彼らの想いは世界を揺るがす
齋藤瑞穂
本編
むか~しむかし――約46億年前、あるところにおりひめとひこぼしがいました。2人は両想いで天皇公認のカレカノ。四六時中お互いのことを考えています。そのため、2人とも仕事が手につかなくなってしまいました。それを見かねたリア充撲滅委員会の皆様方が皇族の水面下で動き出します。
「今日の
「事案や」
「事案やな」
「ぴえん超えてぱおん」
なお、リア充撲滅委員会の正式名称は、『リア充撲滅委員会及び敬語及び語彙力撲滅委員会』です。
「なんか意見ある人~」
「うぃ~。2人の間にベルリンの壁造っちゃえばいんじゃね?」
「それな♬︎ ついでに、バンクシーの正体を暴いて脅して落書きしてもらおうぜ♬︎」
「さんせー!」
「ベルリンって
「あっ、メキシコにする?」
「ベルリンのが草」
「じゃあベルリンでおk」
「静かにしろ! 一刻も早く2人の間にベルリンの壁を造るんだ!」
「「「
こうして、40億年もの時間を経て結論を出し、1日でベルリンの壁が建造されました。そこに、バンクシーの落書きが施されると、2人はひどく悲しみました。
「おーまいがっしゅ! \(^o^)/オワタ」
おりひめは自宅を警備する仕事に転職し、毎日eスポーツに励みます。一方、ひこぼしは国連にこわぁい脅迫文を送り付けました。
『おりひめに会わせろ。さもないとこの星を爆破する。爆ぜろリア充ども!』
国連も、さすがに可哀そうだ、リア充撲滅委員会の皆様方は行き過ぎたことをしたのではないか、と思っていた矢先のことです。満を持して、国連&リア充撲滅委員会の皆様方は、合同で臨時総会を開くことにしました。
「ただいまより、第3141592653589793238回 臨時総会をおこなう」
「ひゅ~ひゅ~」
「よっ! 待ってましたっ!」
「
リア充撲滅委員会の皆様方は、国連の議長さんと自分たち――リア充撲滅委員会の皆様方の温度差に気付けないようです。
「……ゴホン。議題は、ひこぼしからの脅迫文及びおりひめとひこぼしの措置についてであります」
国連の議長さんは、わざとらしく咳払いをしました。
「『この星のリア充爆ぜろ』だっけ?」
「別に良くね? なんならそっちのがよき」
「それな♬」
リア充撲滅委員会の皆様方は、国連の議長さんの眉間に皺が寄っていることに気付きません。彼らは話を続けます。
「すとっぷ!」
「20歳未満飲酒?」
「ちゃう。いやそれもだめだけど、この
「やばみ♬︎」
「I think so too.」
「……ゥオッホン! 静粛に!」
国連の議長さんはよりわざとらしく咳払いをし、ガベルをドンドンと言わせます。
「「「う~っす」」」
国連の堪忍袋の緒が切れたのは、そのやる気のない返事がハモった時でした。
「帰れ! 全て国連で話し合う!」
「「「う~っす」」」
リア充撲滅委員会の皆様方は、返事をハモらせるだけで聞く耳を持ちません。
議長は副議長にしか聞こえぬよう、小声で呟きます。
哀しそうな顔の副議長を裏切って、議長はこう叫びました。
「くらえっ! コクレンパーンチ!!」
「「「あ~れ~」」」
というようなことがあって、リア充及び敬語及び語彙力撲滅委員会の皆様方はなんと名誉なことでしょう、お空の星になりました。
「議長……お言葉ですが、“コクレンパーンチ!!”はほとんどのパーツが丸、もしくは四角が入った丸で成り立っている某キャラクターのパクリになってしまいそうなのでやめた方がよろしいかと。登場キャラクター数世界No.1でギネス認定されたアン――」
「黙りましょうか副議長」
「アーンパーンとーコッペパ~ンコッペパ~ン」
「それはダースベ――」
紆余曲折あって、1年に一度――7月7日の夜にベルリンの壁が崩壊するそうな。そして、お空の星になったリア充撲滅委員会の皆様方によってかささぎの橋が天の川にかかり、翌日にはベルリンの壁が元通り再建されているのです。
「ベガおひさー! 毎日ビデオ通話してたけど、会うのは1年ぶりだな!」
「ご無沙汰ですタイルにゃん! 去年はパンデミックがあったから2年でしょ」
しかし、ときにはこんなことも。
「天の川がない……! リア充撲滅委員会あいつらサボりやがったまじ許す……!」
「天の川がない……! うっ……タイルにゃん……! この1年で磨いたeスポーツを一緒にやろうと思っていたのに……!」
おりひめは悲しくなり、溢れる涙を拭いきれません。それが雨となるのです。
「ったく……。なんで毎年同じ絵描かなきゃいけないんだよ……。でもこの絵描かないと国連に個人情報バラされるからなぁ……。個人情報はやばいよなぁ……」
7月8日の朝方、どこからかそんな愚痴が聞こえるとか聞こえないとか。
※この物語はフィクションです
※実在する人物・団体とは関係ありません
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