手付きで鎧を小さな体につけ始めた。



鎌倉武士の様な大鎧だというのに皇国軍は軽快に動けてしまう。



それも長い鍛錬の日々が生み出した「神業」というのだろう。



鎧を着た恋華は「では出陣」とほんの少しだけ声を張ると兵士達が鬨の声を作り、天上門へと向かった。



























天上門では虎白が5万の兵士だけで魔軍を相手に奮戦していた。





「怯むなー!!!」





白王隊の攻撃は凄まじかった。



しかし圧倒的に数で勝る魔軍は白王隊を包囲していた。



魔軍の指揮官達は狐帥(こすい)と言われる皇国の指揮官達に襲いかかった。



ルシファーは雷電に襲いかかった。



サタンは染夜風に。



ハデスは虎白と戦っている。





「鞍馬諦めよ!!!」

「はあ・・・はあ・・・」

「虎白様をお守りしろー!!」

「来るな!! 各々!! 魔族を斬れ!!」





この状況においても1狐として討ち死にしていない。



魔軍は数え切れないほど倒れていく中でも白王隊は圧巻の強さを保っていた。



だがそれもいつまで続くかはわからない。



莉久や紅葉も虎白の元を目指して急いでいるはずだ。



だがそれまで保つのかわからなかった。





「円陣を組んで互いの背後を守れ!!」

『おう!!』





5万という大兵で巨大な円陣を作った白王隊は円の中に虎白や雷電達を入れて守ったがルシファーやハデスも同様に円の中にいた。




下級悪魔は円の中に入ろうと殺到してきているが白王隊が懸命に応戦していた。




しかし神通力もいよいよ限界か、白王隊にも動きに乱れが出始めていた。




「遅れておるぞ!!」と狐帥の下の位の狐長が叫ぶと兵が急いで走っている。







「はあ・・・そろそろ限界か。」

「この期に及んでも誰も助けに来ないのが弟がそなたを大切に思っていない証拠だ!!」

「んな事わかってんだよ!! 頼る気なんてねえよ。 俺が信じてるのは家族だ。 あいつらが必ず来る。」

「空から舞い降りた我軍に手こずっているから間に合うわけもないぞ!!」






ハデスの言う事は本当だった。



空挺降下なんていう新時代の戦略は武士国家の南軍には戦慄する他なかった。



苦戦する南軍諸将を宰相達は救援していたが、大幅な時間がかかっていた。



善戦していたのは織田、上杉、武田、モンゴル帝国に秦国、孫呉だけだ。



どれも虎白や宰相と関わりの深い国家だけだった。



虎白も実際はわかっていた。



助けが来る見込みはほとんどないと。



来たとしても莉久と紅葉が連れる3000狐だけだと。



だが諦めていなかった。






「めんどくせえから帰れ!!」

「我と共に来い!! 殺したくない鞍馬!! 弟を殺して世界を取り戻すのだ!!」

「ゼウスは何もしねえが害はねえ!! お前の方がよほど害じゃねえか!!」

「何故わからぬのだ!!!」






優秀な長男である自分を冥府に追いやったゼウスの行動に怒るハデスの気持ちは痛いほど理解できた。



しかし今となっては兄弟喧嘩の延長線で戦争のない天上界の実現を邪魔されるわけにもいかなかった。



今日までに虎白は失いすぎたのだ。



死にゆく兵士の顔が頭から離れない。



愛する妻の顔を見てもその背後に妻が愛した兵士達の顔が浮かんできてしまう。



「虎白様、戦争のない天上界はどうしたのですか?」と尋ねてきている様だった。



本当に幸せと実感するには実現する他ない。



それが今日までに死なせた兵士達へのせめてもの償いであり、自分に「この先も生きていいんだ」と納得させる答えでもあった。



だからどうしても退けなかった。






「第八感!!!」





時間を止めてハデスに駆け寄るが、後少しという所で時間が動き出してしまう。



それほどまでにハデスの魔力が強く、虎白の神通力が減っていた。



「第八感」とハデスが囁やけば虎白の体は宙に浮いて呼吸ができなくなる。



もがき苦しめば苦しむほど神通力は減っていき、勝てる見込みがなくなっていった。



宙に浮いた虎白を地面に叩きつけると純白の血が口から噴き出した。






「それほどの血を吐いてはもう戦えないぞ。」

「ゲホッ・・・ああ・・・死ぬかもな・・・だが構わねえよ? てめえを道連れにできれば戦争はなくなるしな。」

「虎白様!! 助太刀御免!!!」





背後から兵士が十文字槍をハデスに向かって投げると寸前の所で静止したが、一瞬の隙きを虎白は逃さなかった。



刀をハデスの腹部に刺すと白い血が刀を伝ってきた。



お互いが神族だと改めて実感してしまう純白の血。





「もう止めろよ・・・」

「鞍馬・・・この程度で我は死なぬぞ・・・」

「神族だものな。 もっと簡単に死ねればお互いこんな苦労しなかったな・・・」

「同感だ・・・」




数奇な運命で出会ったこの2柱の神族はどうして殺し合うのか。



それは互いに背負った運命を信じているからか。



ハデスは復讐する事によってこの運命を受け入れようとして、虎白は戦争のない天上界を。



刀が腹部に刺さったままのハデスは虎白の胸ぐらを掴んで顔を近づけた。



それはどちらが先でもなかった。



互いに抱きしめ合うと魂の底から。






『ああああああああああああああああー!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!』






