薬局のアマビエさん

刀綱一實

第1話 アマビエさん、話す

「我はアマビエである」

「はい、新患のアマビエさん……あ、アンケート用紙が濡れてる……既往歴なし、嗜好品なし……と」


薬局のカウンターに、半魚人がいる。全身鱗に三つの足、腰まで伸びた長髪が特徴的だ。投薬のために降りてきた僕は、一瞬動きを止めた。


病気になりそうにない生物。生臭い。しかし仕事は仕事だ。幸い他に患者はいないから、早めに終わらせよう。


「どんな症状で?」

「今から六年間は豊作が続く」

「……そうですか」


【薬局あるある】

症状より、自分の話したいことを述べる患者は多い。薬剤師も事務も慣れている。


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