風船猫パンクの風船大作戦
アほリ
1#看板風船猫パンク、ピンチになる
茶トラの太膨猫のパンクは、居酒屋『風船猫』の看板猫である。
何時も、店頭のお気に入りの座椅子の前でフサフサの尻尾に猫パンクの可愛いイラストの描かれたヘリウム入りのゴム風船を紐で結んだ尻尾を揺らして寝そべっていた。
以前は、子供連れの客の子供達にはこのデブ猫のパンクの尻尾の結んである風船をプレゼントをしていた位だった。
ところがテレビでのペット番組でこの店を紹介してから、視聴者の人気が火が付き、この風船を尻尾に付けた肥満猫のパンク目当てに来る客が後を絶たずに大繁盛して、
居酒屋に来た客には、パンクとの2ショット写真とこのパンクの尻尾の風船をプレゼントするようになった。
「この居酒屋はかつて客が全く来なくて経営難で、仕方無く店を畳む寸前にぶらっとこのデブ猫がやって来て居座ってから、店を繁盛してね。
正に『招き猫』だわ。
この居酒屋の名前が『風船屋』なのにちなんで、風船の様なこのデブ猫尻尾に風船を結んだら、更に大繁盛してね・・・
もう、このにゃんこはこの『居酒屋風船屋』の稼ぎ頭よ。」
テレビや雑誌の取材では、店主の女将がよくこうインタビューで答えていた。
それも知らずか、当の『風船猫』パンクは何時ものように店前でお気に入りの椅子の上で、尻尾に結んだ自らのイラスト絵の入った風船をウネウネと揺らして、うつらうつらと寝そべっていた。
ところが、幸せなその日々がジワジワと終焉を迎えるようになった。
「うにゃ?」
・・・尻尾がおかしい・・・
パンクの尻尾がやけに重く感じた。
風船が、戸や壁にぽーんぽーんとぶつかる感覚も無かった。
尻尾をウネウネしても、尻尾がウネウネするだけ。
・・・あれ・・・?!私の尻尾の風船が・・・?
何時もはパンクが寝ている時に付けている風船が無い事に気付いた。
「これが無いと、私全く落ち着かないわ・・・
でも、今日は忘れてるんじゃないのかにゃ・・・?」
パンクはそう自分に言い聞かせて、また眠りこけた。
次の日になっても、店の前に寝そべるパンクの尻尾には風船が無かった。
次の日も、
次の日も、
次の日も、
そのまた次の日も・・・
太膨猫のパンクは、段々心配になり落ち着かずに眠れなくなってしまった。
「坊や、お父さんと来たのにごめんねー!パンクちゃんの風船、今無いのよ。」
女将が、お目当ての風船が貰えず拗ねる子供を宥める声が、不安な気持ちを押さえ込む為に必死に椅子の上でタヌキ寝入りを決めこむパンクの耳に聞こえてきた。
「うにゃ?」
・・・風船が・・・無いにゃ・・・?
・・・マジかにゃ・・・?
ガリガリガリガリガリガリガリガリガリガリガリガリ!!
「どうしたの?!パンクちゃん!!」
店のドアをガリガリと引っ掻くパンクに、女将が気付いてドアをガラリと開けると、パンクは慌てて店の中へやって来た。
「パンクちゃん!まだ店は開いてるのよ?!」
女将の声をよそに、パンクは店の中を隅から隅まで汲まなく何時もは尻尾に付いてる風船の有りかを膨満な身体をタプタプ揺らして探しまくった。
・・・これは・・・!!
「な~~~~!な~~~~!」
太膨猫のパンクは、店の片隅の物置に置いてあったヘリウムガスのボンベに寄り添って、女将を呼んだ。
「ごめんねー、パンクちゃん。風船が欲しかったのね。
でもね、注文した風船が届かないのよ。
今ねえ風船を注文した業者に問い合わせても、製造元の国があのウイルス蔓延して工場うがストップしてるんだって。
またここに風船が届き次第、また貴方に風船あげるからね。」
「にゃぁおん・・・」
女将は、そう誤りながら心配そうな太膨猫のパンクの首筋を撫でた。
・・・・・・
しかし、その風船の製造元を襲ったウイルスが今度はこの居酒屋にも影響を及ぼすとは知るよしも無かった・・・
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