遥か彼方の記憶の果てに

崎田恭子

第1話


 あいつは…もう、俺の知らない何処かで生まれ変わったのか…

輪廻転生…こんな事があるなんて解らないが…あいつとまた、再会ができるなら…

 

俺は何故か幼少期の頃から生まれ変わる前の記憶を所持している…ていうか明確に記憶している…本当に前世というものが存在しているならの話しだが…


俺は物心がついた頃から何故か自分を取り巻く環境や人間関係に違和感があった。だが、違和感だけでなく得体の知れない寂しさを感じていた…そう…あいつがいない…逢わなければならない…だが、一体何処にいる…

 

この人達って本当は誰なんだろう…だがこの人達は何の疑いもせず実の息子として扱っている…まず最初にこの事に対してとてつもない違和感があった。


「龍弥、ママとおててを繋いでかえろうか」

ママ…?この人は本当に俺の母親だと認識をしているらしい。父親と名乗った人間も同様でどうやら俺の事を実の息子として認識をしているらしい。

だが…俺の中に存在している両親は全く別の人間だった…何だ…この茶番劇のような風景は…

 


その後、俺は違和感を抱いたまま「息子」を演じながら小学生、中学生となりやがて高校生になり最終学歴の大学生になった。早く社会人になってこの違和感から早く開放されたくて俺は就職活動を開始すると早々に就職先を決め卒業をすると同時に逃げるかのように一人暮らしを始めた。

 

サラリーマンになった俺は学生の時分とは異なり毎日が目まぐるしくいつの間にか謎の記憶を忘れかけていた。

 

 

入社をして5年が経過すると転勤辞令が通達され本社勤務となり東京の都心部へと住まいを移した。。その頃になると謎の記憶というものはすっかり記憶の片隅に追いやられ本当に忘れてしまっていた。

だが…魂が拒むのだろうか…両親とは連絡すらとっていない。

 

そんなある日、昼食を買いに駅前のコンビニへと向かった。

その瞬間…何故か心に得体の知れないざわめきのようなものを感じた…何だ…この感覚は…戸惑いを感じながら俺は導かれるかのようにコンビニのドアの前に立っていた。

自動ドアが開かれ中へと進む…ふと、カウンター付近に視線を向けた瞬間、何故か…ある若い男性店員を意識した…こいつは…俺がずっと探していた奴だ…何の記憶なのかいつ会ったのか俺は無意識に記憶を辿った…

 

何だ…?この得体の知れない込み上げてくる感覚は…今度は無意識に俺の頬に水滴が流れていくことを感じた…

何で俺は泣いているんだ…俺は以前、感じた違和感から記憶を探った。

 

そうか…こいつは…俺の恋人だった厄介…記憶が正しければ…俺は…この男を愛していた…ようやく逢えた…俺は彼を見詰めながら更に涙が溢れた…

 

「何だ?あの客?お前の事を見て泣いてるぞ?知っている奴か?」

「は?何だあれ…知らねぇよ。気持ちわりぃな…いや、無視をしてればいいよ。」

「知り合いじゃなかったのか?だとしたらマジで気持ちわりぃな。まぁ、無視するに限るな」

「それじゃ、時間だから俺はもうあがるから」

「お疲れ〜」

店員同士が会話する超えが耳に入るが気付くと俺はカウンターの前に立っていた。

そいつの姿を真近で見た俺は完全に記憶を取り戻していた。

こいつは…あの頃と同じ姿をしている…年齢も恐らくあの頃と同じだ…

「なぁ」

「えっ…なんですか?」

もう一人の男性店員が俺の声に反応を示した。

「あんたじゃないよ。そっちの人だよ」

「えっ…何の用ですか?」

その店員は怪訝そうな表情で俺に問う。

「その人と話しがしたいんだが」

俺がそう告げるとその店員は俺を不審者でも見るように横目を流しながらあいつに近づきヒソヒソと話し始めた。その後…あいつは俺の目の前に立った。ドキリと心臓が高鳴る。

「あの、何の用でしょうか?」

「お前は…俺の事を覚えてないのか…?」

あいつも俺を不審者を見るように訝しげに俺を見ている。

「あの、何処かで会いました?俺は覚えてませんけど…てか、貴方にお前呼ばわりされる程、親しくはないでしょ?」

あっ…やっぱり…あいつだ!こいつの声や話し方、毅然とした口振り…あの頃と同じだ…でも、こいつの中に俺の記憶はないのか?

