第14話中級迷宮、攻略戦

 迷宮で死にかけたことによって、オレは新たな力を入手。

 新しい天の声が従い、冒険者ギルドで依頼人マリアと出会う。


 マリアの呪いを解くために、中級迷宮の《呪いの迷宮》に潜入。

 初戦で苦戦してしまったオレは、新たなスキルを手にする。


 ◇


 さっそくレベル1にして試してみた。


「えーと、【探知】!」


 ピッ、コーン♪


 また音が流れた。

 成功したのかな?


 ん?

 なんだ、この表示は⁉


 目の前に、遠目いで丸い地図みたいのが出てきたぞ。

 もしかしたら、これが《レーダー》なのか。


 中心に白い点が二個ある。

 少し通路を先に、怪しい赤い点があるぞ。


 これは一体、何を意味しているんだろう……?


「ん? ハリト君、大丈夫? なにかあった?」


「えっ、うん、何でもないよ! よし、先に進もう」


 独り言を連発していたので、マリアに怪しまれてしまった。


 迷宮を進んでいこう。

 とりあえず赤い点のある先に進むことにする。


(よし、その前に戦闘スキルも上げておこう……)


 先ほどの大蜘蛛ジャイアント・スパイダーでの苦戦を、今後に生かす。


 とりあえずは剣技と回避を上げておこう。

 後ろのマリアにバレないように、歩きながらステータス画面でスキルアップしていく。


 ☆《ピローン♪ 剣技(片手剣)レベル2→3になりました》

 ☆《ピローン♪ 回避(受け流し)レベル2→3になりました》


 よし、上がった。

 念のためステータス画面も確認しておこう。


 ――――《ステータス》――――


 □名前:ハリト(♂16歳)

 □職業:剣士

 □メインレベル9

 ↓スキルポイント:21→15


 □スキル

 UP!剣技(片手剣)レベル2→3

 ├斬撃スラッシュ

 └飛斬スラッシュ・カッター


 UP!回避(受け流し)レベル2→3

 ├見切り

 └受け崩し


 □隠密レベル1

 └忍び足


 ・空間収納レベル1

 └収納リスト


 □固有

 ・《観察眼》

 ├鑑定眼レベル1

 └探知レベル1


 ・■■■■■■■■■■


 □身長176センチ


 ――――◇――――


 よし、ちゃんと《剣技(片手剣)》と《回避(受け流し)》が、それぞれレベル3になっている。


 両方ともレベル3に上げるのに、スキルを3が必要だった。

 だから合計で6ポイントの消費になっている。


 スキルのレベルアップの消費ポイントは、だんだん増えていく感じかな?

 次のスキルレベル4に上げるのも可能だが、もう少し様子をみておこう。


 ピコーン


「ん? 近いぞ?」


 そんな時、新しい【探知】の《レーダー》が音を出す。

 この通路の先に、何かがいる。

 けっこう距離は近い。


 下にいないということは、また……天上かな?


 ん⁉

 いたぞ!

 また大蜘蛛ジャイアント・スパイダーがいる。


 しかも先ほどよりも大きい。

 やはり【探知レーダー】の赤い点は、魔物の反応だったのだ。


「マリア、この先の天井に大蜘蛛ジャイアント・スパイダーがいるから!」


「えっ、どこに? 見えるんですか、ハリト君は?」


「偶然、見つけたんだ。よし、今度はオレが先制するから!」


 大蜘蛛ジャイアント・スパイダーに向かって一気に間合いを詰めていく。


 シュー!


 大蜘蛛ジャイアント・スパイダーは毒の液体を、オレに向かって吐き出してくる。


「ん? でも遅い!」


 先ほどのよりも遅く感じる。

 余裕をもって回避。


「いくぞ! 【飛斬スラッシュ・カッター】!」


 剣技(片手剣)のスキルを発動。


 シューン、ズシャーン!


 今度は見事命中。


 ズシャ!


 大蜘蛛ジャイアント・スパイダーを倒すことに成功だ。


「ふう……あとは大丈夫かな?」


【探知レーダー】で周囲を確認。

 赤い点は近くにはない。


 もう少し行った先にある。

 まだ距離は十分だ。


(ふう……この【探知】の《レーダー》。これは物凄い性能だな……)


