第3ー3話 動き始めた天上界
友奈が身元引受人となった事で全員が無事に建設中である国へと帰る事となった。
変わらず不満げな態度を取る友奈に近づいた虎白は「悪かったな」と一言だけ話したが笑みを浮かべている。
無事に釈放された事への嬉しさと鈴姫への感謝の念で胸が一杯という表情で歩く狐の神族に対して友奈は留守中に起きたある問題の話しを始めた。
「いやあ実はねえ・・・ワンちゃん来たんだよね」
「ああ? 半獣族か?」
「まあねえ。 というか鳥さんやフェネックちゃんもね・・・」
何を言っているのだと一同が顔を見合わせている間も頭をかきながら困惑した表情をしている留守番は「どうしよお」と対処しきれないと語った。
美顔を近づけて詳しく話しを聞いている虎白に対して友奈は言葉を詰まらせている。
やがて国へ辿り着くと、そこでは霊界から連れてきた竹子と優子の兵士が仕事を行っている。
甲斐と副官二名はこれにて六番隊を没収され兵団からも追放され、虎白の正式な仲間となる。
その事で作業を手伝っていた六番隊がいなくなっているはずなのだが、現場は賑やかだった。
「なんだどうなってんだよ」
「あ、えーとあれが鳥さんね。 でも問題なのはワンちゃんなのよ・・・私の手に追えないからお願いね」
そう話す友奈は鳥さんの元へ歩いていくと、虎白を紹介した。
羽をばさばさと羽ばたかせて近づいてきたのは鷲のヒューマノイドだ。
豊満な胸に高身長を見せびらかすかの様な着物から覗かせる美脚がなんとも色っぽいではないか。
不思議そうに「誰だ?」と尋ねた虎白に顔を近づけると鷲の鳥人は独特な鋭い瞳を何度か瞬きさせると会釈をした。
「初めまして。 最近この世界に来ましたの。
「ちょっと待て!? それは俺の国に入るって事か!?」
平然とうなずく鵜乱に驚きが隠せない虎白が天空を見上げると雷鳴が鳴り響いた。
ゼウスが降り立つとまたしても自慢げな表情をしている。
高身長をくの字に曲げて虎白に顔を近づけると「礼ならいいぞ」と釈放の話でもしているのだろう。
「て、天王これは!?」
「国を作るのなら人手がいるだろう? だからこの鳥人とあそこにいる半獣族をくれてやる。 まあ大層な美女だからいらぬと言うなら我の妻にでも・・・」
すかさず虎白は声を上げて礼を言うと残念そうな表情をして天空へと飛び立っていった。
鵜乱は鳥人の戦士団を率いる戦士長だ。
彼女の配下の戦士達が作業を手伝っているからこそ賑やかだった。
だが友奈が話したとおり問題はこの聡明な戦士長ではなく犬の半獣族なのだ。
虎白がふと目をやるとフェネックの半獣族と犬の半獣族二匹が何やら話しているが、虎白を見るなり表情を歪めたではないか。
「おいお前らは誰なんだ?」
「
小さな体を飛び跳ねさせて楽しげに話す可愛らしいフェネックの半獣族は春花と話した。
思わず虎白が頭をなでると嬉しそうに頬をすりすりと着物に押し付けてきた。
だがその間も犬二匹は気まずそうに口を閉じたままだった。
虎白が鋭い視線を向けると一匹の犬がおどおどと話しを始めた。
「ぼ、亡命してきました・・・あ、あのこっちは妹で私はメルキータ・プレチェンスカ。 妹はニキータです。 た、助けてください・・・」
その言葉を聞いた途端に虎白は目まいでもしたかの様に隣に立つ鵜乱の肩を掴んでいる。
「あらまあ」と背中をぽんぽんと叩く鵜乱は冷静な表情のまま、虎白を近くの資材まで連れて行くと座らせた。
虎白が目まいがするのもそのはず、一瞬にして仲間が増え続けているのだ。
甲斐と副官二名も晴れて虎白の仲間になり、冥府から魔呂を連れ帰ったばかりだ。
魔呂に関しては大天使ミカエルからも警戒され、周辺国もまた彼女を嫌っている。
そして立て続けに鳥人の鵜乱と戦士団にフェネックの半獣族の春花。
とどめに亡命してきたと話すメルキータとニキータ姉妹だ。
頭を抱える虎白は大きなため息をつくと犬の姉妹に手招きをした。
「どういう事だ? 助けろってなんだよ?」
「我が国ツンドラ帝国の皇帝にして実の兄上であるノバが攻め込んでくるかも・・・」
その言葉を聞いた虎白は遂に資材に横になってしまった。
友奈が対処しきれないと話した意味を理解した虎白は天空を見つめながら黙り込んでいる。
建国を目前に控えているというのに早くも宣戦布告を受けそうになっているのだ。
酷く困惑している虎白は一度、竹子達を呼び寄せて話し合う事にした。
冥府からの帰還、ミカエル兵団による逮捕。
鈴姫の尽力とゼウスの親心による釈放で建設中の国に戻った一同は新たに加わっている面々に困惑している様子だった。
中でもメルキータとニキータは亡命してきたと話しているのだ。
「追い出すか!?」
「天上界同士で亡命って不思議だよね・・・」
そう話している一同の元にメルキータに良く似た犬の半獣族が謁見を求めてきたという知らせが届いた。
メルキータとニキータを本国へ送還するために使者に会うと、驚く事を言い捨てられたのだ。
灰色の髪の毛を風になびかせて頭の上から生やす犬の耳をぴくぴくと動かす使者は「皇帝からの正式な宣戦布告です」と言い放つと足早にその場を去ったのだった。
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