「そうだな…いや、悪かった…」

人違いだった…と言いかけたが言葉を飲み込んだ。それを口にしたら二度とこいつには会えないと思ったからだ。

 

 

その翌日も俺は例のコンビニへ向かった。だが今日の俺は霧が晴れたように清々しく堂々としていた。あいつが俺の探していた恋人だと確信をしたからだ。こうなったら思い出させるしかない。あいつが思い出すまで毎日、通ってやる。俺は弁当を持ってカウンターの前に立った。

「いらっさゃいま…せ」

あいつはまた、昨日と同様に不審者を見るような視線を向けてくる。

「こんにちは。これ、温めてくれる?」

「はい…かしこまりました」

絶妙なタイミングだったようで他には客が並んでいない。だが、弁当を温めている数秒間の間がもたない…どうする…話し掛けるか…数秒ってこんなに長かったか…?

「お待たせしました」

俺がグルグルと想いを巡らせているとあいつは抑揚の無い口調で温まった弁当をレジ袋にいれ俺の前に突き付けてきた。

「あっ、どうも」

「ありがとうございました」

あいつは終始、無表情で抑揚の無い口調でしかも視線を不自然に外しながら接客をしていた。やっぱり…気持ち悪いのか…

 

あの日を境に俺は毎日、あいつがいそうな時間帯を見計らい通った。しかも、あいつが立つカウンターを狙って。まるでストーカーじゃないかと自分でも思ったがもう既に歯止めは効かない。

 

こうして、半月が経過をして流石にあいつも俺を意識するようになった。俺は意を決してあいつに飯でも誘ってみようと声を掛けてみた。

「あのさ…今度、俺と飯でも食いにいかない?」

数秒間の間が空く…心拍数が上がる…そして、あいつは言葉を返してきた

「何ですか…それ…まさか、ナンパじゃないですよね…?俺、男だし…」

「あんたと話しがしたいだけだよ。邪な事なんて考えてないよ」

俺も男だし…と言い掛けたが敢えて言わなかった…

「何で話しをしたいんですか?俺みたいな男じゃなくて女の人の方が楽しいんじゃないですか?」

「いや、あんたじゃないと駄目なんだよ。ちょっと確認をしたい事がある」

もう一人の店員が接客をしながらこちらの会話に聞き耳を立てているようにチラチラと視線を向けてくる。そんなものにも屈せずに俺は必要以上にあいつを見詰め返事を待っている。

「確認て何のですか?」

「兎に角、聞いてもらいたい」

「ここじゃ駄目なんですか?」

「話すと長くなるから二人きりで会いたい

 」

俺は更に執拗に切り返した。あいつは一つ、ため息を漏らし呆れるような口調で返事を返した。

「はぁ…あの、はっきり聞きますけど貴方ってゲイなんですか?」

「あぁ?」

「だって、何でそんなにしつこいんですか?一体、何が望みなんですか?」

あいつの毅然とした態度を見た俺は本当に確信をした…やっぱり、そうだ!

「ただ、話しをしたいだけだ」

「だから、何で?」

これ以上は堂々巡りになると思った俺は今日のところは引き下がろうと「また、来る」とだけ言い残し店を後にした。

 

あんな事で引き下がってたまるかとまた毎日、例のコンビニに通いあいつに話しがしたいと声を掛けた。こうなったらやけだ!って…何故ここまでして拘ってるんだ…その時、身体の奥底から声にならない声を感じ取った…

このチャンスを逃すな…このチャンスを逃したら後が無いぞ…

そういう事なのか…だったら意地でもあいつを連れ出してやる!