咆哮した。



そして突き放すとハデスは腹部に刺さる刀を抜いて虎白に投げつけた。



受け止めると握り直してもう一度斬りかかった。



そんな時だった。



光る矢が無数に飛来してくると魔族を次々に射抜いた。





「はああああ!!!!!!!!」

「大天使に続けー!!!」






美しい声が響く中で白い馬に乗る者や鳥人の様に背中から純白の羽を生やして飛来する者。



金色の冠を被り白い制服に身を包んだ天使の軍団だ。



ミカエル兵団だ。



大天使ミカエルは恋華の説得もあり、遂に戦場に姿を見せた。



三分の一もの天使を連れて冥府に落ちた堕天使ルシファーとの決着をつけるために。



同じ神族を救うために。



天使の軍団の中でも圧倒的異彩を放つ金色の鎧に金色の盾を持つミカエルは先頭を走り最初の魔族を斬ると、魔族は光となって消え去った。



まるで闇を浄化しているかの様に次々に斬り倒すミカエルの強さは言わずと知れた天上界最強の姿だった。



そしてあっという間に虎白の前にまで来るとハデスに強烈な蹴りを入れた。



吹き飛んだハデスに目もくれず虎白を見ていた。





「待たせてすまぬ。」

「はあ・・・なんで・・・」

「過去の清算だ。」

「ルシファーか・・・」





ミカエルが虎白の頬に手を当てると今までに消耗した神通力が全て回復した。



それだけではない。



ミカエルは背中に背負う弓矢を無数に天空に放つと周囲で戦う白王隊に降り注いだ。



だが矢は体に刺さるわけではなくまるで光が体内に入り込むかの様にすっと白王隊の全兵士の体内へと入っていった。



すると次の瞬間には開戦当初の白王隊の勢いを取り戻した。



天上界最強にして天使の総帥。



大天使ミカエルの第八感。



光を操る能力だ。



光は神通力の象徴であり、ミカエルが放つ光の矢は神通力となる。



闇に飲まれた魔族はミカエルに斬られるとたちまち浄化して消え去る。



自身の体も光に変わり、いかなる攻撃も受け付けなかった。



ミカエルを超える魔力を持つ魔族がもし存在すれば攻撃も当たるだろうがそんなものは存在しなかった。



紛れもない天上界最強の大天使だ。





「あ、ありがとう・・・」

「長らく動けずにすまなかったな。」

「でもなんで?」

「私もそれが知りたくてな。」






虎白は不思議そうにしていた。



まるで記憶がなかったかの様だ。



少し前に宰相エヴァが下界で危なかった時に助けに来た事を話すとミカエルは「下界には動けた」と意味深な返答を返してきた。



動きが制限されていたかの様だった。





「わからねえ。 記憶がないのか?」

「それも私にはわからない。」

「そうか。 俺も良く頭痛がするし。 謎が多いな・・・」

「それより鞍馬。 まずはハデスから倒すぞ。」




刀を構えた虎白は隣に立つミカエルの圧倒的威圧感に気分が高揚したのを感じた。



側にいる者全てを照らす様な存在感に安心感や幸福感。



この世界の全ての良い感情を同時に味わっている様だ。



「すげえわ」と小さくつぶやいた虎白は立ち上がり迫るハデスを見ていた。



すると虎白はミカエルに「ここはいい」と話した。





「ミカエルは過去の清算に行くべきだ。」

「いいのか?」

「俺はこいつと何度も戦った。 もはや他人な気がしなくてね。 俺が殺してやらないと満足しないだろうからな。」

「いいだろう。」





するとミカエルは驚く速さでルシファーに斬りかかった。



だがルシファーは雷電と戦っているというのに平然とミカエルの剣を受け止めるとニヤリと笑っていた。



「やっと来たか」とまるで待ち遠しい瞬間にありついたかの様だった。



雷電はミカエルの助太刀をしようと刀を構えたがミカエルは「他の魔族を任す」と一言言った。





「御意。」

「忘れもしないぞミカエル。」

「・・・・・・」

「積年の恨みをここで晴らしてやる!! 貴様のせいで俺はこんな見た目になってしまったんだからなああああああああああ!!!!!!!!!!!!!!」





すると染夜風と戦っていたはずのサタンが黒煙となり、ルシファーの体に吸い込まれていった。



黒煙が体に入るとルシファーの瞳は赤と黄色に不気味に輝くと牙を見せて黒い羽を羽ばたかせていた。



これはルシファーの第八感だった。





「俺の第八感は怒りを操る能力だ!!! サタンは怒りを具現化した存在だ。 これは俺でありサタンでもある。 貴様にわかるか!!!!」





冥府の魔族の王であるサタンとはルシファー本人でもあった。



怒りを解き放ち、具現化されたのがサタンの姿だった。



それ故にいくら染夜風の万物を風に変える能力で攻撃しても消え去る事がなかった。



かつて大天使であり、見る者全てを虜にするとまで言われた美しきルシファーは冥府に落とされ、その怒りから生み出されたのがサタンだった。



怒りを一つに宿したルシファーはミカエルの盾を蹴ると驚く事にヒビがメキメキと入った。





「忘れぬぞ・・・この俺が言っている事は全て本当だ!!! お前らが悪いんだぞミカエルッ!!!! うわああああああああああああ!!!!!!!! お前が憎いぞおおおおおおおおおおおおお!!!!!!!!!」




聞くだけでも恐怖してしまう叫び声はどこまでも響き渡った。

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