「ここからここまで、全部くれ」

「富豪の買い方だ」

　実際にやっている人（じゃないけど）を初めて見た。

「食べきれます？　他にもお店は一杯ありますよ？」

「……うぬう」

　僕が引き止めると、アマビエさんの目に少し理性が戻る。

「この苺のタルトをホールで下さい」

「かしこまりました」

　とりあえず、一番反応を示したものだけを買って店を離れる。それからもアマビエさんはショートケーキ、ミルフィーユ、ロールケーキと苺のお菓子を買いあさった。

「台車の用量もありますからね、買うのはあとちょっとですよ」

「ちっ」

「瑞兆が舌打ちしないで」

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