「貴方、相当しつこいですね。いくら誘っても答えは一緒ですよ」

だが、俺はあいつからOKの返事を聞くまで通い続けてやる。

 

 

この日、俺は夢を見た…誰かが呼ぶ声…姿ははっきりしないけど…何故か愛しい…逢いたかった…

スマートフォンのアラームで目覚めた俺の頬は涙で濡れていた。

「あれ…何で俺は泣いているんだろう…でも…何だろう…この感覚…何か…解る…覚えている…」


今日もフリーターの俺はバイト先のコンビニへ向かった。

「また、例の奴、来るんじゃねぇのか?」

「やめてくれよ。気持ち悪い…」

ちょっと待てよ…今日の俺は…何かおかしい…ずっと気持ち悪いと思っていたのに…何だ…この感覚…早く逢いたい…

俺は何故かあの気持ち悪いと感じていた男を待ちわびていた。

 

「いらっしゃい…あっ!来た…」

俺はあの男の挙動を目で追っていた。案の定、俺が立つカウンターに来た…

「飯、行ってもらえる?」

「はい…」

「えっ…本当に行ってくれるのか…?」

「はい」

「ありがとう!それじゃ、これを渡すから時間がある時で構わないからライン登録をしてくれ!」

男は名刺を俺に手渡して店を後にした。

えっ…?俺、返事をしちゃったよ…だけど…早く会って話しがしたい…

「お前…何…泣いてるんだ…?あの野郎に何かされたのか⁉」

「あっ、わりぃ…何もされてないよ…」

バイト先で一番、親しい啓太が心配そうに俺を眺めていたが大丈夫だと意思表示をする為に何事も無かったように言葉を返した。

俺はあの人から渡された名刺を財布の中に大切な宝物を扱うように収めた。

 

 

よっしゃ!漸くあいつが首を縦に振ったぞ!だが…果たして連絡は来るのだろうか…まさか、名刺をゴミ箱に捨ててないだろうな…昨日の今日で態度が急変するなど普通はあり得ない。だが…あいつも前世の蓋が開いて俺の事を思い出した可能性もある。色々と考えを巡らせたが最終的には俺は都合の良い解釈をしていた。

 

あれから数日が経過したが未だにコンビニに通っている。あいつの反応が怖くて俺は意識的に他の店員が立つカウンターへ向かうようになった…

 

 

俺はまた、例の夢を見た。今回はかなりリアルだった。街並みや人々の姿もはっきりと解る。

ここは何処だろうか…あっ!…あの人だ…何処に行くんだろう…えっ!俺がいる…二人で何か会話をしている…何を話しているんだろう…

途中で目覚めてしまったが今回は彼の姿をはっきりと認識をする事が出来た。やっぱり、あの人だ…前世ってやつなのか…

そうそう、名刺を渡されたんだっけ。俺は財布に納めておいた名刺を取り出しスマートフォンの番号を入力した。

この日も俺はバイト先のコンビニへ向かった。あの人はまた、来るかもしれない…そう思っただけで気分が浮上してバイトのモチベーションも上がる。

「何だ?今日のお前、随分と張り切ってるじゃん。何か良い事でもあったのか?もしかして、彼女でも出来たのか?」

啓太はニヤニヤと開け透けに声を掛けてきたが何故か今日は鬱陶しく感じる。

そして、昼ピークになり店内の狭い空間の人口密度は俺達コンビニアルバイトに緊張感を滲ませる。

あの人、早く来ないかなぁ…

昼ピークの峠に差し掛かる時刻が過ぎるとやっぱり、あの人がきた。俺はまた、あの人の姿を目で追う。あっ…来た!

