第6話

しかし黒い羊は強情でした。


「ちぇっ、そんなことがおれに何の関係があるんだ。

 第一、盗みがすぐに見つかるものなら、おれのところにも神様が来るはずだろう。

 でも、来ないじゃないか。

 それが、おれが羊の鉢植えなんか盗んじゃいないって証拠だろうが」

「でも……」

「ええい、帰った帰った。

 ぐずぐずしていると、お前の頭なんか叩き割ってしまうぞ」


黒い羊は大きなバリカンを振り上げました。

「や、やめてくれえ……」

白い羊はほうほうのていで逃げていきました。


「しめしめ、よいことを聞いたぞ」

黒い羊は舌なめずりをしました。

「鉢の羊の毛を畑にまいて、とれた野菜を高く売って、大金持ちになってやろう。

 これで今度はおれが動物たちの人気者になれるぞ」


黒い羊は光るバリカンで隠しておいた鉢の羊の毛を刈ると、自分の荒れた畑中にそれをまきました。


白い羊はがっくりして、とぼとぼと家への道を歩いていました。

「ああ、どうしよう。

 鉢の羊がいなければ、もう野菜を育てる事はできない。

 ……わたしはずっと罪びとのままなのだろうか……

 なにより、あの子は今頃、いったいどうしているだろう……」


 家へ帰りついても、白い羊は心配で心配で、眠ることができません。

 とうとうそのまま夜を明かして、朝早くから畑の野菜を収穫しました。

 朝つゆがついたままの野菜も、なんだかいつもより元気がないように見えました。

 

 鉢の羊の巻き毛をまけない畑には新しく実る野菜もなく、八百屋の店先にはだんだん品物が乏しくなっていきました。

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