桃源郷の女王

蓬ココロ

女王様

 【香月屋こうげつや】と呼ばれる妓楼は、夢幻郷むげんきょうと呼ばれる遊郭で一際賑わいを見せる大見世であり、格段と見目麗しい男達が張見世はりみせで頬を紅潮させる娘を誘う。

 武家の娘や、一国の姫様も、その見目麗しい男たちの魅力を引きこまれ多くの金を落としては、堕ちて逝く。

 は堪らなく好きだった。荒れる事を知らぬ白い肌を赤く染め、鮮やかな着物を脱ぎ、だらしなく欲を漏らす男の姿を見るのが。


「さぁ、自分の欲に正直におなりなさい」

「今宵も女王様クイーンの仰せの通りに致しましょう」


 麗しい男も、この女王の前では一人のいぬなのだ。

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