「いらっしゃいませ!」 

「ラインの登録、ありがとう!今夜は空いてる?」

「大丈夫ですよ」

あの人の問いに俺は心を弾ませ即答をした。

「それじゃ、仕事が終わったらラインにメッセージを送るよ」

あの人に逢ったら俺は夢の中での話しをしよう。

 


あいつにラインの登録をしてもらい逢う事が叶った俺は午後からの仕事のモチベーションが上がり何時も以上にテキパキと業務をこなす事が出来た。

「早乙女、今日はやけに張り切っているよな。何か良い事でもあったのか?」

「まあ…そうだな」

「何だよ。話しを聞かせてくれよ」

「彼女が出来た的な」

「マジかよ!まったく羨ましいぜ!お前もリア充の仲間入りかよ!ところでどんな娘なんだよ?」

同僚の奴がニヤニヤしながら聞いてくるが鬱陶しくて無言を貫く。

「勤務中だろ。後にしてくれよ」

「何だよ。勿体ぶるなよ」

彼女が出来た…当たらずとも遠からず的な…まだ、付き合うって決まってもいないし…ていうか生まれ変わったあいつの恋愛対象ってどうなんだ…変わってなきゃいいが…

  

業務が終了して時刻を見ると6時20分だった。まだ、オフィス内だが俺はあいつにラインのメッセージを入れた。

「藍川涼介」これが今の名前なのか…俺はラインの名前を改めて眺めていた。

 

早乙女龍弥は今、藍川涼介との待ち合わせ場所をこじつけ駅前に立っている。スマートフォンの振動がラインにメッセージが入った事を告げた。

「今、改札口にいます」

龍弥はラインのメッセージを確認すると即座に改札口へと向かった。付近を眺め涼介の姿を見付けると二人の視線がぶつかった。

 

あいつの姿を見付けた俺は突然、心臓の高鳴りを感じた。

漸く二人きりで逢える…

俺は軽く手を振り合図をした。

あいつが近付いてくる…俺の心拍数は更に上がる…

これじゃ、まるっきり人生初のデートをする産な高校生じゃないか!

取り敢えず、近くにあった居酒屋チェーンに誘うとあいつは普通に返事をして俺と並んでついてきた。

中へ入って月並みに生ビールを二人分、注文をする。そして、お決まり事のように乾杯をする。そこで改めて互いに自己紹介をした。

「俺、貴方の事を夢で見ましたよ。前世の記憶なのかなぁ…その時から何故か貴方と二人きりで逢いたいと思うようになったんてすよ…貴方は今も夢で見た時と同じ姿ですよ…」

えっ…まさか…俺と再会をした事で前世の記憶が蘇ったのか⁉

こいつも俺が知っている時のままの姿だ…ライトブラウンの柔らかそうなヘアに色白で全体的に色素が薄く華奢で女みたいな青年…

「俺は多分、産まれた時からお前を覚えている」

「まだ、夢が途中までだったからよく解らないけど貴方に会わなきゃって…」

「俺も同じだよ」

俺は記憶にある全てをこいつに話した。ある事実を除いて…

「恋人同士…ですか…」

「俺の記憶が正しければの話しだが…でも、ずっと探していたって感覚があるのは確かだ…」

俺達はこの言葉を最後に暫し沈黙をした。正直、この後に繋げる言葉が見当たらない。いたたまれなくなった俺は店を出る事にした。

「そろそろ、出ないか?」

「はい」

こいつも俺と同じ事を考えていたみたいだった。

俺達は店を出ると何故か人気が疎らな通りに向かっていた。また、謎の心拍数増加…

そして…気付くと俺はこいつを抱き締め唇を奪っていた…だが、こいつは抵抗をするどころか瞳を閉じて俺に応えていた。

 

 

俺はまた連続ドラマのような例の夢の続きを見ていた。夢の中ではベッドの上で彼に抱かれていた。やっぱり、彼が言うように俺達は恋人同士だったらしい…でも、此処って何処なんだろう…

彼の姿は身長は平均的だけど筋肉質で鍛えられた体型だった。肩幅が広くて胸板が厚く本当に頼もしい。綺麗な黒髪で切れ長な瞳で一見、冷たそうに見えるけど笑顔は優しい人だ。

俺は彼と何処で出会ったんだろう…早く夢の続きをが見たい…知りたい…

 

 

