第724話 アマビエさん、膨らむ

「ヒノキなんてこの世から失せればいい……」


 虚ろな目でその言葉を繰り返している。


「もしかしたら、ヒノキも開発中かもしれないよ?」


 僕は慰めてみたが、気休めにしかならなかった。


「開発されるまでこちらをどうぞ」


 ヨゲンノトリさんはまだ商売を続けていた。事務の子は無言でパンフレットを受け取る。


「……ちょっとは花粉も吸えないか、試してみてやろう」


 あんまり気の毒だったからか、アマビエさんが体を膨らませた。僕たちは期待をもって、それを見つめる。




【薬局あるある】

 待ち望まれている薬が、すぐに発売されるとは限らない。

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