第459話 【番外編】アマビエさん、石のごとく

「そろそろシメにかかりません?」


 事務の子が腰を浮かせる。さっきまで山盛りあった彼女の料理は、嘘のように消え失せていた。


「いつの間に」


 僕のつぶやきには答えずに、事務の子は台所に赴いた。さっきコンロの位置も確認していたのか、次第に鼻歌が聞こえてくる。


「お皿はどれを使えばいいのかしら」

「どれでもどーぞー」

「重いから、僕も運ぶよ」

「あ、僕たちも」

「いいよ、座ってて」


 写真に見入っているセンセイをよそに、クタベさんと薬局長が台所に立った。僕らぐうたら兄妹だけが、手伝うタイミングを逃して床に座り直す。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る