「また、夢の続きを見ました。俺達は本当に恋人同士だった…俺は貴方に抱かれていました…でも、何時も途中で途切れてしまうんです。貴方は全てを知っているんでしょ?教えて下さい」

俺は…涼介の言葉にどう返答をしたら良いのか戸惑い言葉を失った。何て話せばいい…

「極端な事を言うが抱き合えば解るかもしれない…」

俺は一体、何を言っているんだ⁉はい、そうですねってなる訳のねぇだろ!俺は己が放った言葉に羞恥を感じ動揺していた…再び、心拍数が増加する…

「いいですよ」

 

そして、俺達はタクシーでラブホテルへ向かった。

ホテルに到着をし選択した部屋に入ると更に心拍数が増加した。唇を重ね涼介の衣服を一枚づつ脱がせ俺自身も衣服を脱ぎ捨てた。

あの頃のままだ…こいつは俺の愛部に応えてる…

「愛してる…今も変わらない…」

「俺もです…思い出した…やっぱり、正解でした…」

 

 

再び、連続ドラマのような光景が展開した。此処って一体、何処なんだろう…

えっ…何で俺は牢獄に入ってるんだ⁉あっ!彼が牢獄の外にいる…一体、どうなっているんだ⁉

縄で繋がれたまま牢獄から出てきた…何処に連れていかれるんだ⁉

えっ…周囲を見渡したら人だかりが出来ている…皆、俺に注目をしている…何かが始まる…斧のような物を振り上げている人がいる…えっ!彼が見ている…何で助けてくれないんだよ⁉

その時…俺の首に振り上げられた斧が突き刺さり俺の頭が転がり落ちた…

裏切られた…俺は前世で彼に裏切られた…何だそれ…偽りの愛じゃないか…

 

 

漸く探し求めていた涼介を我が物にした俺はまた、涼介に「逢いたい」とメッセージを入れた。

だが、既読にはなっていたが返事が無い…直接、通話をしても出ない…まさか…

焦った俺はコンビニに直接、会いに行った。

「何故…無視をするんだ…」

「全てを知りました。貴方自身がよく解ってるんじゃないですか?」

涼介の言葉を反復しながら店を出た俺は…涼介は…全てを分かってしまったのだと…気付いた…あの事か…

俺は誤解だと話したくて何度もラインのメッセージを送った。

だが…返事は同じだった…

「貴方に裏切られた事には変わりはない」


 

また翌日、俺はコンビニへ向かった。今日は体調が優れないと上司に伝え涼介が店から出てくるのを待った。

涼介は俺に気付いた様子だったが無視をしてスタスタと通り過ぎていった。

「ちょっと、待ってくれ!話しがしたい!あれは誤解だ!頼むから話しを聞いてくれ!」

涼介は立ち止まり踵を返し俺に歩み寄った。

「何か誤解なんですか⁉俺が処刑される所を貴方は止めもせず黙って眺めていたでしょ⁉」

「あれは違う!あぁでもしなければお前は…お前の身は貴族の変態共に売られるところだったんだ!…俺はそんなの耐えられなかった…言われたんだ…売られる事を阻止したかったら殺すしかないって…だから適当な罪名を工作してお前を処刑させた…」

「でも、何故…俺が処刑されるところを眺めていたんですか…?」

「あれは…立場上、仕方が無かった…他の野郎共に食いものにされるくらいだったら殺した方がマシだと思ってしまったんだ…全ては俺のエゴからの判断だ…本当に済まなかった…」

気付くと俺は店の前で膝まづき嗚咽していた。

「あんな選択をした俺は最低だ…恋人を名乗る資格なんて…」

その瞬間、涼介は泣いている俺を抱き締めた。

「俺は貴方に守られていたんだ…それだけで充分ですよ…また、平和な世の中でこうして再会が出来たんだから今度は二人で幸せになりましょう」

「あぁ、今度はお前を絶対に幸せにしてみせる。あの頃の罪滅ぼしをさせてくれ」

「解りました…約束ですよ。絶対に俺を幸せにして下さい」


俺達はコンビニの前で人目もはばからずにキツく抱き合った…

 





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