第173話 【番外編】アマビエさん、動じない

「この匂いをかぐと、外出って感じがしますね」

「テンション上がる」


 僕とセンセイはうきうきしていたが、アマビエさんとアマビコさんは首をひねった。


「何が珍しいのだ」

「さあ」


 自然に生きる人外には、山や海をありがたがる感覚がないのだろう。二体のテンションが上がったのは、人工物が見えてきた瞬間だった。


「おお、あれか」


 建物が、天を目指すように縦に伸び上がっている。一階は和を意識した簀の子のような装飾なのに対し、上はあくまでホテルのような洋風造形である。それがちぐはぐな気もしたが、人外たちはそれでも気に入っていた。

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