宅録ぼっちのおれがあの天才美少女のゴーストライターになるなんて。<リマスター版>

石田灯葉

プロローグ

「ねえ、小沼くん」


 夕暮れの教室。


 市川天音いちかわあまねが目の前に立っていた。


 サラリとした黒髪、くりっとした瞳、小さな唇。


 初めてこんなに間近でその顔を見て、清純派美少女とはこういうやつのことを言うんだろうな、とそんな場にそぐわないことが頭をよぎっていく。


 高校から同級生になったこの女子に、おれは中学二年生の頃からずっと憧れている。


 そんな彼女がおれに告げた、たった一つの願い。


「小沼くんの曲、私に一つだけくれないかな?」


 この一言が、おれの高校生活を大きく変えることになるのだと、おれはその時にはもうわかっていたのかもしれない。


 だって、おれはこれよりも前に、すでに彼女に人生そのものを大きく変えられていたんだから。

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