 実戦で使ってみて、規格外の性能に実感した。

 何しろ壁や通路挟んでいても、相手の位置が分かるのだ。


 特に天井や物陰に隠れている魔物に、絶大的な威力を発揮する。

 上手く使いこなせば、攻守に渡って万能に近いだろう。


「ハリト君、お見事です。それにしても、先ほどとは別人のような動きでしたね?」


 まずい。

 マリアに怪しまれてしまった。

 上手く誤魔化さないと。


「えっ、そうかな? 慣れてきたからな?」


「慣れ……ですか? おそら腕利き冒険者でも、こんな短期間では、あそこまで激変はしません。おそらくハリト君は天賦(てんぶ)の才能を、持っている……とか?」


「あっはっはっは……それならオレも嬉しいな。よし、先を進もう!」


「ん? はい、頼りにしています、ハリト君」


 なんとか誤魔化すことに成功。


 そして新しい【探知レーダー】と強化した戦闘能力のお蔭で、自信が出てきた。


 さて、ここから先はスピードをアップしていこう。


 オレは先頭になって、中級迷宮を進んでいくのであった。


 ◇


 その後の、迷宮攻略は順調だった。


 何しろ魔物は【探知レーダー】で事前に発見できる。

 とにかく戦いやすい。


 基本的に、オレが隠密で近づき、先制攻撃。

 マリアは後方から支援。


「ありがとう、マリア!」


 何度か戦って分かったが、彼女の魔法はかなり有り難い存在。

 回復するだけでなく、解毒や浄化など、色んな補助魔法でサポートしてくれるのだ。


 メインレベル7で、ここまで補助系の魔法を使える冒険者は、初めてみた。

 もしかしたらマリアは、凄い才能を秘めているのかもしれない。


 よし、オレも負けていられない。


 その後もペースアップして進んでいく。

 だが迷宮を更に奥に進んでいくと、魔物も強い種類が出てきた。


 だからオレもスキルアップして対抗し。


 ・剣技(片手剣)をレベル3→4へ。

 ・回避(受け流し)もレベル3→4へ

 ・隠密をレベル1→2へ

 ・探知もレベル1→2へ


 大盤振る舞いでレベルアップしていく。

 合計でスキルポイント12も消費してしまった。


 だがお蔭で大幅なパワーアップに成功。


 あと戦いの中で、“古代の着衣アーマー”の高防御も有り難い存在だった。

 回避を最小限にして、斬り込んでいけるのだ。


 高品質の防具と、選別した高いスキルベルの組み合わせ。

 お蔭でオレ中級迷宮の魔物を相手に、無双に近い戦いが出来ていた。


「え……? えっ? ハ、ハリト君の動きが、戦い方が? 一気に?」


「あっはっはっは……慣れてきたから、かな?」


「本当ですか?」


 ジーー


 マリアには少し怪しまれているけど、笑ってごまかすことに。


 あまり他人の前で、こんなに急激なスキルアップは危険。

 でも背に腹は代えられないので、スキルアップで中級迷宮をドンドン攻略していくことにした。


「ふう……」


 途中でマリアは息を切らす。


「大丈夫、マリア。この魔石を使って、魔力と体力の回復をしてちょうだい?」


「えっ、でも、これはハリト君の入手した? 大事な……」


「昔からオレ、体力だけには自信があるんだ。遠慮なく使って」


「ありがとう。それなら使わせてもらいます」


 マリアに魔石で魔力を回復してもらう。

 その後は彼女の回復魔法で、彼女に自身の体力も回復。


 オレは謎の恩恵で、体力が自動回復する。

 これで二人とも長時間戦えるシステムだ。


「マリア、まだ大丈夫?」


「はい、このまま一気にいきましょう」


 こうして二人の力を合わせて、オレたちは迷宮の最深部を目指していく。


 ◇


 迷宮に潜入してから、けっこうな時間が経つ。


 オレたちの目の前に、ひときわ大きな扉が現れた。


「たぶん、ここがボス部屋だよ」


「ここが……ついにですね。それにしても、こんな短時間で、到達できたのですね、私たち。ハリト君の的確な案内のお陰ですね」


「うん、まぁ……そうだね。運も良かったのかもね」


 彼女には内緒だが、実はここまで最短ルートで来た。

【探知レベル2】のお蔭で《レーダー》の見える範囲もアップ。


 入り組んだ迷宮を、少しズルして進んできたのだ。


「さて、少し休んだら、ボスに挑戦しよう。マリアは今のうちに魔力と体力の回復を」


「はい、分かりました」


 今回は倒した魔物の数も多く、入手した魔石も多い。

 でも入手した半分の魔石は、マリアの魔力回復に使っていた。


 これは最短の時間で来るための、大盤振る舞いの戦術だった。

 今回の目的は魔石を売って金儲けではない。

 彼女の呪いを早く解くため、ここに来た。


 そのためには魔石の使い惜しみは、今回はしないのだ。


(さてオレも最終確認しておこう)


 マリアが回復している間、自分の現在のステータスを、こっそり確認。


 ――――《ステータス》――――


 □名前:ハリト(♂16歳)

 □職業:剣士

 □メインレベル9

 □スキルポイント:3


 □スキル

 ・剣技(片手剣)レベル4

 ├斬撃スラッシュ

 ├飛斬スラッシュ・カッター

 ├強斬ハイ・スラッシュ

 └多斬ダブル・スラッシュ


 ・回避(受け流し)レベル4

 ├見切り

 ├受け崩し

 ├集中回避

 └味方受け流し


 □隠密レベル2

 ├忍び足

 └壁登り


 ・空間収納レベル1

 └収納リスト


 □固有

 ・《観察眼》

 ├鑑定眼レベル1

 └探知レベル2


 ・■■■■■■■■■■


 □身長176センチ


 ――――◇――――


 こんな感じだ。

 各種のスキルレベルを上げたために、系統の色んな技も会得している。


 かなり便利な技ばかりなので、有効に使えるはず。

 ここまでの道中の戦いで、使い方も慣れている。


 ふう……それにしてもスキルポイント、だいぶ減ってしまったな。

 強くなるために仕方がないとはいえ、減る寂しい。

 よし、今後もコツコツ貯めていこう。


「ハリト君、こっちは大丈夫です」


「うん、オレもいけるよ」


 二人の準備は完了。

 ボスの部屋に挑む時間だ。


「この部屋に“呪い”を解けるかもしれないアイテムが……」


 マリアは小さな声で、呟いていた。

 彼女が生まれた時から抱えていた、その忌まわしき呪いのことを。


「大丈夫だよ、マリア。絶対に見つけよう……呪いを解くアイテムを!」


「ハリト君……はい!」


 オレたちは二人で扉を開ける。


 ギギギー


 こうして初めてのボス戦に、オレは挑戦するのであった。

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